長ネギを育てる前に知っておきたいこと
長ネギの栽培を始める前に知っておきたいポイントは3つあります。
- 長ネギの種まきタイミングはいつ?
- 長ネギはプランターで栽培できる?
- そのほか、長ネギを植える場所の注意点は?
長ネギは生育期間が長いです。たくさん食べたいからと多く植えてしまうと、畑が足りなくなって困ってしまうこともあります。植える場所や時期には注意が必要です。
長ネギの種まきタイミングは3月と9月
長ネギの種まきタイミングは春と秋の2回です。種をまくタイミングは、春まきの3月と、秋まきの9月に行います。
種まきから収穫までスケジュールは下記のとおりです。
- 春まきの場合:3月に種まき、7月に植え付け、12月~翌年2月に収穫
- 秋まきの場合:9月に種まき、翌年4月に植え付け、9~11月に収穫
種から育てると9か月以上も時間が必要です。少しでも早く収穫したい方は、種苗店やホームセンターで苗を買い、苗を植えるところから始めてみてはいかがでしょうか。
長ネギの栽培に適した気候は20℃前後です。寒さにはたいへん強く、マイナス8℃くらいまでは凍結することなく耐えられます。一方で30℃を超えると太くならないばかりか、成長が衰えてしまいます。
長ネギのプランター栽培には工夫が必要
長ネギはプランターで育てることもできますが、慣れていない方にはあまりおすすめできません。なぜなら長ネギが日に当たらないよう、成長にあわせて土をかぶせていく必要があるからです。よって深めのプランターを用意する必要があります。
プランターでネギを育てるなら、葉ネギや「ワケギ」という品種のネギがおすすめです。細くて病害虫にも強く、育てやすいからです。冬でも青々と育つ葉ネギは薬味に便利なうえ、何度でもはさみで収穫できます。
同じ場所での栽培は1~2年あける
本記事では畑で長ネギを栽培する人向けに話をすすめます。
長ネギは独特の香りで害虫を遠ざけることと、根に生息する菌の働きによって病原菌を抑える効果が期待できます。よって比較的同じ場所で繰り返し作っても害が少ない、いわゆる連作障害に強い作物です。
しかし同じ場所で栽培すると、土の中に害虫が増えてしまい特定の病原菌に弱くなる恐れがあります。また土壌の栄養分が偏るため、次第に収穫量が減っていきます。
よって同じ場所で連続してネギを栽培するのは避け、1〜2年ほど期間をあけてから植えましょう。また「輪作」もおすすめです。
「輪作」とは、ほかの種類の異なる科の野菜と長ネギでローテーションを組み、畑の場所ごとに作付けする野菜を変えていくことです。これによって、土壌の栄養分が偏ったり害虫が増えたりするリスクを下げることができます。
長ネギの栽培方法
長ネギの栽培手順は以下のとおりです。
- 苗床作り
- 種まき・育苗
- 間引き
- 土作り
- 植え付け
- 追肥・土寄せ
- 収穫
1つひとつの手順とポイントを紹介します。
苗床作り
まずは、種をまいて苗になるまで育てる「苗床」をつくりましょう。
苗床に入れる苦土石灰と完熟堆肥、化成肥料を用意します。種まきの2週間以上前に、苗床の予定となる場所に苦土石灰を1平方メートルあたり約100グラム(2握りほど)入れた後、深く耕してください。
次に、1週間前に、完熟堆肥を1平方メートルあたり約3キログラム、化成肥料を1平方メートルあたり約150グラム(3握りほど)入れて耕します。
最後に、種まきするまでに畝(うね)を作っておきましょう。畝は高さ10cm、幅は60〜90cmほどにします。種まきまでに畝が崩れないよう、雨を避けて畝をつくるのがおすすめです。また、水はけが悪そうな畑でしたら、畝を高くしておくとよいでしょう。
なお、長ネギは長雨などの湿度にとても弱く、病気になりやすい作物です。苗床や畝は、日当たりと水はけのよい場所を選んでください。
種まき・育苗
気温が20℃前後になったら種まきを行いましょう。
5mm間隔で指や道具で溝を作って筋状に種をまきます。この方法を「スジまき」と呼びます。ひとつの畝で、3列から5列に分けてスジまきを行うとよいでしょう。この列のことを「条」と呼びます。5条まきといえば、ひとつの畝に5列、スジまきをするイメージです。
種をまいたら3〜5mmの厚さに覆土して、手でしっかりと押さえ、水やりします。発芽するまでは乾燥を防ぐため稲ワラや寒冷紗などで覆いましょう。種をまいてから1週間ほどで発芽してきます。
種まきをする時期、とくに春まきの3月は、気温の変化が大きい時期でもあります。長ネギは寒さに強いといえ、発芽や苗の成長にはじゅうぶんな温度が必要です。3〜4月の低温期の種まきでは、マルチを敷いたりビニールトンネルを設置したりするのがおすすめです。
間引き
苗がある程度育ってきたら間引きを行います。間引きを行う目安は下記のとおりです。
草丈が6〜7cmの頃:1.5cm間隔で1本だけ残す
草丈10cmの頃:3cm間隔で1本だけ残す
間引きを実施することで、より元気な苗を育てることができます。一般的に種子はすべて発芽するということはありません。芽が出た様子を見ながら元気な苗を、風通しが良くなるよう残しましょう。また間引きには、病害虫やその他の生育障害の苗を除くという目的もあります。
昔から農家は「苗半作」と言い、苗づくりの段階をとても大切にしています。苗の出来によって収穫のできばえの半分が決まるからです。育苗は種まきや間引きといった細かい作業が必要になりますが、おいしい長ネギをたくさん収穫するために、間引きはていねいに行いましょう。
土作り
苗作りと同じように、苗を植え付けて育てる畑の準備を始める時に大切なことが「土作り」です。土作りの作業は、作付け(種まき/苗の植え付け)までに、次の期間を空けて行います。
・植え付けの2〜3週間前:堆肥を投入する
・植え付けの2週間前:苦土石灰を投入する(1平方メートルあたり約100グラム(2握りほど))
・植え付けの1週間前:元肥(化成肥料、1平方メートルあたり約150グラム(3握りほど))を投入し、60〜90cm幅の畝を立てる
苗床づくりと大きく異なる点は、30cmほどの深い溝を作る必要があることです。
水が溜まりやすい畑の場合は、溝が地面より低くならないよう注意しましょう。植え付け時、畝の中央に30cmの深さの植え溝を掘る必要があります。たとえば40cmほどの高畝を作るなど、対策が必要です。
植え付け
苗の草丈が30cm前後、ボールペンほどの太さになったら、いよいよ収穫用の畑へ植え付けます。
根を傷めないように移植ゴテで苗を掘り起こして、1本ずつ分けます。根が傷んでいると植え付けがうまくいかず枯れてしまう恐れがあるので、やさしく丁寧に掘り起こしてください。
次に、畝の中央に30cmほどの植え溝を掘ります。掘り起こした土は、溝の両側に積み上げましょう。溝には、堆肥と化学肥料を入れて薄く土をかぶせます。土をかぶせる理由は、長ネギが直接肥料に触れ、肥料焼けを起こしてしまうのを避けるためです。
植え溝に5cm間隔で、1本ずつ壁に立てかけるように苗を置きます。根が隠れ、株が倒れない程度に土で覆うなど「浅植え」をしましょう。
植え溝には、水分を保持しつつ通気性をよくして病害虫を防ぐため、根元にワラを敷いておくのがおすすめです。また根が活着しやすいよう、植えた後軽く根の周りを踏んでおくと根元が安定します。
数日経って長ネギの根が土中に活着したら、茎を安定させ生育のストレスを小さくするため、長ネギの根元に少し畝から土を与える「埋め戻し」を行います。
追肥・土寄せ
収穫までの間、長ネギの成長に合わせて、計4回の土寄せと追肥を行います。追肥と土寄せのスケジュールは次のとおりです。
- 植え付けてから40~50日後に土寄せ(1回目)と追肥を行う
- 2~3週間後に2回目の土寄せと追肥を行う
- その後も3〜4週間ごとに土寄せを行う(3〜4回目まで行う。4回目は追肥なし)
追肥の量は、化成肥料を1平方メートル当たり1握り(約50g)が目安です。追肥した肥料を土と混ぜながら溝に入れ、分けつ部(葉が分岐するところ)の4〜5cm下まで土寄せします。
土寄せとは、長ネギの白い部分を作るため土で覆う作業のことです。長ネギの生長に合わせて土寄せすることで、葉鞘部が白く長くなります。土寄せをきっちり行って軟白部分を伸ばしていくことが、おいしい長ネギを育てるポイントです。
土寄せの際は、生葉を必ず4〜5枚残してください。また、分けつ部に土がかかってしまうと、生長が極端に悪くなったり腐敗の原因になったりしやすいです。分けつ部に土がかからないよう注意してください。
生育適温下では、1枚の葉が伸びるのに7〜10日を要します。土寄せ後、葉がプラス2〜3枚展開すればまた土寄せするといった感じで、2〜3週間を一つの目安として土寄せを行います。
また長ネギは雑草にとても弱いので、追肥の時に限らず、こまめに除草しましょう。
収穫
最後の土寄せから約4週間を目安に、太くて大きい長ネギを順次収穫しましょう。
白ネギ(根深ネギ)は軟白部分が長くなったら、畝の端からクワやスコップで土を崩して必要な分だけ掘り取ります。葉ネギは草丈が50cmほどになったら収穫しましょう。この時に株全体を収穫せず地上部のみ刈り取れば、引き続き新芽を収穫できます。
白ネギは成長した後も、軟白部が傷まない範囲で土中に埋めておけるものです。寒い時期、霜にあたった白ネギは甘みが増しておいしくなります。いちどに収穫せず、必要な時に必要な分を収穫していくのもおすすめです。
長ネギを育てるうえで初心者が注意すべき3つのポイント
長ネギを育てるうえで、初心者が注意しやすいポイントを3つご説明します。
- ネギ坊主をつまみ取る
- 病害虫に注意する
- 植え付け後は土寄せを行う
長ネギの栽培期間は、収穫まで約9か月以上と、長期にわたります。上記ポイントに注意することで、収穫量や品質がぐっと上がります。
ネギ坊主をつまみ取る
ネギ坊主とは、ネギの花のことです。球状の花を坊主頭に見立ててそう呼ばれるようになりました。
ネギに限らず、葉物野菜に花が咲くと、花から種を作ろうとする「生殖成長」が始まってしまいます。その結果、花に栄養が取られてしまうため、葉の部分が固くなってしまい、おいしくなくなる恐れがあります。
ネギ坊主を見つけたら、早めにつまんで取り除きましょう。取り除いても脇芽は成長します。取り除いたネギ坊主は天ぷらや味噌汁、軽くゆでて和え物にするとおいしいです。
ネギ坊主ができることを「とう立ち(薹立ち)」、または「抽苔(ちゅうだい)」といいます。
病害虫に注意する
長ネギの栽培時に発生する病気には、主に以下の3つが挙げられます。
- べと病
- さび病
- 黒斑病
それぞれの症状と対処法を紹介します。
べと病
葉に、黄白色のぼやけた大きめの斑点ができ、その後その斑点の上に灰色のカビ(胞子)を作ります。
べと病の病原菌は糸状菌(カビ)で、春と秋に発生し低温で雨が続くと多発します。発生しやすい時期になったら予防剤を散布して、病気の発生を防ぐようにしましょう。
さび病
さび病にかかると、葉や花茎の表面にオレンジ色の小さな紡錘・楕円形の小さい斑点が多数発生します。発病の激しい場合、葉全体に病斑が生じ、葉は黄白色になってしまい、光合成ができず枯死してしまいます。
さび病の病原菌は糸状菌(カビ)で、春と秋に発生するものです。具体的には気温15〜20℃での発病が多く、24℃以上では発病しません。雨が多いときや、チッソ過多の場合は多発します。病斑を見つけたら、薬剤散布を行い、初期防除に努めましょう。
黒斑病
黒斑病は、葉の中心に淡褐色のくぼんだ斑点ができ、次第に拡大して同心円上で黒色すす状のかびを生じ、病斑から上部の葉は枯れて垂れ下がります。黒斑病は春から秋に発生し、24〜27℃で降雨が多いと多発するので、早めに薬剤散布を行いましょう。
また、長ネギにはアブラムシやアザミウマ、ハモグリバエといった害虫もつきます。
長ネギにつく主な害虫についての詳細は下記記事で解説しています。ぜひご確認ください。
植え付け後は土寄せを行う
土寄せとは、長ネギ栽培の成功に欠かせない手順です。ここでは、土寄せのポイントを3つ、解説します。
- (苗から植え付けを行う場合)M字型に土を盛って植える
- M字をキープしながら土を上にのせていく
- 首元3cmまであける(首元いっぱいまで土を盛らないよう注意する)
1つずつ解説します。
苗から植え付けを行う場合)M字型に土を盛って植える
植え溝を掘った時に出た土は、畝の上に盛ります。この畝の上に盛った土を、土寄せの時に長ネギにかぶせて土寄せを行います。この際、M字型に土を盛っていくのがポイントです。
- 長ネギがまっすぐ育つ
- 長ネギの白い部分がキープでき、ネギが太る
- 土寄せをした断面をM字上の斜面にすることで、水はけがよくなり、病気にかかりにくくする
M字型に土を盛ることで、上記の効果が期待できます。
M字をキープしながら土を上にのせていく
栽培期間中、計4回ほどの土寄せの際も、常にM字をキープしながら土を上にのせていきましょう。土寄せをしたとき、M字が崩れないよう、くわなどで軽く押さえるのも効果的です。
途中、大雨などで土寄せが崩れてしまった時や分けつ部が伸びた時は、適宜土寄せを行ってください。白い部分をしっかりキープするためには、土寄せが欠かせません
首元3cmまであける
土寄せの時は、分けつ部の下4〜5cm、最低でも分けつ部の首元3cmまで空け、首元いっぱいまで土を盛らないよう注意してください。
分けつ部に土がかかると生長が著しく悪くなったり、腐敗の原因となったりします。
長ネギ栽培には工夫が必要
本稿では、長ネギ栽培の手順とポイントを解説しました。
- 収穫までの期間が長い
- 苗を作ってから植え替えることである程度の広さの畑が必要
- プランター栽培が難しい
このような理由から、気軽にチャレンジしにくい作物かもしれません。
「薬味を日常的に楽しみたい」
「プランター栽培を気軽に楽しみたい」
このように考えている方は、白ネギでなく葉ネギを栽培したり、他の短期間で栽培できる野菜を育てることを考えたりするのがおすすめです。
一方、長ネギは土寄せを繰り返すことで成長する過程を楽しむことができます。畑を持っている人や、底の深いプランターをもっている人は長ネギ栽培にチャレンジしてみてはいかがでしょうか。