プランター栽培における病害虫
野菜作りをしていると病気や害虫とはなかなか縁を切ることはできません。ひとたび病気になったり、害虫が大量発生したりすると、野菜の生育は著しく悪くなってしまいます。最悪の場合は株ごと枯れて、それまで丹精込めて作ってきた野菜がダメになってしまうこともあります。
そもそも病害虫はなぜ発生してしまうのでしょうか。プランター栽培でも畑と同様に病害虫が発生するのでしょうか。
プランター栽培では病害虫は発生しにくい
実は、プランター栽培は病害虫が発生しにくいとされています。畑での栽培では、まわりに似たような野菜が多く植えられていたり、毎年連続して同じ野菜を作っていたりすることが多いため、病害虫がひっそりと生き残って野菜を狙っていることや季節が来ると野菜めがけて飛んでくることが少なくありません。
一方で、プランターでは、栽培する野菜の量が少なく、土も使いまわさないため病害虫が発生しにくくなっています。高層階のベランダは、特に害虫が飛来しづらい環境になっていると言えるでしょう。
もちろん、それでも被害にあってしまうことはしばしばあります。病害虫が発生しない環境づくりや予防法を講じていきましょう。
せっかく病害虫が発生しにくい条件になっているので、病害虫をもちこまないようにしましょう。使う培養土はできるだけ無菌のものを利用し、苗を買うときも害虫がついていないものを選ぶよう心がけてください。
生理障害
病害虫が発生しにくいプランター栽培で生育の遅れや苗の萎縮といった被害があらわれた場合、もしかしたら生理障害が起こっているかもしれません。
生理障害は、肥料が足りなくなってる時や乾燥・加湿により野菜にストレスがかかっている時などに起こります。プランター栽培は外の影響を受けて土の環境が急変しやすく、野菜にとってはそれが大きなストレスになります。発育不全が見受けられるけれども病害虫被害の典型的な症状が出ていないという場合は、生理障害を疑ってみてください。
野菜が不健康だと病害虫が発生する
野菜が健康的に育っている場合、病害虫は基本的に発生しません。野菜も人間と同じように病害虫といった外敵から身を守る術を持っているからです。葉の表面に硬い層を形成することで害虫が簡単に食害できないようにしている野菜や、食害を受けた時にジャスモン酸という植物ホルモンを分泌し、害虫がタンパク質を分解するのを阻害する物質を出す野菜もあります。
しかし、野菜が不健康だとそうした防衛機能が十分に働きません。栄養分の不足や発育不良といった穴をついて、病害虫は野菜に侵入したり食害したりします。
また、窒素肥料をたくさん与えてしまうと、野菜の葉にたくさんの窒素分が蓄えられることになります。害虫にとって窒素分は体を作るタンパク質の原料になるものであり、より多くの窒素分を含む葉は美味しく感じるようです。
野菜を健康的に育てるためには、適切な環境を作ってあげることが肝要です。肥料は過不足なく与え、十分な日射量を確保します。プランターでの栽培は乾燥しやすいため、特に夏場は十分な頻度で水やりをしましょう。
また、生育適期にあわせて野菜を植えることも大切です。旬を外れた野菜は気温によるストレスもあり、健康的には育ちにくくなります。
加えて、良い苗を選んで植えることも重要です。「苗半作」という言葉の通り、苗の良し悪しは生育に大きな影響を与えます。がっしりとした健康な苗を選んで植えることで病害虫にも強い野菜が育つでしょう。
病害虫が発生しない環境づくり
野菜を健康的に育てるためには、周囲の環境を整えることが重要です。
風通しをよくする
病害虫は空気のよどんだ環境を好みます。そうした環境を排除することで、病害虫が発生しにくい環境を作ることができます。風通しを良くするためには以下に挙げるようなことを実践するとよいでしょう。
- プランターとプランターの間隔をあける
- 台などを使ってプランターの高さに差をつける
- 間引きを行い、株間をしっかりととる
- 枯葉や黄色くなった下葉を取り除く
- 適度に剪定や摘心をする
プランターは狭いベランダに効率的に置くために密になってしまいがちですが、適切に距離をあけて風が通るようにしましょう。
枯れかけの葉から病気が伝染することもあるため、こまめに取り除いて地際をすっきりさせます。時々プランターを動かしたり回転させたりして、環境を変えてみてもよいかもしれません。
コンパニオンプランツを活用する
病害虫が発生しにくい環境を作るという意味では、コンパニオンプランツを活用する方法も効果があります。
コンパニオンプランツは、近くに植えるとお互いに良い効果を与えあうとされている野菜の組み合わせです。コンパニオンプランツについては本サイトの記事、コンパニオンプランツとは?コンパニオンプランツの効果と気になる用語を解説!で紹介していますので、ご覧ください。
防虫ネットをかける
防虫ネットを利用するのは害虫を予防する方法として最も確実です。プランター栽培ではプランターの上にアーチ状に支柱を渡し、全体を防虫ネットで覆います。防虫ネットの裾を紐でしっかりとプランターにくくりつけて、隙間から害虫が入ってこないようにします。
プランターとセットで防虫ネットと支柱が売られていることもあり、そうしたものを使うと簡単で便利です。防虫ネットをかける場合には、種まきや植え付け後すぐにおこなうことが重要です。卵を産みつけられた後から防虫ネットをかけた場合、害虫にとっては逆に天敵がやってこない楽園になってしまいます。
防虫ネットの網目の大きさに関する情報はこちらの記事にまとめてありますので、あわせてご覧ください。
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害虫対策のテープを使う
特定の害虫対策には色のついた市販の粘着テープが有効です。アブラムシであれば黄色を、アザミウマであれば青色を好む性質があり、それぞれの色に引き寄せられたところを粘着テープでからめとります。
また、アブラムシがキラキラしたものを嫌う性質を利用する方法もあります。日光を反射させるためにアルミホイルをしいたり、銀色のテープをまいたりします。
プランター栽培の害虫対策
病害虫が発生してしまったときには、捕殺や農薬で対処しましょう。
捕殺する
害虫を見つけることができた場合には、捕まえてみましょう。アオムシなどの大きな害虫であれば、割りばしやピンセットを使ってとることができます。
アブラムシのような小さな害虫であれば、ガムテープなどの粘着テープをつかってまとめて捕殺しましょう。
見つけることができなかったとしても、株全体に被害が広がる前に異常を発見することができれば、食害を受けた葉や感染した葉を1枚取り除くことで難を逃れられるかもしれません。いずれにせよ、毎日よく観察して早期発見することが重要です。
農薬を使う
害虫や病気が発生してしまいどうにも対処しようがない場合には、薬剤を使って防除しましょう。
薬剤には粒状のものとスプレー状のものがあります。粒状のものは土の上に均等に、スプレー状のものは葉の表だけでなく裏にもしっかりとかけるようにしましょう。
害虫や病原菌は葉裏にいることも多いです。どちらを使う場合であっても表示に従って正しい使用方法を守りましょう。
農薬を使用する場合には、本サイトの農薬データベースもあわせてご利用ください。対象農作物と適用病害虫を入力すると効果のある農薬を参照することができます。
おわりに
今回はプランター栽培での病害虫の予防についてご紹介しました。ベランダ菜園は病害虫が発生しにくい環境にあるので、栽培環境を整えて農薬に頼らず栽培できると良いですね。それでも万が一発生してしまった場合には早めに対処しましょう。
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