作物の厄介な病害である「軟腐病」とは?
軟腐病ってどんな病気?
- 軟腐病とは、細菌(Pectobacterium carotovorum という種 )によって引き起こされる病気で、地際部がドロドロになったり、外葉が褐色になり枯れてしまったりします。さらに、病状が進行すると悪臭を放ちます。病原菌が作物内の養分や水分の通り道に入りこむことでこのような症状を引き起こします。
- 軟腐病を引き起こす細菌は、水分や土壌中を通して広がっていく「土壌伝染性」。そのため、湿度が高いと繁殖しやすく、湿度が高くなる初夏に、特に風通しの悪いところで多発します。また台風のあとも要注意です。
感染作物は?
- 大根、白菜、キャベツ、カリフラワー、レタス、チンゲン菜、小松菜、ニラ、カブ、玉ねぎ、にんじん、じゃがいも、など主要な作物が広く感染します。
- おもに組織がやわらかい植物の傷口などから植物内部に侵入するため、組織が硬い作物では感染の心配はいりません。
- また、キャベツなどの結球をつくる作物では、外葉だけが枯れているように見えても結球内までドロドロになっていることも多く、流通後にまで影響が出るという問題があります。
軟腐病が厄介な病害であることはお分かりいただけたと思います。
病害は予防をおこない発生させないのがいちばんですが、もうかかってしまった、対処法が知りたい…という方もいらっしゃいますよね。そんな方のために、予防法から畑の復活方法まで紹介します。
軟腐病の予防法や対処法を紹介!本当に効果のある方法は?
軟腐病の感染予防
軟腐病は完全に予防することが難しいですが、予防法をいくつか組み合わせておこなうことで有効な効果が得られます。大きく分けると、「排水対策」「植物の抵抗性をあげる対策」があります。
排水対策をおこなう
土壌改良をおこない、水はけの良い状態にする
水はけが悪い状態の土壌中で生育する根は弱ってしまうため、病気にかかりやすくなってしまいます。そのため、植え付け前に事前に土壌改良をおこないましょう。
過密状態を避けるように株間は広めに
病原菌は水分や土壌中が広がっていきます。密植は作物の風通しが悪くなるため、作物の成長にともなって葉分けをおこなうなどの管理が重要です。
マルチングによって泥はねを避ける
雨などによる土の跳ね返りが、作物に付着してしまうと病気にかかりやすくなります。そのため、マルチや敷き藁を設置しましょう。また、落ち葉を放置すると、その落ち葉にも土が付着していたり落ち葉そのものに病原菌が付着している可能性があるため、よくありません。
資材消毒をおこなう
水中にのって広がり、傷口から侵入する病原菌であるため、器具(支柱やひも、剪定ばさみなど)に付着して広がる場合もあります。こまめに器具の消毒をおこなうのも有効です。
植物の抵抗性をあげる
窒素過多に注意
肥料の三要素であるNPKのバランスがよくなるように、元肥を加えます。元肥は、効果がゆっくり長く持続する緩効性肥料が適しています。これを植え付け1週間まえを目安に土壌とよく混ぜておきます。
さらに、肥料切れが起きないように追肥もおこないます。しかし、窒素過多の状態は非常に病気にかかりやすくなってしまうため、加え過ぎないように注意しましょう。
スプレーをつかって木酢液や薬剤を散布する
木酢液とは、植物の生育促進、防菌、微生物活性などの効果があることで知られる、木材由来の液体。木酢液や酢酸などの有機酸を散布することで、もし植物体が弱っていても軟腐病の病原菌に感染するのを防ぐ可能性が高まります。適切な濃度に希釈して、葉の表裏にスプレーをつかって散布しましょう。
ほかにも「ストマイ液剤20」「Zボルドー・コサイド」「オリゼメート」などの薬剤も有効です。
また、カビが引き起こす病気に有効だと知られる納豆菌液(バチルス菌液)。実はこれは細菌が引きおこす病気であるのにもかかわらず、軟腐病にとっても優秀な資材。月に1回程度葉の表裏にスプレーをつかって散布します。
軟腐病の対処法
軟腐病は、一度発生すると対処することができません。しかし、出来るだけ毎日葉の観察をおこない、初期症状があらわれたらすみやかに取り除きましょう。内部から出てくる液体には病原菌が生息しているので、まわりに付着させないように気を付けながら静かに取り除き、袋などにいれて処分します。
軟腐病にかかってしまった畑の復活方法
手を打つのが遅かったから対処しきれなかった…けれど、この土壌を次の作物栽培にそのまま使用していいの?という疑問の方もいらっしゃいますよね。
そこでかならずおこないたいのが、土壌消毒と輪作。
簡単な土壌消毒の方法としては、太陽熱消毒や寒起こしなどがあります。
【夏】太陽熱消毒
レーキや土ふるいで被害を受けた株の根をすべて取り除き、土を透明なビニール袋に入れて水分を含ませ密封します。2~3日ごとに袋の両面をひっくり返して、直射日光に長時間当てます。道具も必要最低限で済む、夏におすすめの方法。
【冬】寒起こし
一方、冬は晴れていて風のない日に、土を掘り返します。その後、1ヶ月ほど寒さにさらします。このとき、土が含んでいる水分の凍結や解凍を繰り返すことで害虫や病原菌へダメージを与えられます。道具がいらない、冬におすすめの方法です。
またこれらに加えて、最近注目されているのが微生物資材。水溶性のものが扱いやすくおすすめ。(マスターピース水和剤など)
病害が発生してしまった圃場の土壌消毒をおこない、すぐに微生物資材を施します。その後も1か月ごとなど定期的に施肥し続けます。
微生物資材とは
微生物資材とは、その名の通り、微生物が含まれています。資材中の微生物は植物の健康にとって良い微生物がおおく含まれているだけでなく、これらが土壌中で増殖することで病原菌の増殖を抑えることができるのがすごい点!
おわりに
本記事では軟腐病の特徴とその対策法を紹介しました。病害は発生していまってからでは手遅れになることが多いので注意しましょう。対処しづらい軟腐病も、予防対策で完璧にカバーしましょう!ぜひ実践してみてくださいね。