はじめに
鍋や漬物によく使われるハクサイは、冬野菜の代表格のひとつです。日本では古くから食べられており、近年では小ぶりで家庭菜園でも育てやすいミニ白菜など新たな品種も開発されています。
そこで今回は、ハクサイの栽培で注意したい害虫とその予防法・対処法をご紹介します。
ハクサイ栽培で注意したい害虫
ハイマダラノメイガ
メイガの中でも、ハイマダラノメイガはハクサイの害虫として知られています。幼虫がハクサイの中心に潜りこみ、芯葉から食害を引き起こします。葉脈や葉柄の中に潜んでいることもあります。
ハイマダラノメイガの幼虫は体長20㎜程度で、体色は淡黄色をしています。気温が上がって暖かくなる春頃から発生が始まり、1年の間に世代交代を繰り返して複数回発生します。ハクサイを始め、キャベツやダイコンなどのアブラナ科の野菜に多く発生する害虫です。
予防法・対処法
- 畝全体に寒冷紗や防虫ネットを掛けておくことで、成虫の飛来を防ぐことができます。
- 育苗期は特に、施設内で育てたり防虫ネットをかけたりして被害を防ぎましょう。
コナガ
コナガは、幼虫がハクサイの葉を食害する害虫です。葉の表面を食べて白い跡を残し、放置しておくと食害を受けた部分が破れます。苗が幼い時期に被害を受けると、幼虫が株の中心に潜りこんで成長を阻害することがあり、被害が大きくなります。
コナガの幼虫は体長10㎜程度で、体色は淡黄色~淡緑色をしています。気温が上がって暖かくなる春頃から発生が始まり、1年の間に世代交代を繰り返して複数回発生します。アブラナ科の野菜に多く発生する害虫です。
予防法・対処法
- コナガの成虫の飛来を防ぐため、畝全体に寒冷紗や防虫ネットを掛けるとよいでしょう。
- 育苗期は特に、施設内で育てたり防虫ネットをかけたりして被害を防ぎましょう。
カブラハバチ
幼虫が食害をもたらします。幼虫の体色は濃い青紫色をしており、体長は15㎜程度です。成虫は体長約10㎜でオレンジ色をしています。
カブラハバチの幼虫が発生すると、葉に大きな穴があきます。放置しておくと葉脈以外の部分が食べつくされて大きな被害となるため、早期に対処することが重要です。
春から秋にかけて、一年間に5回程度発生します。夏は気温が上がるため被害が比較的少なくなります。ハクサイだけでなくキャベツやダイコンなどのアブラナ科の野菜に多く発生する害虫です。
予防法・対処法
- 成虫は見つけたら捕獲します。
- 防虫ネットや寒冷紗で覆うことで、成虫の飛来と産卵を予防しましょう。
ヨトウムシ
ハクサイを食害するヨトウムシとしては、ヨトウガとハスモンヨトウが知られています。いずれも、幼虫が葉に食害をもたらします。
初期には葉の表面が食害されるため一部が白く見えるようになります。放置しておくと穴があき、やがて葉がボロボロになります。
ヨトウムシはヨトウガの幼虫で、昼間は土の中に隠れていて夜に活動を開始します。成虫は薬剤への抵抗性が高いため、幼虫の時期に適切に駆除することで被害を最小限に食い止めましょう。
また、ハクサイやキャベツなどのアブラナ科の作物以外でも、ナスやネギなどの多様な野菜で発生するため、周囲で別の作物を育てている場合にも注意が必要です。
予防法・対処法
- 植え付ける前に圃場をよく耕して、幼虫やさなぎを見つけたら駆除しましょう。
- 成虫であるヨトウガの飛来を防ぐため、ハクサイに防虫ネットをかけるとよいでしょう。
- ヨトウガは葉の裏側に卵を産み付けます。卵を見つけたら、孵化する前に葉ごと切り取って取り除きましょう。
アブラムシ
アブラムシは体長0.5~3㎜の虫で、葉や茎に大量に発生します。ハクサイに発生するアブラムシは複数あり、白色のダイコンアブラムシ、濃い緑色のニセダイコンアブラムシ、赤褐色~淡緑色のモモアカアブラムシなどが知られています。
成虫、幼虫ともに葉や茎を吸汁します。アブラムシが大量に発生した株は生育が阻害されるだけでなく、アブラムシの排泄物にカビが発生してすす病を発病します。
また、アブラムシはモザイク病を媒介することが知られています。
予防法・対処法
- マルチを敷くと、成虫の飛来を予防することができます。
- 防虫ネットや寒冷紗を用いて苗を保護してもよいでしょう。
- アブラムシと共生関係にあるアリを除去することで、アブラムシの増殖を抑制する方法もあります。
アオムシ
アオムシはモンシロチョウの幼虫で、体長3㎝程度にまで成長します。葉を食害して穴をあけ、多く発生すると葉の葉脈以外の部分が深刻な被害を受けます。
年に数回発生しますが、夏は天敵が活発に活動しているため発生が少なくなります。冬季はさなぎの状態で越冬します。ハクサイやキャベツをはじめとするアブラナ科の作物で多く発生します。
予防法・対処法
- 寒冷紗や防虫ネットをかけて成虫の飛来や産卵を予防しましょう。
- ネキリムシは雑草にも産卵するため、圃場の周囲の雑草は丁寧に抜くようにしましょう。
ハクサイダニ
ハクサイダニは体長約1㎜の虫で、体色は写真の様に赤黒い色をしています。足が8本あり、クモのように見えるのが特徴です。成虫と幼虫が食害を引き起こします。
アブラムシと大きさや姿かたちが似ていますが、アブラムシはほとんど動かず寄り集まって静止しているのに対してハクサイダニは各個体が距離を保ちながらゆっくりと移動する性質を持っていることから区別できます。
成虫、幼虫ともに葉や茎を吸汁します。ハクサイダニが大量に発生した株は生育が阻害されて葉が白っぽくなり、やがて枯死に至ります。
ハクサイやダイコン、ホウレンソウなど、複数の野菜で発生します。1~2月に局地的に発生することが多いため、寒くなったからといって油断しないよう注意が必要です。
予防法・対処法
- 収穫後の畑に葉や茎を残したままにしておくと、ハクサイダニが発生しやすくなります。圃場は清潔に保つように心がけましょう。
- ハクサイダニは雑草でも発生するため、圃場の周囲の雑草は丁寧に除去しておきます。
- 連作を避けることも効果的です。
ハムシ類
ハムシ類の中でもハクサイを食害することで知られているのは、ダイコンサルハムシとキスジノミハムシの2種類です。
ダイコンサルハムシは成虫・幼虫ともに食害をもたらす害虫で、幼虫は体長約7㎜、成虫は体長約5㎜程度です。葉に2~5㎜前後の穴をあけるため、苗が幼い時期に被害が多発すると、発育が阻害されて苗が枯死することもあります。
キスジノミハムシの成虫はダイコンサルハムシと比較すると小型で、体長約2㎜です。触ると跳ねることから「ノミ」の名がついています。幼虫は体長8㎜程度で土壌中に生息しています。
キスジノミハムシによる食害は主に成虫によってもたらされ、葉に約1㎜の小さな穴が多数あきます。被害が拡大すると株が枯死することもあります。幼虫は根を食害しますが、ほとんど実害がないことが知られています。
予防法・対処法
- キスジノミハムシが発生した場合は土壌中に幼虫が残存することが考えられるため、連作を避けることで被害を予防しましょう。
- 防虫ネットや寒冷紗などを利用して、成虫の飛来や産卵を防ぎましょう。
- ハムシ類は雑草でも発生するため、圃場の周囲の雑草は丁寧に除去しましょう。
ハクサイを健康に育てるために
害虫が発生すると、作物の生育が阻害されるだけでなく、病気の発生につながる場合もあります。
知っておくべきハクサイの病気と対処法では、ハクサイに発生しやすい病気についてご紹介しています。美味しいハクサイを育てるために必要な対処法について、合わせて押さえておきましょう。