土壌微生物の基本知識
土壌微生物とは?
土壌微生物は、土壌中に存在するいろいろな微生物のことをまとめてそのように呼びます。「微生物」と聞くと、なんだか危険なイメージがある‥という方も多いかもしれませんが、これらの微生物は土壌中で様々な役割を果たし、生態系で重要な存在となっているのです。次に、いろいろな役割を果たす土壌微生物の種類を紹介していきます。
土壌微生物は農業や生態系にとって様々な重要な役割を担います。
- 土壌中の物質を分解し、有用な物質を生成する
- 空気中の窒素をもとに、植物に窒素を供給する(「窒素固定」と呼びます)
- 危険な土壌微生物である「病原菌」を抑制する
- 安定した生態系をつくる
多様な微生物がこれらの役割を担うことで、農業に適した、通気性や水分保持に優れた、柔らかい土が作られているのです。土壌中にある微生物がだけが増えるなどすると、病気にかかりやすくなったり生育が悪くなったりしてしまいます。
土壌微生物の分類
細菌(バクテリア)
大きさは1µmくらい。よく耳にする「放線菌」は細菌の一種。放線菌は土独特のにおいを発すること、さらに酵素や抗生物質を産生して有益な役割を担うことなどが特徴です。
古細菌(アーキア)
メタンガスをつくるメタン生成菌や温泉などの熱湯に棲む超好熱菌など。
菌類
糸状菌(カビ)・キノコなど。おおくの酵素を分泌することで有機物を分解します。菌類は「菌」という名前が紛らわしいですが、これらは上記の細菌や古細菌とはまったく異なるグループです。
藻類
単細胞で海に漂って暮らす植物プランクトンが有名。光合成をすることが出来ます。
原生動物
アメーバやゾウリムシなど。これらは鞭毛をつかって運動をおこないます。また、細菌を捕食し栄養にします。
農業にとって「良い」働きをする土壌微生物
上記で紹介した微生物は、それぞれ環境によって、作物にとって「良い」または「悪い」はたらきをしたりします。まずは作物にとって良いはたらきをする微生物を紹介します。
糸状菌
様々な酵素を分泌し、有機物を分解するなどして、他の微生物の活動を活発にさせます。堆肥を作るのに大活躍。
細菌
納豆菌(枯草菌)
タンパク質を分解するプロテアーゼを出したり、微生物の種のバランスを整えたりすることで、作物の生育を良くします。農作物を病気にさせてしまう糸状菌を抑制させることが出来ます。
放線菌
キチナーゼという酵素を出し、センチュウなどの害虫予防に大助かり。
乳酸菌
殺菌作用のある乳酸を生成し、病気の予防に役立ちます。
農業にとって「悪い」働きをする土壌微生物
土壌微生物のなかでも、作物に病害を発生させることで、収穫量や品質を減少させる微生物をまとめて「病原菌」と呼びます。そのため、農業においては病原菌が発生しないように事前に管理し、もし発生してしまった場合には処置を行うことがとても重要です。
作物にとって悪い影響をもたらす病原菌と、それがもたらす病気をいくつか紹介します。
糸状菌
ほとんどの作物の病気の多くは、糸状菌による仕業。糸状菌は土壌や堆肥にとって欠かせない存在ですが、植物内にまで生育しすぎると以下のような病気を引き起こす場合があります。
また、糸状菌が引き起こす病菌の多くは「土壌伝染性」といって、土壌中をつたって感染していくので厄介なものが多いという特徴があります。
- うどんこ病
- べと病
- いもち病
- 根こぶ病
- 炭そ病
細菌
栄養不足や環境からのストレスによって発生するものが多く、非土壌伝染性のものが一般的。
- もみ枯れ病
- そうか病
- 青枯れ病
土壌微生物の多様性をまもる方法
微生物のなかでも、「病原菌」はやっかいですよね。病原菌の被害を防ぐために、農薬が広く使用されています。
しかし農薬の使用は、環境に負荷を与える可能性があります。そのため、持続的に使用していくことには問題が生じます。
具体的には、上記で紹介したような役割を担う土壌微生物の多様性が失われることになるのです‥!!有益な役割をになう土壌微生物にまで多大な影響がでることで、土壌全体の元気がなくなります。
どうすれば、出来るだけ農薬を使わずに病気にもかかりづらくなるのでしょうか。
それは「連作障害をさける」ことです!!
連作障害は、同じ作物を同じ場所でつくり続けることによって生育不良になることです。
その原因は、おなじ作物を植え続けることで特定の土壌微生物だけが増えすぎてしまって、土壌微生物のバランスが取れなくなるからです。
土壌微生物の多様性がいかに重要なのかを理解できれば、連作障害をさけたり、堆肥をつかって土壌改良をおこなったりできますね。
おわりに
今回は土壌微生物の種類についてご紹介しました。土壌微生物は良いもの悪いものが存在しますが、それらのはたらきや多様性の重要性をご理解いただけたでしょうか。
本記事を参考にして、土壌微生物へのイメージが変わりましたら幸いです!