はじめに
ペコロスは、タマネギを密植して育てたミニサイズのタマネギで、「小タマネギ」や「ペコラス」とも呼ばれます。可愛らしい見かけから、スープやシチューなどの煮込み料理に使われたり、肉や魚料理の付け合わせにされたりします。
ペコロスは小ぶりでプランターでも育てやすいため、家庭菜園にもおすすめです。
今回は、ペコロスがかかりやすい病気とその予防法・対処法をご紹介します。
ペコロス栽培で注意したい病気
立枯病・苗立枯病
立枯病は、フザリウム属菌やリゾクトニア属菌、フハイカビ属菌などの糸状菌(カビ)が原因となって発生する病気です。カビが根に感染して腐敗させ、養分の吸収を妨げて生育を阻害します。
葉が下から黄色に変色したり、株が萎れてきたりといった様子が見られる場合は要注意です。放置しておくと根が茶色に変色して立ったまま枯れてしまいます。
立枯病の菌は水分を好むため、水はけが悪く、降雨が続く時期は発生しやすくなります。また、一度立枯病に感染すると、植物を除去した後も土壌中に胞子が残ったり、菌糸が付着した植物の残渣があったりして再発することがあります。
下の写真のように、発芽から定植前後までの幼苗期に立枯病にかかると、苗立枯病と呼ばれます。
予防法・対処法
発病した株はすぐに除去しましょう。感染が拡大しないよう、畑の外で処理します。
肥料切れが起こらないように施肥管理に注意しましょう。また、多湿条件で発生しやすいため、水はけをよく保つように心がけましょう。
予防策としては、連作を避けることが大切です。さらに、植えつけの前に薬剤を土壌中にしみこませておくのも効果的です。
べと病
べと病は、卵菌類のカビが原因となって発生する病気です。地面に近い株の下の方の葉から進行し、葉の表面に黄色い病斑ができます。病斑の形はふぞろいで、輪郭がぼんやりと歪んでいることもあります。
進行すると、病斑が拡大して葉の裏面に白色のカビが生じ、さらに処置を怠ると病斑の中央が黒色に変色します。そのまま放置しておくとやがて枯死にいたります。写真では、べと病を発症したタマネギの葉にカビが生じている様子がわかります。
カビは多湿な環境で増殖するため、気温が20℃前後で雨が多い梅雨・秋雨の時期は特に注意が必要です。カビの胞子が作られると風によって運ばれて他の野菜にも感染が拡大する恐れがあります。
予防法・対処法
水のやりすぎに注意しましょう。また、枯れた葉はこまめに除去し、株の根元の風通しを良く保ちましょう。
落ち葉からも感染する可能性があるため、圃場はきれいな状態を維持するよう心がけましょう。
灰色腐敗病
灰色腐敗病は糸状菌(カビ)によって引き起こされる病気です。葉だけでなく茎や根などの複数の部位に発症します。
収穫期目前に症状が現れることが多く、地面近くの茎が褐変したり、株の下の方の葉が黄化したりといった異変が観察されます。また、根球の表面にも褐変が生じます。
変色した部位は表面に灰色のカビが発生します。
菌が存在していると、貯蔵中にも発病することがあります。特に冷蔵保存をしている場合に注意が必要です。球の首から肩にかけて、黒色の斑点状に菌核が見られるようになります。
予防法・対処法
発病した株は除去して畑の外で処分し、残渣が残らないように注意しましょう。
また、多湿な畑では発生しやすくなります。完熟たい肥を混ぜ込むなどして土壌の水はけがよい状態に保ちましょう。
窒素過多の場合に発生しやすくなるため、施肥管理は適切に行いましょう。また、葉や根に必要以上に傷をつけないように普段の手入れから注意することが大切です。
白色疫病
白色疫病はカビによって引き起こされる病気で、ペコロスだけでなくタマネギやネギなどに感染します。
症状は主に葉に発生します。感染初期には、葉の中央から先端にかけて、大きさ1~3㎝ほどの水が染みたような病斑が生じます。病気が進行すると、病斑は拡大して病斑部から葉が折れ曲がり、先端が枯死します。病斑は、古くなると白色~灰白色に乾燥して葉の緑色の部分との境が明瞭になります。
カビは多湿な環境で発生しやすくなるため、温暖で湿度が高い梅雨や秋雨の時期には特に注意が必要です。カビの胞子が作られると風によって運ばれて他の作物にも感染が拡大する恐れがあります。
予防法・対処法
発症した葉や茎はすぐに除去しましょう。
また、水のやりすぎに注意し、排水がよい土壌環境を整備しましょう。梅雨の時期や秋の雨が多い時期には特に注意が必要です。
連作は避け、適切な施肥管理を心がけましょう。
黒腐菌核病
黒腐菌核病はSclerotium cepivorumというカビによって引き起こされる病気で、ペコロスやネギ、ニンニクなどのネギ属の野菜に感染します。
苗の育成期である12月頃から発生が見られます。症状は主に葉に現れ、葉の先端が黄白色に変色して枯れます。やがて症状は葉全体に広がり、発育が抑制されて株全体の枯死にいたります。
カビは水を介して伝染するため、多湿な環境で発生します。気温がそれほど上がらず、かつ湿度が高い晩秋には特に注意が必要です。カビの胞子が作られると風によって運ばれて他の作物にも感染が拡大する恐れがあります。
予防法・対処法
発症した葉や茎はすぐに除去しましょう。
また、水のやりすぎに注意し、排水がよい土壌環境を整備しましょう。梅雨の時期や秋の雨が多い時期には特に注意が必要です。
連作は避け、適切な施肥管理を心がけましょう。
軟腐病
軟腐病はErwinia carotovoraという細菌が原因で発生します。
発病の初期には新芽などの柔らかい葉に水浸状の小さな病斑ができます。病斑は急速に広がり、株全体が侵食されると腐敗して悪臭を発するようになります。ペコロスの球の部分にまで腐敗が進行することもあります。
軟腐病が畑に広がると、下の写真の様に苗が次々と倒れる様子が観察されます。
土壌中に残存する原因菌が発病を引き起こします。
感染が起こった畑を機械で耕した場合、消毒をせずに他の畑で同じ機械を使用することによっても感染が拡大するため、機械の使用後には消毒を行うよう心がけましょう。
マメ科やイネ科を除くほとんどの植物に感染する病気のため、一度でも軟腐病が発生した畑では注意が必要です。
予防法・対処法
感染した葉や茎は早期に除去し、畑の外で処分します。また、一度感染が確認された土壌では連作を避けましょう。
株と株の間隔を十分に広くとったり、水はけが悪い畑では畝を高くしたりするなどの予防策も有効です。また、害虫が食害した後の傷口から菌が侵入することがあるため、害虫の侵入を防ぐために防虫ネットを掛けるとよいでしょう。
ペコロスを健康に育てるために
風通しがよい環境で、施肥管理や水やりに注意しながら栽培を行うことが、ペコロスを健康に育てるための基本です。万が一感染した場合には、病状に合わせて適切に葉の除去や株の抜き取りを行ってください。
害虫による食害が病気の感染をもたらす場合も少なくありません。ペコロスに発生しやすい害虫については、こちらの記事をご覧ください。
ペコロスの害虫対策!知っておくべきペコロスの害虫4種まとめ | AGRIs
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https://www.agri-smile.app/articles/pekorosu-vermin
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