はじめに
カブは、根部だけでなく葉も栄養価が高く、生のままサラダや漬物にしたり、煮物や炒め物にしたりと様々な用途で活用される野菜です。日本では、別名「かぶら」とも呼ばれて古くから栽培されており、全国各地で様々な品種が育てられています。
今回は、カブがかかりやすい病気とその予防法・対処法をご紹介します。
※カブの病気については2回にわけてご紹介しています。前編はこちらからお読みください。
カブを病気から守る!知っておくべきカブの病気と対策法【前編】 | AGRIs
冬野菜の代表格、カブはアブラナ科の植物です。美味しいカブを育てるために、注意しておきたい病気とその対処法をご紹介します。
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カブ栽培で注意したい病気
根くびれ病
根くびれ病は、Aphanomyces roughaniというカビが原因で発生する病気です。
生育のどの段階で発病するかによって症状が異なります。育苗期に発病すると、生育が阻害されて深刻な被害となります。根部が5~10㎝の播種後30~40日の時期に感染した場合には、根が黒く変色してくびれ、地上部の葉に萎れが生じます。肥大期から収穫期にかけては、初期に淡褐色だった斑点が帯状の黒い病斑となって拡大します。病斑の表面には亀裂が見られることもあり、その場合、商品価値が大きく低下してしまいます。
根くびれ病の病原菌は水分を好むため、水はけが悪く、降雨が続く時期は感染が起こりやすくなります。また、一度根くびれ病が発生した畑では、植物を除去した後も土壌中に胞子や菌糸が付着した植物の残渣が残って再発することがあります。
カブだけでなく、ダイコンやハクサイなどの他のアブラナ科の野菜でも発病するため注意が必要です。
予防法・対処法
発病した株は取り除き、畑の外で処分します。また、水はけをよくし、水分過多に陥らないように畑の排水管理に十分注意しましょう。
ダイコンやハクサイなど、アブラナ科の作物との連作をしないことも大切です。
白サビ病
カブの白サビ病は、Albugo macrosporaという糸状菌(カビ)が原因となって発生します。
主に葉に発症し、白色の小さな病斑が生じます。病斑は不整円形をしており、病気の進行とともに拡大して表皮が破れやすくなります。
白サビ病はカブ以外にもハクサイやコマツナなどのアブラナ科の野菜で発症します。病原菌の胞子が空気中に放出されることで伝染します。多湿な環境で感染が広がりやすく、秋から春にかけて雨が多く降るときには特に注意が必要です。
予防法・対処法
発病した株は圃場の外に除去しましょう。
感染の拡大を防ぐために密植は避け、落ち葉や枯れた葉は取り除いて風通しの良い環境を保ちましょう。また、水やりを行うときは、できるだけ水が葉にかからないように心がけましょう。
炭疽病
カブの炭疽病はColletotrichum higginsianumというカビによって引き起こされます。
葉に淡褐色の病斑が生じ、病気が進行すると病斑が拡大して中央部が変色し、湿度が高くなると裂けます。
水はけが悪い土壌や、高温多湿の環境で多く発生します。被害を受けた茎や葉にカビ残存し、胞子が雨によって周囲に飛散することで感染が広がります。カブだけでなくダイコンやハクサイなど複数のアブラナ科の野菜に感染することが知られています。
予防法・対処法
発病した株は除去し、残渣が残らないように注意しましょう。また、肥料過多の場合に発生しやすくなるため、適切な施肥管理も大切です。
アブラナ科の野菜との連作は避け、完熟たい肥を混ぜ込むなどして、水はけをよく保ちましょう。
万が一炭疽病が発生した圃場に植え付けを行う場合は、定植前に土壌の消毒を行うようにしましょう。
うどんこ病
カブのうどんこ病はカビが原因で発症します。感染すると葉に白色のカビが生じ、葉の光合成を妨げて成長を阻害します。処置を施さないまま放っておくと葉全体にカビが広がり、やがて赤褐色に変色して枯死にいたります。
下の写真はうどんこ病を発症したキュウリの様子です。
うどんこ病は乾燥した環境下で発生しやすくなるため、梅雨が明けた後の収穫前の時期には特に注意が必要です。また、病原菌は空気中で飛散して感染を拡大させるため、茎や葉の茂りすぎは避けて苗を適切に管理することが大切です。
予防法・対処法
発病した株は除去し、圃場の外で焼却・埋却を行いましょう。また、原因菌は土壌中に残存するため、うどんこ病が発生した土壌は消毒を徹底しましょう。
密植を避けて風通しが良い状態を作ることも大切です。
根こぶ病
カブの根こぶ病は、Plasmodiophora brassicaeと呼ばれるカビが原因で発症します。感染すると、根部にこぶができます。こぶの表面は褐色に変色し、次第にざらついた状態になります。
生育初期に感染すると、成長が大きく阻害されて枯死にいたります。
カビは適度な水分と温度がそろった環境で活動が活発になります。気温が適度に高い春から初秋にかけては特に注意が必要です。カビの胞子は土壌中で休眠状態を保って残存するため、一度根こぶ病が発生した畑では他の作物にも感染が拡大する恐れがあります。
予防法・対処法
発症した葉や茎はすぐに除去し、畑の外で処分しましょう。また、被害を受けた株のすき込みは感染を拡大させることになるため避けるようにします。
水のやりすぎに注意し、排水がよい土壌環境を整備しましょう。枯れた葉はこまめに除去し、株の根元の風通しを良く保つことも重要です。
アブラナ科野菜の連作は避けるほか、根こぶ病に耐性のある品種を栽培することも有効です。
ホウ素欠乏症
ホウ素欠乏症は、ホウ素※が不足することによって起こる病気です。特に、カブやハクサイなどのアブラナ科の野菜はホウ素欠乏への耐性が弱いことが知られています。
カブでは、ホウ素欠乏症の症状は主に根部に現れます。必須微量元素であるホウ素が不足することで、根部が肥大しにくくなるだけでなく、表皮にツヤが出なかったり形がいびつになったりします。放置しておくと、根部にスが入って中心が褐色に変色し、食味が大きく低下します。
ホウ素の土への溶解度は土壌pHに大きく影響されるため、酸性やアルカリ性に偏った畑では特に注意が必要です。また、乾燥している場合にも欠乏状態に陥る可能性が高いため、適切な水やりを心がけましょう。
※ホウ素(B):原子番号6の非金属元素です。植物では細胞壁を構成する成分として知られています。細胞分裂を促進し、根や新芽の生育を助けるため、野菜栽培には必須の元素です。
予防法・対処法
ホウ素欠乏症を発症した場合には、ホウ素を畑に混ぜ込みます。なお、ホウ素が過剰になると障害が生じるため、適切な量に注意する必要があります。
また、畑のpHや水分についても管理を徹底することが重要です。
バーティシリウム黒点病
バーティシリウム黒点病は、バーティシリウム属のカビが原因で発生する病気です。日本で見られるバーティシリウム属菌にはおもに2種類あり、カブではVerticillium dahliae という種類がバーティシリウム黒点病を引き起こします。カブやハクサイ、ダイコンなどのアブラナ科の野菜に加え、トマトやナスなど非常に多くの種類の野菜に感染しうる病気のため、他の作物からの伝染にも注意が必要です。
全草を通して症状はほとんど現れないため、収穫前になるまで被害に気付きにくい病気として知られています。収穫して切断してみると、根部の維管束が黒く変色しています。黒変部が維管束に沿って環状に分布することから、一部が褐変する萎黄病と区別することができます。
※カブの萎黄病についてはこちらの記事をお読みください。
カブを病気から守る!知っておくべきカブの病気と対策法【前編】 | AGRIs
冬野菜の代表格、カブはアブラナ科の植物です。美味しいカブを育てるために、注意しておきたい病気とその対処法をご紹介します。
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予防法・対処法
発病した葉はすぐに除去するとともに、被害を受けた株に触れた機械は再度使う前にきちんと消毒しましょう。また、土壌の湿度が高いと発生しやすくなるため、水分管理に注意して水はけのよい土づくりを心がけましょう。
根に傷がつくと傷口から侵入しやすくなるため、害虫による根の食害に注意するとともに、必要以上に野菜を傷つけないよう注意することが大切です。
カブを健康に育てるために
水はけや風通しがよい環境で、葉や茎が過密にならないように管理を行うことが、カブを健康に育てるための基本です。万が一感染した場合には、病状に合わせて適切に葉の除去や株の抜き取りを行ってください。
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