はじめに
プランターも土も用意したら、今度は種まき。育てたい野菜を植える時期が来たらホームセンター等で種を購入しましょう。しかし、種にもたくさん種類があり、迷ってしまうこともしばしば。今回は、そんな種の選び方と種のまき方を見ていきましょう。
種と苗どちらを植える?
種と苗を比べた時に、種から育てるメリットは価格が安いことと選択肢が多いことの2つです。苗を購入すると1株100円から数百円程度かかってしまいますが、種だと数十個から数百個入った1袋をほぼ同じ値段で買うことができます。また、ホームセンターでは一つの野菜につき1、2種類の苗しか扱っていない場合が多いですが、種であればより多くの種類が置いてあることが少なくありません。また、種は通販でも購入が容易です。
家庭菜園では、発芽直後の管理が大変なため、すべての野菜を種から育てるのは難しいでしょう。また、1袋に入っている種の数が多くて使いきれないことも、種からまくことのデメリットです。種からまく難しさも踏まえた上でどちらにするか選びましょう。種から育てようとして失敗してしまった場合でも、種まきの方が苗を購入する時期よりも早いため、そのあとに苗に切り替えることも可能です。
ただし、生育期間の短いホウレンソウなどの葉物野菜や、移植で傷みやすい根菜類は種を直まきするのが一般的で、苗もほとんど出回りません。
良い苗の選び方と植え方【ベランダ菜園をはじめよう!】 | AGRIs
家庭菜園をいざ始めようと思ってホームセンターに行くと、たくさんの苗が置いてあります。今回はその中から良い苗を選ぶためのポイントや売られている苗の種類、苗の植え方を解説します。
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種の選び方
同じ野菜であっても様々な品種があり、種まきの時期や草丈、あるいは形や味、収穫適期などが異なります。目的にあわせて選ぶことが大切です。購入する際には、種袋の記載情報をしっかりと確認しましょう。以下に重要なポイントをまとめました。
早晩性
同じ野菜でも、品種ごとに種まきから収穫までの生育期間が少しずつ異なります。こうした栽培期間に関する特性を早晩性と呼びます。期間の短い順に早生(わせ)、中生(なかて)、晩生(おくて)と呼ばれています。より短い極早生や中間的な性質の中晩生といったものもあります。
早晩性は、実をつける基準が品種ごとに少しずつ異なることによって生じます。植物は日の長さや気温を測るセンサーを持っており、ある基準を超えた時に生長を始めたり花芽を作ったりします。品種ごとの遺伝子の細かな違いがこの基準に影響を与えることによって、同じ野菜でも品種ごとに生育期間が変化するのです。
家庭菜園で育てる場合には、早生品種を選ぶのがおすすめです。栽培期間が短く、病害虫の被害を受けにくくなるためです。晩生品種は栽培期間が長いため、味のよい野菜を作ることができると言われています。十分なスペースがある場合には、一つの野菜について早晩性の異なる品種を一緒に植えておくと時期をずらして継続的に収穫することが可能になるかもしれません。
F1種と固定種
ある野菜の異なる品種同士を交配させてできた子供の品種をF1(雑種第一世代)と呼びます。Fはラテン語で息子を意味するFilialから来ています。メンデルの法則に従い、親の形質のいいとこ取りをした子供が生まれ、かつ全ての種が均質になります。また、メカニズムは解明されていませんが「雑種強勢」が現れ、親以上に生育することがあります。残念なことにF1種から取れたF2種は種子ごとに違う形質を示し、元の親の悪いところが出てきてしまう場合があります。
こうした特性から、市場に出回っている種のほとんどがF1種です。種袋の表の左上にはそのF1種を交配した種苗会社の名前を入れて、「○○交配」と書かれているのが確認できます。プロの農家もF1種を使い、毎年種を購入しています。
F1種に対して、固定種や地場種といった種もあります。優れた株を選び、同じ品種同士を交配させることを繰り返した結果、安定して常に同じ形質を示すようになったのが固定種です。その特性から地域に根ざしたものが多く、地場野菜として有名なものも含まれます。固定種を専門に扱う種苗会社もあり、一度育てればそのあとは自家採取で繰り返し育てることが可能です。
消毒・殺菌
種袋の裏の下の方には、種子が消毒済みかどうかが記載されています。一部の植物病は種子の中に潜んで広がっていくため、殺菌してある方が安心です。
消毒済みであることがわかりやすいように種子が着色されていることがありますが、病気になっていたりカビたりしているわけではありません。また、洗い流したりする必要もありません。
加工
発芽しやすくしたり、種まきをしやすくしたりするために、加工されている種子も多くあります。
硬い殻を持つホウレンソウの種子は、殻を外したネーキッド種子として売られていることがしばしばあります。殻が付いたままの場合には、種まき前に水で湿らせて発芽を促すというひと手間が必要になりますが、ネーキッド種子であればその必要はありません。
ニンジンは種が微細でまきにくいため、石灰質の素材でコーディングしたコート種子が売られていることもあります。コート種子は比較的大きいため種まきが容易になります。種まき後にしっかりと水をやることで、石灰質の殻が溶けていきます。
種のまき方
種を購入したら、いよいよ種まきです。種まきは、土に直接まく「直まき」と、育苗するための「ポットまき」やセルトレイにまく方法があります。直まきには、野菜の種類によって、大きく分けて3つのまき方があります。野菜ごとに適したまき方があるため、種袋の裏面の簡単な説明や、その野菜についての栽培記事を読んで判断してください。
すじまき
すじまきは、まき溝を作って1列に種を落としていく方法です。支柱のような細い棒を土に押し付けて、深さ1cm弱のまき溝を作り、溝に1列に種をまきます。間引きを前提としたまき方ですが、種まきの時からあまりに密植させてしまうと間引きも大変なので、1cm間隔程度で重ならないようにまきます。種まきが終わったら両脇の土をつまむようにして覆土をし、土を軽く叩いて種子と土を密着させます。水やりで種が流れてしまうのを防ぎ、土と密着することで種子がしっかりと水分を吸収できるようになります。
種は指でつかんで擦るように少しずつ落としましょう。指では均質にまくのが難しい場合には、折り目を付けた紙の上に種を乗せて少しずつ落とす方法もあります。
発芽率があまり良くないニンジンや、間引きしたものも食べるホウレンソウやコマツナなどの葉物野菜がすじまきに向いています。必要な株間を確保出来れば、2列、3列とすじまきをすることもできます。
覆土の厚みはどれくらい?
一般的には種の厚さの2~3倍程度の覆土をするとよいと言われています。しかし、野菜の中には、発芽に光が必要な「好光性種子」と、光が必要ない、あるいは光があると発芽しにくい「嫌光性種子」があり注意が必要です。
代表的な好光性種子はニンジンとレタスです。これらの野菜では種がギリギリ見えるかどうか程度の覆土にとどめます。一方で、ウリ科やナス科、アブラナ科といった多くの野菜が嫌光性種子に分類されますが、これらの野菜は種の厚さの3倍程度は覆土するようにしましょう。
バラまき
バラまきは、土全体にパラパラとまく方法です。偏らないようにまんべんなくまきます。また、密植しすぎないようにまく量は調節します。まいた後は、ふるいで土をかぶせ、手でたたいて種子と土を密着させます。
この方法は、間引きを必要とせず、小さいうちに一斉に収穫するベビーリーフや収穫せずそのまますき込む緑肥作物に用いることがありますが、間引きをはじめ管理作業が大変になるため、基本的には使いません。
点まき
点まきは、あらかじめ株間をあけてくぼみを作り、そこに2,3粒種をまく方法です。手で掘っても構いませんが、ペットボトルやビンなど円形のものを土に押し当ててくぼみを作るのがおすすめです。種をまき終わったら土を寄せて覆土をし、手で叩いて土と種子を密着させます。
エダマメやトウモロコシなど種の大きい野菜やダイコンやハクサイなど生育期間の長い野菜が点まきに向いています。使用する種の量を抑えることができ、間引きも簡単におこなうことができるためです。
おわりに
今回は種の選び方や種の植え方についてご紹介しました。自分が育てたい野菜にあわせた種選びと、その野菜に応じた種のまき方を選んで、野菜栽培の良いスタートを切りましょう。