はじめに
独特の風味と香りを持つシュンギクは、古くから日本人に好んで食べられてきた野菜です。近年では、えぐみが少なく生でも食べられる品種が開発され、従来の煮物や鍋、炒め物といった火を通す料理だけでなくサラダなどに使われることがあり、人気が高まっています。
キク科の野菜で、害虫がつきにくく育てやすいといわれていますが、注意するに越したことはありません。今回は、シュンギクの栽培で特に気をつけたい害虫とその予防・対策法をご紹介します。
シュンギク栽培で注意したい害虫
アブラムシ
シュンギクにはワタアブラムシがつくことが知られています。体長は約1~2㎜、体色は黄色や青緑色で、葉や茎に大量に発生します。日本全国に分布し、多くの種類の野菜に被害をもたらします。
成虫、幼虫ともに葉の裏に密集して吸汁します。ワタアブラムシが大量に発生した株は生育が阻害されて葉が委縮します。また、ワタアブラムシはモザイク病の原因となるウイルスを媒介することが知られています。
予防法・対処法
光を反射する銀色のマルチを敷くと、成虫の飛来を予防することができます。また、アブラムシと共生関係にあるアリを除去してアブラムシの増殖を抑制する方法もあります。
※マルチの種類についてはこちらの記事をご参照ください。
マルチを使い分けて野菜作り!様々なマルチの種類と効果まとめ | AGRIs
マルチには、黒や白といった色や生分解性といった特性の違うものがたくさんあります。それぞれのマルチがどういった効果を持つのかまとめました。
https://www.agri-smile.app/articles/type-mulch
マメハモグリバエ
ハモグリバエ類にはナモグリバエやトマトハモグリバエなど、複数の種類が存在しています。シュンギクではマメハモグリバエの被害が観察されます。
マメハモグリバエは幼虫・成虫ともに体長約2㎜ほどで、幼虫が葉肉に潜りこんで食害します。葉の内部を食べ進むため、表面から見ると白い跡が残ります。被害が大きい場合には葉が白く変色し、光合成ができなくなって枯死にいたることもあります。
マメハモグリバエは葉に産卵するため、苗に卵や幼虫がついている場合があります。シュンギク以外にトマトやナス、キュウリなど複数の作物で発生します。
予防法・対処法
寒冷紗や防虫ネットをかけて成虫の飛来や産卵を予防しましょう。また、天敵である寄生蜂を利用して防除する方法も有効です。
ヨトウムシ
ヨトウムシには複数種あり、ヨトウガやハスモンヨトウ、シロイチモンジヨトウが知られています。いずれも、幼虫がシュンギクの葉に食害をもたらします。
初期には葉の表面が食害されるため一部が白く見えるようになります。放置しておくと穴があき、やがて葉がボロボロになります。
ヨトウムシはヨトウガの幼虫で、昼間は土の中に隠れていて夜に活動を開始します。成虫は薬剤への抵抗性が高いため、幼虫の時期に適切に駆除することで被害を最小限に食い止めましょう。
また、シュンギクのようにキク科の野菜以外でも、ハクサイやキャベツ等のアブラナ科の作物や、ナス、ネギなど多様な野菜で発生するため、周囲で別の作物を育てている場合にも注意が必要です。
予防法・対処法
植え付ける前に畑をよく耕して、幼虫やさなぎを見つけたら駆除しましょう。また、成虫であるヨトウガの飛来を防ぐため、防虫ネットをかけるとよいでしょう。
ヨトウガは葉の裏側に卵を産み付けます。卵を見つけたら、孵化する前に葉ごと切り取って取り除きましょう。
アザミウマ
シュンギクで発生するアザミウマ類は複数種知られており、ミナミキイロアザミウマ、ネギアザミウマ、ヒラズハナアザミウマ、ミカンキイロアザミウマが有名です。
成虫・幼虫ともに葉や茎から汁液を吸うため、葉が奇形になるほか、縦長の白い小斑点が残ります。
アザミウマ類は、キク科のシュンギクだけでなくナス科のピーマンやウリ科のキュウリ、スイカなど複数の野菜を食害するため、周囲で他の作物を栽培している場合には注意が必要です。
予防法・対処法
アザミウマ類の中でもミナミキイロアザミウマは薬剤への抵抗性が高いことが知られています。そこで、天敵であるカメムシを用いてミナミキイロアザミウマを捕食させる方法や、ミナミキイロアザミウマの栽培施設への侵入を防ぐために寒冷紗でビニルハウスの開口部を覆う方法などが取られています。また、太陽光をよく反射するマルチを用いて株元を保護することもミナミキイロアザミウマの発生を予防する効果があります。
- アザミウマ類は雑草でも繁殖するため、圃場の周囲の雑草は取り除いて発生を防ぎましょう。
- マルチを敷くことで株の根元への侵入を予防しましょう。
- 寒冷紗で覆うと苗への被害を抑えることができます。
ネキリムシ
ネキリムシとは、カブラヤガやタマナヤガなどのガの幼虫のことです。定植後の幼苗期に多く発生し、地面近くの茎を食害します。茎が完全に噛み切られることもあり、葉が白色に変色して生育が大きく抑制される恐れがあります。
ネキリムシは日中は地中に潜み、夜間に活動します。ネキリムシは地表近くにいる場合が多いため、地面近くの葉が食害されてるときや、茎が切られているときには、株の付近の地面を掘ってみると見つけられる場合があります。
予防法・対処法
被害を受けている株の付近を掘り、発見したら駆除しましょう。
寒冷紗や防虫ネットをかけて成虫の飛来や産卵を予防するとよいでしょう。また、ネキリムシは雑草にも産卵するため、圃場の周囲の雑草は丁寧に抜くようにしましょう。
シュンギクを健康に育てるために
害虫が発生すると、作物の生育が阻害されるだけでなく、病気の発生につながる場合もあります。
シュンギクを病気から守る!知っておくべきシュンギクの病気6つとその対策では、シュンギクに発生しやすい病気についてご紹介しています。美味しいシュンギクを育てるために必要な対処法について、併せて押さえておきましょう。