ニンジンとは
学名 | 和名/別名 | 分類 | 原産地 | 発芽適温 | 生育適温 |
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Daucus carota L. | ニンジン | セリ科ニンジン属 | 中央アジア | 15~25℃ | 20℃前後 |
ニンジンは中央アジアが原産のセリ科の野菜です。根が細長い東洋種と太くて短い西洋種に大別され、日本には江戸初期にまず東洋種が伝わったと言われています。東洋種の代表格としてはお正月をはじめとするお祝い事によく用いられる金時ニンジンが知られています。
現在、市場で流通しているニンジンほとんどが西洋種で、明治時代に日本に伝えられました。家庭菜園で育てる場合にも、西洋種の方が栽培が容易なため、おすすめです。
ニンジンにはカロテンやビタミンC、葉酸など多くの栄養素が含まれており、健康によい野菜として知られています。根が橙色の品種だけでなく黄色や紫、赤などがあり、複数種を取り合わせて植えるとカラフルな見た目を楽しめます。
今回は、美味しいニンジンを収穫するための栽培のコツをご紹介します。
栽培時期
3月~4月に種をまいて8月頃に収穫する春まきと、7月~8月に種をまいて10月~11月頃に収穫する夏まき、そして秋に種をまいて春に収穫する秋まきに大別されます。
秋まきの場合は過度の低温を避けるために育苗中に適切に保温する必要があるため、家庭菜園では春まきや夏まきがおすすめです。
ニンジンの栽培
土作り
ニンジンは根を食べる野菜のため、途中で植え替えを行いません。したがって、種をまく前に土の状態を整え、栽培に適した環境を作っておくことが大切です。
ニンジンは光に敏感な野菜のため、昼間にしっかり太陽光があたり、かつ夜間に家の電気や街灯が当たりにくい場所を選びましょう。
播種の2週間ほど前に、1㎡あたり石灰150gを散布して耕します。
その1週間後に、1㎡あたり堆肥を3〜4kg、化成肥料を150gまいて再びしっかりとすき込みます。この際、土の塊を丁寧にほぐし、石は取り除くことで、ニンジンの根が曲がったり傷づいたりするのを防ぎます。
土の準備が整ったら、高さ5~10cmになるように畝を立てます。畝幅を60㎝前後になるようにして2列で育て るのがおすすめです。植えんと畝の間は約20㎝の間隔をあけるようにします。畝を立て終わったら、種まきに備えて鍬で畝の表面を平らに整えましょう。
土のpHは5.5〜6.5が目安です。ニンジンの根は地中深くまで伸びるため、よく耕して土を柔らかくしておきましょう。
プランターで栽培する場合には、野菜用の培養土を使用するのがおすすめです。
播種
畝に深さ7~8㎜、幅2~3㎝の溝を作り、種を条まきしていきます。種と種の間は2~3㎝ずつ間隔をあけるようにします。
種をまいたら、約5㎜ほど土をかぶせて上から手で軽く押さえましょう。
ニンジンはかつて水辺に生息していた植物であるため、発芽までは乾燥させないようにこまめに水やりをしましょう。あらかじめ、もみ殻を土に混ぜておいたり、種まき後に寒冷紗をかけて保湿したりするのもおすすめです。
寒冷紗
寒冷紗とは、麻や綿を平らに織り込んだ布のことです。園芸だけでなく、料理で出汁を取る際に使われたり、漆喰の下地補強に用いられたりします。畑では、育苗期を中心に頻出のアイテム。保湿だけでなくアブラムシやネキリムシなどの害虫対策、さらには風対策にも役立ちます。
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寒冷紗・防虫ネットの正しい使い方!野菜栽培で大活躍、寒冷紗・防虫ネットの使い方まとめ | AGRIs
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間引き
発芽後は、成長に合わせて計3回ほど間引きを行います。
1回目の間引きは、本葉が1~2枚の頃に、特に込み合った箇所の苗を抜いて密度が高くなり過ぎないようにします。
続いて、本葉が2~3枚に増えたら2回目の間引きをおこない、株と株の葉が重ならない程度に成長が悪いものから引き抜きます。
草丈が10㎝程になる本葉が5~6枚の時期に3回目の間引きを行い、株間が10㎝前後になるように調整します。この頃には根も成長してきているため、間引く際はしっかり引き抜くようにしましょう。根が残ると腐ってしまい、残した株の生育に影響します。
ちなみに、ニンジンは葉の部分も栄養価が高いため、間引いたものも捨てずに美味しく食べることができます。
ニンジンの栽培:栽培管理
追肥・土寄せ
2回目と3回目の間引きをおこなった後、追肥を施します。
追肥には即効性の窒素とカリが有用です。1㎡あたり約50gずつ化成肥料をばらまきます。追肥を行った後は、肥料と土を軽く混ぜ合わせながら株元に土寄せしてやります。
間引きをおこなった後は、株周辺の土が緩んで倒れやすくなったり、根の一部が地上に出たりする可能性があります。放置しておくと、根が傷ついたり、地上に出た部分が緑色に変色したりするため、土寄せを行うことで橙色の根がまっすぐ深く張るように調整する効果があります。
なお、土寄せをするときには、葉の根元の分岐に土がかからないように注意しましょう。
病気・害虫に注意!
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ニンジンの栽培:収穫
ニンジンは種をまいてから100日ほどで収穫適期を迎えます。根に近い葉をしっかり持って垂直に上に引き抜きます。この時期を逃すと、根にひび割れが生じたり、「す入り」になったりすることがあるため注意しましょう。
「す入り」とは
す入りとは、ニンジンやダイコン、カブなどの根菜類の根が過度に肥大して、内部に空洞ができてしまうことを言います。主に収獲が遅れたときに見られる現象ですが、窒素過多や水のやりすぎなどが原因で起こることもあります。
おわりに
今回はニンジンの栽培方法についてご紹介しました。有料会員にご登録いただくと、ニンジンをはじめ、300以上のプロ農家さんの栽培動画をすべて視聴できます。
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