はじめに
畑で家庭菜園を始めてみたものの、野菜がなぜかうまく育たない、そんな経験はないでしょうか。病害虫が発生しているわけでも水をやらなかったわけでもないなら、その原因は土にあるかもしれません。
この記事では野菜づくりにおける良い土の状態について詳しく説明していきます。
良い土の三要素
野菜の栽培に適した土壌は、物理性・化学性・生物性の3つに優れた土だと言われています。3つの要素が相互に影響しあって良い土が生まれるため、3つ全てを改善していく必要があります。
物理性が良い
土壌の物理性としては、硬度や通気性、透水性があります。
野菜が根を伸ばしていくためには、土はある程度軟らかくなければいけません。土が固いと野菜は地下深くに根を伸ばせず、風で倒れてしまったり、水や養分を十分に吸収できなくなってしまいます。
また、野菜の根の細胞は呼吸をするため、空気が必要です。土の中では水と空気が適度なバランスで存在していることが重要になります。このため、通気性があり、水はけ・水持ちの良い土が好まれます。
水稲の根はどうやって呼吸する?
水田では、水の中に土があるため、地中に空気はほとんどありません。稲は地上部の茎から空気を根に送り込むことで根が呼吸できるようにしています。
水中に根や茎のある植物も同様で、例えばレンコンの孔は空気が通るためにあいていることは有名な話ですね
このような条件を満たす土壌は概して団粒構造が発達しています。土の粒が集まって小さな塊になることで塊の隙間に空気と水が入りこめるようになっています。団粒構造について詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。
土のpHに注意しよう!土壌酸度のイロハ | AGRIs
園芸書には「土壌のpHは6.0から6.5にしましょう」とよく書かれていますが、そもそもpHは何を表しているのでしょうか。野菜ごとに異なる土壌酸度を好むメカニズムを科学的に解説します。また、土壌酸度を調整するための方法を紹介します。
https://www.agri-smile.app/articles/soil-ph
化学性が良い
土壌の化学性としては、土壌酸度(土壌pH)や養分があります。
野菜にはそれぞれ適した土壌酸度があり、おおむねpH5.5~6.5の弱酸性です。弱酸性の環境では土中の養分が野菜にとって吸収しやすい状態となっています。一方で、酸性やアルカリ性に傾いた場合には、特定の養分の欠乏や過剰害が出てしまいます。
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窒素・リン酸・カリといった野菜の生育に必要な三大栄養素やその他の微量元素も良い土には必須です。養分が欠乏してしまうと、生理障害が出てしまったり、そもそも全く育たないといった状況になります。肥料を過不足なく与えると共に、保肥力の高い土を作っていく必要があります。
肥料の三要素NPKって?肥料を科学的に解説 | AGRIs
野菜づくりを始める上で最初におこなう土づくり。肥料には必ず窒素(N)、リン(P)、カリ(K)の表記があります。それぞれ実肥えや根肥えとも呼ばれますが、そもそもなぜ野菜の生長に必要なのでしょうか?野菜のどの部分の生長に使われているのでしょうか?今回は肥料と野菜の科学に迫ります。
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生物性が良い
土壌の生物性は、土壌動物や土壌菌類といった土の中にいる生き物の話です。土の中にはミミズといった目に見える大きな生物から、細菌のような目に見えない小さな生物まで、多種多様な生物が生息しています。
嫌悪感を示してしまう方もいらっしゃるかもしれませんが、これらの生物の多くは土を豊かにしてくれる存在です。野菜の枯れた葉や根を分解し、野菜に吸収できる養分に戻しています。また、微生物の出す粘液が土の粒同士を接着し、団粒構造を作るのに貢献していることもあります。
加えて、土壌中に多様な生き物がいることは、野菜にとって有害な病気や虫の天敵や競争相手がいることにもつながります。このため、病害虫の爆発的な発生を抑制できるといった効果も期待することができます。
土壌改良の方法
土づくりの方法はプロの農家さんでも千差万別で個性が出るところです。野菜づくりの基本は土づくりと言われるように奥が深いものでもあります。ここでは代表的な方法を紹介します。
土壌改良材を入れる
土壌改良材は土壌の物理性を改善するために投入されます。粘土質で水はけが悪い土壌に腐葉土や堆肥などの有機物を入れたり、赤玉土等の粒径の大きい土を入れたりすることによって改善します。
ホームセンターでも市販されている様々な土をブレンドすることもできますし、土壌改良材としてすでに売られているものを買うことも可能です。
有機物を入れることで、生物が住みやすい環境になったり、養分が吸着しやすくなることで、生物性や化学性の改善も見込めます。
肥料をまく
野菜づくりの基本であり、一番効果が現れやすい方法です。
消石灰を施用した後2週間程度は、他の肥料をまかず、植え付けもおこなわない方がよいでしょう。
一方で肥料のまき過ぎは肥料焼けとよばれる過剰害を引き起こしてしまう可能性があります。過去の施肥を思い出しながら必要量を過不足なくまくようにしましょう。
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ついつい良かれと思って肥料をたくさん与えてしまうと逆に株が弱ってしまうことがあります。こうした養分の過剰による生理障害の一つに肥料焼けがあります。この記事では肥料焼けの症状や原因、予防法・対処法を解説します。
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緑肥をまく
緑肥はソルガムやヘアリーベッチといった土壌改良のためにまかれる植物のことです。
ソルガムはトウモロコシに似た植物で、土壌中の過剰な養分を吸収するクリーニングクロップとして利用することができます。また、固い地面でも根が地中まで深く伸びるため、土を耕す効果も期待できます。
ヘアリーベッチはマメ科の植物で、マメ科特有の窒素固定作用があります。秋にまくと冬場に繁茂し他の雑草を抑制することができます。春になると一斉に枯れるため、土にすき込んで養分にすることができます。
緑肥作物は他にも色々な種類がありますが、最後にすき込むことで堆肥をまくのと似た効果をもたらし、物理性・化学性・生物性を改善します。
おわりに
今回は良い土とは何かについて、そのための方法について紹介しました。土づくりには様々な手法がありますが、基本的には土壌の物理性・化学性・生物性の改善に結びついてきます。
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