はじめに
クリムゾンクローバーはマメ科の多年草ですが、暑い季節が苦手なため、日本では一年草の扱いです。原産地は南ヨーロッパで、日本には明治時代に牧草として伝えられました。栽培にあまり手間がかからないため、初心者にも育てやすい植物として知られています。今回は、クリムゾンクローバーの特徴やクリムゾンクローバーを育てる際に気をつけたいことなどをご紹介します。
クリムゾンクローバーの特徴
緑肥になる
クリムゾンクローバーは観賞用として楽しむほかに、土壌を豊かにするための緑肥としても利用されています。緑肥とは、育てた植物をシーズンが過ぎた後に取り除かずに、そのまま土にすき込んでその後に植える野菜の肥料にするというものです。
クリムゾンクローバーはマメ科植物に属するため、根に根粒菌が共生しています。根粒菌は、空気中の窒素を土壌中に固定して植物が吸収しやすい形に変える働きをもっています。つまり、クリムゾンクローバーを植えると根粒菌によって土が豊かになり、さらに緑肥として利用することで次に育てる野菜に肥料分が提供されることになります。
蜜源になる
クリムゾンクローバーの赤い花は実は集合花です。クリムゾンクローバーを直訳すると「炎のツメクサ」となりますが、この名前は花がまるで燃える松明(トーチ)のように見えることに由来していると言われています。
このように花が印象的なクリムゾンクローバーは、蜜源としても利用されています。通常のクローバーに比べて花穂が大きいため、蜜蜂に効率よく蜜を供給することができるのです。日当たりさえよければやせた土地でもよく育つクリムゾンクローバーは、花の季節には一面を真っ赤に染めるほどたくさんの花を咲かせ、貴重な蜜源になっています。
食用になる
あまり知られていませんが、クリムゾンクローバーは食べられます。花はサラダやハーブティーに、葉は炒め物やスープにすることができます。また、牧草として家畜のえさにされたり、犬や猫、小動物用のおやつに乾燥させたものが販売されたりしています。
クリムゾンクローバーの育て方
栽培環境の整備
クリムゾンクローバーは、日光は大変好みますが暑い季節は苦手です。そのため、できるだけ日当たりがよく風が通りやすい場所で育てるようにしましょう。日が当たりにくい場所に植えると、太陽光を求めて茎が必要以上に長く伸びようとするため、花つきが悪くなってしまいます。きれいな花こそクリムゾンクローバーの魅力なので、日光によく当たる場所において栽培しましょう。
土・肥料
クリムゾンクローバーは緑肥にもなる植物のため、土質は選びません。ただし、花を観賞する目的で育てるには肥沃で水はけのよい土が適しています。
鉢植えの場合は使用する土の量もそれほど多くないため、市販されている草花用の培養土がおすすめです。肥料は元肥として効き目が緩やかな緩効性肥料を少量ほどこせばよく、追肥の必要はありません。
もしも土を自分で配合する場合には、赤玉土6:腐葉土4の割合がおすすめです。寄せ植えにする際にはさらに軽石を追加して水はけをよくしましょう。
植え付け
クリムゾンクローバーは広い土地一面に植えられていることも多いですが、ご家庭では植木鉢に植えて楽しむこともできます。その場合は6~7号鉢(直径18~20cm)に1株が目安です。クリムゾンクローバーは移植によるストレスを嫌うため、根を崩さないように注意して植え付けましょう。
鉢植えをする際には、鉢の種類を選ぶという楽しみもあります。素焼きの鉢はもちろん、バスケットや木製の鉢もクリムゾンクローバーによく似合います。しかし、木製の製品はじかに植物を植えると腐る場合があるため、鉢カバーとして使うことをおすすめします。
水やり
植え付け後は、土が乾くころ合いを見計らって水やりをします。土が乾かないうちに水を与え続けると根腐れを起こしてしまうため、指を土の中に差し込んで湿り気を確かめてから水をやるようにしましょう。
一度の水やりでは、鉢の底から水が出てくるまでたっぷりと水を与えます。受け皿を使用する場合には、受け皿に水がたまったままという状態をつくらないようにこまめに水を捨ててください。
花がら摘み
花が咲き進み、次第に黒くなってきたら、茎の根元からカットするようにしましょう。こまめに花がらを摘むことで次々に新しいつぼみがつき、花が咲く期間を伸ばすことができます。
新しい花が咲かなくなったタイミングで株を半分くらいの草丈にカットする方法もありますが、一度に切るよりも回数を増やして丁寧に咲き終わった花を取り除くのがより効果的です。
花がらを摘むときは、一緒に株の下の方の枯れた葉も取り除くようにすると、病気や害虫の予防につながります。鉢植えの場合は特に狭いスペースで栽培することになるため、風通しがよく清潔な状態を保つように心がけましょう。
クリムゾンクローバーの増やし方
クリムゾンクローバーは一般的に種をまいて増やします。クリムゾンクローバーの種は発芽率が高くて適度な大きさを持っているため、種から植物を育てるのは初めてという方にもおすすめです。
種の取り方
クリムゾンクローバーの種はホームセンターや通信販売で購入することができます。クリムゾンクローバーは牧草としての需要があるため、比較的安価に手に入ります。また、すでに自宅でクリムゾンクローバーを栽培している場合には自家採種をすることも可能です。
自家採種をする場合は、花期が終わりに近づいてきたら花がらを摘み取らずに残しておきます。穂先をしごいて花がらを茎から抜き取ることができたら、種が熟しているサインです。逆に、花がらが簡単に抜き取れない場合は未熟である証拠なので、少し時間をおいてもう一度試してみましょう。
種は殻に覆われています。殻をむけば丸い種を取り出すことができますが、殻がついた状態でまいても問題なく発芽するので、あえてむかなくて大丈夫です。
種まきのサイクル
クリムゾンクローバーの種は、周囲の温度が20℃前後のときに発芽します。また、クリムゾンクローバーは桜やチューリップなどと同様に越冬して春に花を咲かせるタイプの植物です。そこで、冬を迎える前の、気温が20℃前後になる9月~10月頃に種をまき、およそ2か月後にプランターや植木鉢などに定植します。
クリムゾンクローバーは冬の間も少しずつ成長し、翌年の春に開花します。寒さが厳しい地域では、夏ごろに種まきをして、しっかり根が張った状態で冬を迎えられるようにしましょう。
種のまき方
クリムゾンクローバーの種をまく際には、小さく区切られたセルトレーを用意すると便利です。まず、セルトレーに八分目くらいまで土を入れ、そこにひとセル当たり数個の種をまきます。種をまいたら、5mm~1cmほど土をかけましょう。種をまいてから数日間は、半分日陰になるような場所で土が乾かないように適度に水やりを続けます。
クリムゾンクローバーの種は、まいてから3~5日後に発芽します。芽が出たら日向に移動しさせ、日光が十分に苗にあたるようにします。苗が成長して込み合ってきたら間引きを行い、本葉が2~3cmに増える頃にポットに移植します。
ポットに移植した苗がしっかり根を張って成長してきたら定植します。屋外で十分に寒さにさらして育てれば、翌年の春にはクリムゾンクローバーが赤い花を咲かせる様子を楽しむことができます。
おわりに
今回は、鮮やかな赤い花が印象的なクリムゾンクローバーについて、特徴や育て方をご紹介しました。クリムゾンクローバーは一年草で、花期もそれほど長くはありませんが、丈夫で育てやすく、マンションのベランダなどのちょっとしたスペースを活用して栽培することができます。
また、クリムゾンクローバーはご家庭で種を採取して増やすことができるほか、緑肥としても有用な植物です。役目を終えた株も捨ててしまわずに、土にすき込んで畑の栄養にしましょう。
さらに、クリムゾンクローバーはコンパニオンプランツとしても効果を発揮することが知られています。クリムゾンクローバーと相性がよい野菜についてはこちらの記事をご覧ください。
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