はじめに
セロリアックは、別名「根セロリ」や「カブラミツバ」とも呼ばれるセロリの仲間です。欧米では古くから食用にされてきました。日本ではそれほど一般的ではありませんが、陽を通すとイモのようにほくほくとした食感と甘味を楽しむことができます。
肥大した根を食する野菜のため、病害虫による根への被害が深刻化すると収穫に大きな影響が出ます。
今回は、セロリアックの栽培で注意したい害虫とその予防法・対処法をご紹介します。
セロリアック栽培で注意したい害虫
ネコブセンチュウ
セロリアックに被害をもたらすネコブセンチュウとして、ジャワネコブセンチュウやサツマイモネコブセンチュウが知られています。これらのネコブセンチュウ類は、サツマイモやジャガイモなどのイモ類、ダイズやインゲンなどの豆類、キュウリやスイカなどのウリ科野菜、イネ科のトウモロコシなど、複数の野菜に食害をもたらします。
ネコブセンチュウは植物の根に寄生し、根の細胞組織を肥大化させてコブ状にします。ネコブセンチュウが多発すると根はコブだらけになり、生育が抑制されるという被害が出ます。セロリアックは根を食用にする野菜のため、一度被害が発生すると大きな打撃となります。
放置しておくと、やがて根は腐敗して地上部の葉や茎が萎れはじめ、枯死にいたります。
ネコブセンチュウ類は全国各地に分布します。野外では、地温が10℃前後に上がって暖かくなる春頃に卵からふ化して発生が始まり、1年の間に世代交代を繰り返して複数回発生します。
青枯病をはじめとする土壌病害を助長することが知られています。
予防法・対処法
ネコブセンチュウは、被害が発生してから対処することは極めて困難です。そのため、対策は予防を中心に行います。
前年度には被害が発生していなかったという場合には、定植前の苗にネコブセンチュウが付着していた可能性が考えられます。消毒された苗を使うとよいでしょう。
土の中のネコブセンチュウの密度を抑えることも重要です。一度ネコブセンチュウが発生した土壌では、湛水や蒸気による消毒を行ったり、土壌くん蒸剤を使用したりする方法があります。
また、ネコブセンチュウに対して抑制効果を示すことが知られているマリーゴールドをコンパニオンプランツとして近くに植えてもよいでしょう。
コンパニオンプランツについては、こちらの記事をご覧ください。
コンパニオンプランツとは?コンパニオンプランツの効果と気になる用語を解説! | AGRIs
家庭菜園で野菜を育てるとき、農薬は使いたくない、という方も多いのではないでしょうか。しかし、無農薬で育てる野菜には病気や虫がつきもの。そこで今回は、野菜を組み合わせて植えることで「植物同士の相互作用」を利用し、農薬を使わずに病害虫を防ぐ方法をご紹介します。
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マメハモグリバエ
ハモグリバエ類にはナモグリバエやトマトハモグリバエなど、複数の種類が存在しています。セロリアックではマメハモグリバエの被害が観察されます。
マメハモグリバエは幼虫・成虫ともに体長約2㎜ほどで、幼虫が葉肉に潜りこんで食害します。葉の内部を食べ進むため、表面から見ると白い跡が残ります。被害が大きい場合には葉が白く変色し、光合成ができなくなって枯死にいたることもあります。
マメハモグリバエは葉に産卵するため、苗に卵や幼虫がついている場合があります。セロリアックだけでなく、シュンギクやトマトやナス、キュウリなど複数の作物で発生します。
予防法・対処法
寒冷紗や防虫ネットをかけて成虫の飛来や産卵を予防しましょう。また、天敵である寄生蜂を利用して防除する方法も有効です。
ナメクジ
ナメクジは身近な虫のひとつですが、野菜を栽培している際には大きな被害をもたらす害虫になります。セロリアック以外にも、ネギやナス、ショウガなど複数の野菜に寄生して葉を食い進み、ちぎってしまいます。
特に苗で被害が大きく、食害がひどい場合には生育が著しく阻害されて枯死にいたります。
日本に現在生息しているナメクジは、チャコウラナメクジという種類が一般的です。多湿な環境を好むため、梅雨の時期には特に注意が必要です。生きている葉よりも落ち葉や枯れた茎などを好むため、畑を清潔な状態に保っておくことが大切です。
予防法・対処法
葉にきらきらと光る跡が残っていたらナメクジがいるかもしれません。葉の裏や地面近くを探して見つけたら取り除きます。
ナメクジを誘引するトラップを畑に仕掛けて直接ナメクジを除去する方法もあります。トラップの中にどのくらいナメクジが捕獲されているかによって、発生状況を同時に確認できます。
ヨトウムシ
セロリアックを食害するヨトウムシとしてシロイチモジヨトウが知られています。ヨトウムシとはヨトウガの幼虫のことを指し、主に葉に食害をもたらします。
初期には葉の表面が食害されるため一部が白く見えるようになります。放置しておくと穴があき、やがて葉がボロボロになります。
ヨトウムシ昼間は土の中に隠れていて夜に活動を開始します。成虫は薬剤への抵抗性が高いため、幼虫の時期に適切に駆除することで被害を最小限に食い止めましょう。
また、セロリアック以外でも、ネギ類やナス、キャベツなど多様な野菜で発生するため、周囲で別の作物を育てている場合にも注意が必要です。
予防法・対処法
植え付ける前に畑をよく耕して、幼虫やさなぎを見つけたら駆除しましょう。
また、成虫であるヨトウガの飛来を防ぐため、セロリアックに防虫ネットをかけるとよいでしょう。
ヨトウガは葉の裏側に卵を産み付けます。卵を見つけたら、孵化する前に葉ごと切り取って取り除きましょう。
セロリアックを健康に育てるために
害虫が発生すると、作物の生育が阻害されるだけでなく、病気の発生につながる場合もあります。セロリアックに発生しやすい病気については、以下の記事をご参照ください。
セロリアックを病気から守る!知っておくべきセロリアックの病気4つとその対策 | AGRIs
「根セロリ」「カブラミツバ」とも呼ばれるセロリの仲間、セロリアック。火を通すと甘くなる、ヨーロッパ原産の野菜です。今回は、セロリアック栽培で注意したい4つの病気とその予防・対策法をご紹介します。
https://www.agri-smile.app/articles/celeriac-disease
病害虫を予防して美味しいセロリアックを育てるために必要な対処法について、あわせて押さえておきましょう。