軟腐病
カビによって腐敗が始まり、やがて水浸状の病斑が現れて強い臭いを放ちます。タマネギの他に、レタスやキャベツなどでも多く発生します。水はけが悪い土壌や高温多湿な環境の中で特に発生しやすい病気です。
土壌細菌は基本的に、高温多湿でpHが中性〜微アルカリ性の土を好む傾向にあります。夏に播種や定植をすると、発病する可能性が高まり、発症した場合に受ける被害も大きくなります。
対処法
軟腐病の環境誘因を小さくするためには、水はけの良い土壌作りを心がけることと、地温の上がり過ぎに注意することが重要です。
また、雨の日に収穫することは避け、貯蔵前には風通しの良い場所で日光に当てて乾燥させましょう。
ひとたび発生すると防除が難しい軟腐病ですが、殺菌剤以外に植物防御活性剤や生物的防除剤も販売されています。上手に活用して被害の拡大を防ぎましょう。
べと病
主に葉に発生します。初期には淡黄色の小さな斑点が見られます。病気が進行すると、病斑は拡大して大きな黄褐色の円形になります。温暖で多湿な時期には病斑部にカビが発生します。
べと病は葉の裏側で見られることが多い病気ですが、葉の表側に発生することもあります。雨が続いて湿度が高いときに葉がベトベトになるのが名前の由来です。
対処法
密植を避け、排水を良好にするなどして過湿状態にならないようにしましょう。また、畑では土壌からの感染への対策として敷きワラやビニールマルチの利用をおすすめします。
予防としての薬剤散布も有効です。
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灰色腐敗病
灰色腐敗病は糸状菌(カビ)によって引き起こされる病気です。葉や茎などの複数の部位に発症します。球は赤褐色となって灰色の粉状のカビが生えます。冬の雨の多い時期に発生しやすくなる病気です。
対処法
発病した株の葉や茎、根などが畑に残っていると、それらから病原菌が増殖して栽培中の株の葉や根の傷口から侵入し、被害をもたらします。発病した株は除去して畑の外で処分し、残渣が残らないように注意しましょう。
また、多湿な畑では発生しやすくなります。完熟堆肥を混ぜ込んだり、畝を高くしたりして土壌の水はけがよい状態に保ちましょう。
窒素過多の場合に発生しやすくなるため、施肥管理は適切におこないましょう。また、葉や根に必要以上に傷をつけないように普段の手入れから注意することが大切です。
タマネギの貯蔵中に発生すると被害が大きくなるため、貯蔵前によく乾燥させて、貯蔵場所に菌を持ち込まないようにすることが大切です。
萎黄病
カビが原因で発生する病気です。 発病の初期には葉が黄化し、やがて葉脈が壊疽して葉に水分を供給できなくなって枯死にいたります。
葉が黄化している場合には根にも症状が現れている可能性が高く、根部を切断すると道管(根から葉へ水を運搬する部位)が褐色に変色している様子が観察されます。
土壌中に残存する原因菌が発病を引き起こします。種子から感染することもあります。
感染が起こった畑を機械で耕した後、消毒をせずに同じ機械を他の畑で使用することによっても感染が拡大するため、機械の使用後には消毒をおこなうよう心がけましょう。
対処法
畑に残った葉や茎が萎黄病に感染していると、それがもとになって菌が増殖する可能性があります。感染した葉や茎は早期に除去し、畑の外で処分しましょう。また、新たに栽培をはじめる場合には、前の作物の残渣がしっかり処理できているか丁寧に確認しましょう。
一度感染が確認された土壌では連作を避けましょう。 寒冷紗を使って菌を媒介する虫の侵入を防ぐことも予防になります。
種子による伝染を防ぐため、育苗をおこなう際には消毒された種子を用いましょう。萎黄病に対して抵抗性を持つ品種を選択することも効果的です。
黒斑病
対処法
肥料が不足していると発病しやすくなるため、適切な管理を行いましょう。また、過湿の環境にならないように気を付けましょう。多発した場合には、連作は避けたほうが良いでしょう。
ボトリチス葉枯病
ボトリチス菌が葉に寄生して起こる病気です。株の下方の葉に数ミリ程度の楕円形のくぼんだ斑点が発生し、次第に上部の葉に広がっていきます。
対処法
苗の感染が主な発生源となるため、健全な苗を選ぶようにしましょう。
乾腐病
乾腐病は、フザリウム属菌という放線菌により引き起こされる病害です。タマネギでは、塊茎内部が黒変〜褐変するという病状が見られます。
病原体は根から侵入し、腐敗させることなく導管部を褐変させます。これにより、水分や養分の流れが阻害されて生育不良や黄化などが起こり、場合によっては枯死してしまいます。
発病した場合、その個体が出荷できなくなるだけでなく、土壌伝染病として被害が拡大する可能性があります。タマネギの他に、ダイコンやカブ、キャベツなどでも発症します。
対処法
乾腐病を予防するためには、①消毒した種子を使う、②連作を避ける、③未熟な堆肥を加えない、ということが重要です。
乾腐病は傷口から植物体内に侵入することで感染します。植物に傷がつくのを防ぐため、センチュウ対策をおこなうことも有効になります。
灰色カビ病
灰色カビ病は、ボトリチス菌という風によって飛散する糸状菌が原因となる病気です。初めに葉や茎に水浸状の病斑が現れ、時間が経過すると病斑部に灰白色〜褐色のカビが生じます。
カビが茎の内部に及ぶと水を吸い上げられなくなり、上部の枯死につながることもあります。
対処法
葉が茂りすぎていたり風通しが悪かったりすると、湿気が溜まって胞子が拡散しやすくなります。
できるだけ風通しの良い場所で、株間をあけて育てましょう。施設栽培を行う場合は、特に換気に気を配るようにしてください。
苗立枯病
発芽して間もない頃に発生しやすい病気です。地面に近い部分がくびれ、やがて白く軟化して枯死してしまいます。湿度が高い時期には根元付近に褐色の菌糸が発生します。
対処法
糸状菌が土壌や枯れた植物を通じて増殖し、苗に感染します。連作を避け、必要に応じて土壌を殺菌しましょう。
おわりに
すでに患部が広がり、葉を取り除くだけでは完治が難しい場合には農薬の使用が有効な場合があります。本サイトの農薬データベースの対象農作物に「たまねぎ」、適用病害虫に病気・病原菌名を入力すると、効果のある薬剤を検索することができますのでご参照ください。