作物の厄介な病害である「根こぶ病」とは?
根こぶ病ってどんな病気?
根こぶ病とは、カビによって引き起こされる、根が感染して肥大化する病気の一種。初期症状では、根に小さなこぶができるが、進行していくと色まで褐変して表面が粗くなる。さらに、地上部の生育も枯れてしまいます。
根こぶ病菌は、単独では生きていくことが出来ず、必ずアブラナ科の植物根のなかで増殖していきます。この病原菌は、土壌中で10年以上活動を休止しながら生存することが可能で、アブラナ科の野菜が近くに植えられると活動し始めます。
カビは胞子という粉で病害を広げていくという厄介な特徴があります。根こぶ病を引き起こすカビの胞子は、水や空気を通して広がっていく土壌伝染性。そのため湿度が高いと繁殖しやすくなります。ほかにも、いくつか発生しやすい特徴があります。
- 月別平均日長 11.5時間以上(春から初秋まで)
- 土壌pH pH4.5~6.5
感染作物は?
アブラナ科の作物に感染します。ハクサイ、カブ、キャベツなどの野菜に感染し、一度発症すると治すのが難しいことから非常におおきな被害となっています。(実はアブラナ科のなかでも、ダイコンはあまり発症しません!)
根こぶ病が厄介な病害であることはお分かりいただけたと思います。根こぶ病は生育を阻害し、食味まで低下させます。
病害は予防をおこない発生させないのがいちばんですが、もうかかってしまった、対処法が知りたい…という方もいらっしゃいますよね。そんな方のために、予防法から畑の復活方法まで紹介します。
根こぶ病の予防法や対処法を紹介!本当に効果のある方法は?
根こぶ病の感染予防
まずはDRC診断をおこなう
簡潔にいうと、DRC診断は根こぶ病防除に特化した土壌診断です。土壌中に存在する病原菌の濃度と発病率の関係性が知られています。そこで、栽培前の菌の量や密度をチェックすると、発病のリスクを知ることが出来ます。この結果に基づいて以下の対策をおこなうとよいでしょう。
排水対策をおこなう
土壌改良をおこない、水はけの良い状態にする
水はけが悪い状態の土壌中で生育する根は弱ってしまうため、病気にかかりやすくなってしまいます。そのため、植え付け前に事前に土壌改良をおこないましょう。
過密状態を避けるように株間は広めに
病原菌は水分や土壌中が広がっていきます。密植は作物の風通しが悪くなるため、作物の成長にともなって葉分けをおこなうなどの管理が重要です。
マルチングによって泥はねを避ける
雨などによる土の跳ね返りが、作物に付着してしまうと病気にかかりやすくなります。そのため、マルチや敷き藁を設置しましょう。また、落ち葉を放置すると、その落ち葉にも土が付着していたり落ち葉そのものに病原菌が付着している可能性があるため、よくありません。
資材消毒をおこなう
水中にのって広がる病原菌であるため、器具(支柱やひも、剪定ばさみなど)に付着して広がる場合もあります。こまめに器具の消毒をおこなうのも有効です。
pHをあげる
pH7程度であれば発生が激減します。作物を育てると自然にpHが酸性に傾きがちなので、定期的に確認をおこない、苦土石灰などを使用してpHを調整します。
植物の抵抗性をあげる
抵抗性品種をもちいることで感染率が下がります。
また、農薬を使用することで、予防をおこなうことが可能です。抗菌剤を適切な濃度に希釈し、植え付け前に土壌とよく混和します。
★おすすめの抗菌剤
- オラクル顆粒水和剤:休眠胞子からでてくる「遊走子」に作用し、病原菌を減らすことが出来ます。
- ネビジンSC:病原菌を減らすことはできませんが、休眠胞子が活動しないように作用することができます。
根こぶ病の対処法
- 病原菌は土壌中に潜在しているので、一度根こぶ病になってしまったら、治療することはできません。しかし、一刻もはやく蔓延を防ぐ必要があります。根こぶ病は出来るだけ毎日葉の観察をおこない、問題がないか確認してください。初期対処がもっとも重要です!
- 患部には病原菌が付着しているので、静かに取り除き、袋などにいれて処分します。さらに、ちかくの雑草なども抜き取ると雑草による増殖をおさえられます。
根こぶ病にかかってしまった畑の復活方法
手を打つのが遅かったから対処しきれなかった…けれど、この土壌を次の作物栽培にそのまま使用していいの?という疑問の方もいらっしゃいますよね。
根こぶ病の病原菌は、繁殖をおこない夏や冬のあいだも枯れ葉などに付着し、春や秋になったら再度繁殖します。このとき、土壌や葉にふくまれる空気・水をとおして胞子が飛んで感染していきます。
なかでも、根こぶ病の病原菌は土壌中に潜伏しています。そのため、土壌消毒をおこなうことが非常に効果的です。
簡単な土壌消毒の方法としては、太陽熱消毒や寒起こしなどがあります。
【夏】太陽熱消毒
レーキや土ふるいで被害を受けた株の根をすべて取り除き、土を透明なビニール袋に入れて水分を含ませ密封します。2~3日ごとに袋の両面をひっくり返して、直射日光に長時間当てます。道具も必要最低限で済む、夏におすすめの方法。
【冬】寒起こし
一方、冬は晴れていて風のない日に、土を掘り返します。その後、1ヶ月ほど寒さにさらします。このとき、土が含んでいる水分の凍結や解凍を繰り返すことで害虫や病原菌へダメージを与えられます。道具がいらない、冬におすすめの方法です。
それでも根こぶ病が毎年発生する、あまりにひどいという場合は作型を変更したり、アブラナ科の作物の栽培を数年間おこなわないなども検討しなければなりません。
おわりに
本記事では根こぶ病の特徴とその対策法を紹介しました。病原菌が非常に長期間土壌中に潜伏する根こぶ病。病害は発生していまったらできるだけはやく対処しないと手遅れになるので注意しましょう。ぜひ実践してみてくださいね。