はじめに
夏野菜の代表格、トウモロコシ。メキシコ原産で人類の歴史とともに品種改良が重ねられてきたトウモロコシは、通常食用に供されるスイートコーンだけでなく、ポップコーンやデントコーンなど様々な種類が存在しています。
また、スイートコーンの中だけを見ても、大粒で甘みの強いゴールドラッシュや実が真っ白なピュアホワイト、黄色と白の実が混ざっているバイカラーコーンなど、様々な種類のトウモロコシが存在します。
そこで今回は、夏季に旬を迎えるトウモロコシの栽培で注意したい害虫とその予防法・対処法をご紹介します。
トウモロコシ栽培で注意したい害虫
メイガ
メイガの中でもアワノメイガはトウモロコシの最大の害虫として知られています。卵がトウモロコシの穂に産み付けられると、そこからふ化した幼虫がトウモロコシの茎の内部に潜り込み、実や茎を食い荒らします。
アワノメイガの幼虫は体長15㎜程度で、体色は淡黄色をしています。気温が上がって暖かくなる春頃から発生が始まり、1年の間に世代交代を繰り返して複数回発生します。一度発生すると完全に駆除することが難しい害虫です。
予防法・対処法
アワノメイガによる穂への食害はかなり大きいため、雌穂が出る時期に合わせて防除を行いましょう。また、受粉後に雄穂が残っていると、そこから茎の内部に侵入することがあるため、受粉が終わったら雄穂を折り取るとよいでしょう。
- メイガの飛来を防ぐため、株全体にネットを掛けるとよいでしょう。
- 果実一つ一つにネットを掛ける方法もあります。
- 授粉が終わったら雄穂は折り取るようにします。
オオタバコガ
オオタバコガは、幼虫が作物の茎や果実に潜りこむことで食害を引き起こします。トウモロコシだけでなく、ナスやトマト、キャベツ、ゴーヤなど多くの作物に被害をもたら済害虫です。幼虫は体長20~40㎜で、緑色~オレンジ色をしています。
幼虫が小さいときには新芽や柔らかい葉が被害にあいやすく、成長すると茎の内部や実にも食害をもたらします。
予法・対処法
- 幼虫を見つけたら、捕まえて駆除します。
- 被害を受けた株の周辺にも潜んでいる可能性があるため、注意深く観察しましょう。
- 窒素過多になっている場合には幼虫がつきやすくなるため、適切な施肥管理を心がけましょう。
- 防虫ネットを掛けて成虫の飛来・産卵を予防するとよいでしょう。
カメムシ
カメムシは収穫時期が近付いたトウモロコシに飛来し、実を吸汁することによる被害をもたらします。カメムシが吸汁すると、下の写真のように実が茶色に変色したり張りを失って変形したりするため、商品としての価値が損なわれてしまいます。
予防法・対処法
- 成虫は見つけたら捕獲します。
- カメムシは雑草にも発生するため、圃場の周辺に雑草が茂っているとそこから圃場に侵入してくることがあります。圃場の周りの雑草は刈り取って、カメムシの飛来を予防しましょう。
- 防虫ネットや寒冷紗で覆うことで、成虫の飛来を予防しましょう。
ヨトウムシ
トウモロコシを食害するヨトウムシは複数種に及び、アワヨトウ、キタショウブヨトウ、ツマジロクサヨトウなどが知られています。いずれも、幼虫が葉や茎に食害をもたらします。
アワヨトウの幼虫は、葉を周縁部から食べ進み、生育を阻害するのに対して、キタショウブヨトウの幼虫は地面に近い部分から穴をあけて茎の内部に潜りこみ、中心からトウモロコシを食害して葉の萎れなどの症状を引き起こします。
ヨトウムシはヨトウガの幼虫で、昼間は土の中に隠れていて夜に活動を開始します。成虫は薬剤への抵抗性が高いため、幼虫の時期に適切に駆除することで被害を最小限に食い止めましょう。
予防法・対処法
- 植え付ける前に圃場をよく耕して、幼虫やさなぎを見つけたら駆除しましょう。
- 成虫であるヨトウガの飛来を防ぐため、トウモロコシに防虫ネットをかけるとよいでしょう。
- ヨトウガは葉の裏側に卵を産み付けます。卵を見つけたら、孵化する前に葉ごと切り取って取り除きましょう。
アブラムシ
アブラムシは体長0.5~3㎜の虫で、葉や茎に大量に発生します。体色は、写真の様に黒色のものから緑色、黄色、灰色など様々な種類があります。
成虫、幼虫ともに葉や茎を吸汁します。アブラムシが大量に発生した株は生育が阻害されてるだけでなく、アブラムシの排泄物にカビが発生してすす病を発病します。
また、アブラムシはモザイク病を媒介することが知られています。
予防法・対処法
- マルチを敷くと、成虫の飛来を予防することができます。
- アブラムシと共生関係にあるアリを除去することで、アブラムシの増殖を抑制する方法もあります。
アブラムシの防除に役立つ、上手なマルチの貼り方は、こちらの動画を参考にしてくださいね。
ネキリムシ
ネキリムシとは、カブラヤガやタマナヤガなどのガの幼虫のことです。トウモロコシを定植してからおよそ1週間後の苗に最も多く発生し、地面近くの茎を食害します。茎が完全に噛み切られることもあり、大きな被害をもたらします。
ネキリムシは日中は地中に潜み、夜間に活動します。ネキリムシは地表近くにいる場合が多いため、地面近くの葉が食害されてるときや、茎が切られているときには、株の付近の地面を掘ってみると見つけられる場合があります。
予防法・対処法
- 被害を受けている株の付近を掘り、発見したら駆除しましょう。
- 寒冷紗や防虫ネットをかけて成虫の飛来や産卵を予防するとよいでしょう。
- ネキリムシは雑草にも産卵するため、圃場の周囲の雑草は丁寧に抜くようにしましょう。
トウモロコシを健康に育てるために
害虫が発生すると、作物の生育が阻害されるだけでなく、病気の発生につながる場合もあります。
トウモロコシを病気から守る!知っておくべきトウモロコシの病気まとめでは、トウモロコシに発生しやすい病気についてご紹介しています。美味しいトウモロコシを育てるために必要な対処法について、合わせて押さえておきましょう。