はじめに
キク科作物のシュンギクは、独特の風味と芳香が特徴の野菜です。春に花が咲くことから「春菊」の名で呼ばれるようになったと言われています。西日本では「菊菜」と呼ばれることもあります。
日本では、各地で古くから栽培されており、鍋物や煮物に重宝されてきました。近年は、苦みや香りを抑えて生でも食べられるように改良されたサラダシュンギクなども栽培されるようになり、家庭菜園でも育てやすい野菜として人気が高まっています。
今回は、シュンギクがかかりやすい病気とその予防法・対処法をご紹介します。
シュンギク栽培で注意したい病気
炭疽病
シュンギクに炭疽病をもたらす病原菌として、Colletotrichum acutatumとColletotrichum chrysanthemiの2種類が知られています。いずれもカビ(糸状菌)で、高温多湿の時期に繁殖します。
感染の初期には葉に淡褐色の病斑が生じ、病気が進行すると病斑が拡大して中央部が変色し、凹みはじめます。葉や茎にできる病斑は、湿気が多い状態が続くとヤニを生じます。
水はけが悪く高温多湿の環境で多く発生します。被害を受けた茎や葉にカビが残存し、胞子が空気を介して周囲に飛散することで感染が広がります。
下の写真は炭疽病を発症したネギのものですが、症状が進行している様子が観察できます。
予防法・対処法
発病した株は葉や茎が圃場に残らないように完全に除去しましょう。万が一炭疽病が発生した圃場に植え付けを行う場合は、定植前に消毒を行うようにしましょう。また、完熟たい肥を混ぜ込むなどして畑の水はけをよく保つことも有効です。
炭疽病は肥料過多の場合に発生しやすくなるため、施肥管理には十分に注意しましょう。さらに、炭疽病は種子を介して感染する場合があるため、消毒された種子を用いることも重要です。
モザイク病
モザイク病は、ウイルスがアブラムシやアザミウマによって媒介されることで発生する病気です。
葉に白色や淡黄色、褐色の病斑が生じ、病斑がない緑色の部分が盛り上がって歪んだ形状になります。病斑はぼんやりと不鮮明な場合もありますが、葉が変色していたら注意が必要です。
モザイク病はアブラムシやアザミウマなどの害虫によって媒介されるだけでなく、発病した茎や葉から分泌される汁液によっても感染が拡大することが知られています。モザイク病はシュンギク以外にも多くの作物に感染しうる病気のため、他の作物からの伝染にも注意が必要です。
予防法・対処法
育苗期をはじめ、アブラムシが多く発生する時期には寒冷紗や防虫ネットを利用してアブラムシから苗を保護しましょう。また、定植後は光を反射する銀色マルチを使用してアブラムシの飛来を防ぐのも効果的です。
発病した葉はすぐに除去するとともに、被害を受けた株に触った後はきちんと消毒するまで他の株には触らないようにしましょう。
※アブラムシの他にも、害虫は病気を引き起こす原因となる場合があります。シュンギクにつく害虫については、こちらの記事をご参照ください。
シュンギクの害虫対策!知っておくべきシュンギクの害虫6種まとめ | AGRIs
独特の風味と香りを持つシュンギクは、古くから日本人に好んで食べられてきた野菜です。キク科に属し、害虫がつきにくく育てやすいといわれていますが、注意するに越したことはありません。今回は、シュンギクの栽培で特に気をつけたい害虫とその予防・対策法をご紹介します。
https://www.agri-smile.app/articles/shungiku-vermin
萎凋病
フザリウム属菌のFusarium oxysporunというカビによって引き起こされる病気です。地面に近い部分の茎が変色し始めたら要注意です。放置しておくと葉に萎れが生じるようになり、その後株全体に病気が広がると枯死にいたります。株の上部の葉から症状が進行していきます。
シュンギクだけでなくダイコンやキャベツ等のアブラナ科野菜、ニラやトマトなどを含む100種以上の植物に感染する病気です。水はけが悪く高温多湿の環境で多く発生します。根からカビが侵入することで感染が広がります。
予防法・対処法
発病した株は除去し、残渣が残らないように注意しましょう。
畑の水はけをよく保つため、地植えの場合には高畝にするとよいでしょう。プランター栽培では培養土の種類に留意し、排水のよい土を作ります。
酸性の土壌で発生しやすいため、畑のpH管理も大切です。土壌が酸性に傾いている場合には苦土石灰を施用して最適なpHにしましょう。
べと病
べと病は、卵菌類のカビが原因となって発生する病気です。地面に近い株元の葉から進行し、葉の表面に黄色い病斑ができます。上の写真はホウレンソウのものですが、病斑の形はふぞろいで、輪郭がぼんやりと歪んでいることもあります。進行すると、病斑が拡大して裏面に白色のカビが生じ、さらに処置を怠ると病斑の中央が黒色に変わって枯死にいたります。下の写真では、べと病を発症したホウレンソウの葉の裏側にカビが生じている様子がわかります。
カビは水を介して伝染するため、気温が20℃前後で雨が多い梅雨・秋雨の時期は特に注意が必要です。カビの胞子が作られると風によって運ばれて他の野菜にも感染が拡大する恐れがあります。
予防法・対処法
水のやりすぎに注意しましょう。
また、枯れた葉はこまめに除去し、株の根元の風通しを良く保ちましょう。落ち葉からも感染する可能性があるため、畑はきれいな状態を維持するよう心がけましょう。
黒斑病
黒斑病は、Alternaria solaniというカビによって発生する病気です。
初期には褐色で中心がへこんだ小さな斑点が葉に生じ、病気の進行とともに病斑は拡大していきます。放置しておくと、病斑の表面にすす状のカビが生じます。
育苗期に感染すると株全体が萎れて生育が阻害され、ひどい場合には枯死します。
予防法・対処法
感染した株はすぐに除去し、畑の外で処分しましょう。また、圃場の水はけをよくし、水分が過度に溜まらないようにすることも重要です。
サビ病
シュンギクのサビ病はPuccinia cnici-oleraceiというカビが原因で発症します。葉、特に裏側に小さな褐色の病斑が生じます。茎にも淡緑色の病斑ができ、症状が進行すると表面が盛り上がって色が暗褐色に変化します。
胞子は水を介して生存します。連作することで病原菌の密度が高まり、発症する可能性が増大します。
予防法・対処法
連作は避けましょう。また、多発すると対策が困難になるため、土壌の消毒を行うほか、一度発生した畑では作付けを見合わせるといった判断も必要になってきます。
シュンギクを健康に育てるために
水はけや風通しがよい環境で、密植を避けて雑草の繁茂が起きないように注意しながら管理を行うことが、シュンギクを健康に育てるための基本です。万が一感染した場合には、病状に合わせて適切に葉の除去や株の抜き取りを行ってください。
被害が大きくなりそうなときや、より確実に対策を行いたいときには薬剤の使用も有効です。本サイトの農薬データベースの対象農作物に「しゅんぎく」、適用病害虫に病気名を入力すると効果のある農薬を参照することができます。