作物の厄介な病害である「炭疽病」とは?
炭疽病ってどんな病気?
炭疽病とは、カビによって引き起こされる、葉や実が感染する病気の一種。初期症状では、黒褐色の小斑点ができる。これがしだいに拡大していき、斑点の内側が淡褐色~灰白色の斑点になり、最終的には葉に穴が開いたり、葉先から枯れてしまったりということになります。
カビは胞子という粉で病害を広げていくという厄介な特徴があります。炭疽病を引き起こすカビの胞子は、水や空気を通して広がっていきます。そのため湿度が高いと繁殖しやすく、湿度が高くなる6~9月に、特に風通しの悪いところで多発します。
感染作物は?
多種多様な作物に感染します。イチゴ、キュウリやゴーヤなどウリ科、マンゴーやアボカドなどの果実、そのほかにもほとんどの野菜に感染し、非常におおきな被害となっています。
収穫後であっても、実に病原菌が付着していると見た目・風味ともに腐ったような状態にしてしまうことが知られています。
炭疽病を引き起こす病原菌は何種類も知られており、種ごとにその生育温度や薬剤効果などが異なる点も厄介です。
炭疽病が厄介な病害であることはお分かりいただけたと思います。
病害は予防をおこない発生させないのがいちばんですが、もうかかってしまった、対処法が知りたい…という方もいらっしゃいますよね。そんな方のために、予防法から畑の復活方法まで紹介します。
炭疽病の予防法や対処法を紹介!本当に効果のある方法は?
炭疽病の感染予防
しっかりと予防すれば防ぐことができます。以下の対策をバランスよくおこなうことが予防のカギです。大きく分けると「排水対策」「植物の抵抗性をあげる対策」があります。
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※2023年12月~2024年4月のデータ排水対策
土壌改良をおこない、水はけの良い状態にする
水はけが悪い状態の土壌中で生育する根は弱ってしまうため、病気にかかりやすくなってしまいます。そのため、植え付け前に事前に土壌改良をおこないましょう。
過密状態を避けるように株間は広めに
病原菌は水分や土壌中が広がっていきます。密植は作物の風通しが悪くなるため、作物の成長にともなって葉分けをおこなうなどの管理が重要です。
マルチングによって泥はねを避ける
雨などによる土の跳ね返りが、作物に付着してしまうと病気にかかりやすくなります。そのため、マルチや敷き藁を設置しましょう。また、落ち葉を放置すると、その落ち葉にも土が付着していたり落ち葉そのものに病原菌が付着している可能性があるため、よくありません。
資材消毒をおこなう
水中にのって広がる病原菌であるため、器具(支柱やひも、剪定ばさみなど)に付着して広がる場合もあります。こまめに器具の消毒をおこなうのも有効です。
植物の抵抗性をあげる対策
抵抗性品種をもちいる
抵抗性品種をもちいることで感染率が下がります。
最適なバランス・量の栄養が含まれるように整える
肥料の三要素であるNPKのバランスがよくなるように、元肥を加えます。元肥は、効果がゆっくり長く持続する緩効性肥料が適しています。これを植え付け1週間まえを目安に土壌とよく混ぜておきます。
さらに、肥料切れが起きないように追肥もおこないます。しかし、窒素過多の状態は非常に病気にかかりやすくなってしまうため、加え過ぎないように注意しましょう。
スプレーをつかって木酢液や薬剤を散布する
木酢液とは、植物の生育促進、防菌、微生物活性などの効果があることで知られる、木材由来の液体。木酢液や酢酸などの有機酸を散布することで、もし植物体が弱っていても病原菌に感染するのを防ぐ可能性が高まります。また重曹でも似た効果が得られることが知られています。適切な濃度に希釈して、葉の表裏にスプレーをつかって散布しましょう。
炭疽病の対処法
炭疽病は、6 月∼7 月の梅雨期や 9 月∼10 月頃の秋雨期など雨が多く暖かい時期に発生しやすい病害です。炭疽病になってしまったら、一刻もはやく蔓延を防ぐ必要があります。放っておくと葉に穴があくなど深刻な状況になりかねません。
炭疽病は出来るだけ毎日葉の観察をおこない、問題がないか確認してください、初期対処がもっとも重要です!
患部を取り除き、薬剤を散布する
患部には病原菌が付着しているので、静かに取り除き、袋などにいれて処分します。その後、土寄せの前あるいは土寄せ時に、薬剤を散布しましょう。
★抗菌剤の選び方
1種類の抗菌剤だけだと免疫ができてやすいので、3種類の抗菌剤を交互に散布するのがポイント。植物用の抗菌剤や殺菌剤であれば使用できます。
サンケイオーソサイド水和剤80、ベンレート水和剤、ダコニール1000など
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炭疽病にかかってしまった畑の復活方法
手を打つのが遅かったから対処しきれなかった…けれど、この土壌を次の作物栽培にそのまま使用していいの?という疑問の方もいらっしゃいますよね。
炭疽病の病原菌は、繁殖をおこない夏や冬のあいだも枯れ葉などに付着し、春や秋になったら再度繁殖します。このとき、土壌や葉にふくまれる空気・水をとおして胞子が飛んで感染していきます。
なかでも、イチゴの炭疽病は感染株による持ち込みがほとんど。イチゴは栄養繁殖であるため、親株をもとに定植用の苗を増殖します。
そのため、残渣を徹底的に排除するのがよいでしょう。さらに、土壌消毒をおこなうことを検討しましょう。
簡単な土壌消毒の方法としては、太陽熱消毒や寒起こしなどがあります。
【夏】太陽熱消毒
レーキや土ふるいで被害を受けた株の根をすべて取り除き、土を透明なビニール袋に入れて水分を含ませ密封します。2~3日ごとに袋の両面をひっくり返して、直射日光に長時間当てます。道具も必要最低限で済む、夏におすすめの方法。
【冬】寒起こし
一方、冬は晴れていて風のない日に、土を掘り返します。その後、1ヶ月ほど寒さにさらします。このとき、土が含んでいる水分の凍結や解凍を繰り返すことで害虫や病原菌へダメージを与えられます。道具がいらない、冬におすすめの方法です。
おわりに
本記事では炭疽病の特徴とその対策法を紹介しました。葉にも実にも重大な被害をもたらす炭疽病。病害は発生していまったらできるだけはやく対処しないと手遅れになるので注意しましょう。予防法からぜひ実践してみてくださいね。