はじめに
夏の風物詩、スイカはウリ科の植物です。同じくウリ科のキュウリやカボチャなどと同様に、つるを伸ばして成長します。みずみずしさが夏場に人気のスイカは、水分を多く含むのが特徴です。
今回は、スイカがかかりやすい病気とその予防法・対処法をご紹介します。
スイカ栽培で注意したい病気
スイカ栽培で注意したい主な病気は、以下の7つです。
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※2024年4~8月のデータつる割病
つる割病は、フザリウム属の糸状菌(カビ)が病原体となり発生する病気です。
初期には、日中に葉が萎れ、夕方になると回復することを繰り返します。茎からは赤褐色のヤニが出るようになり、ヤニが乾くと病斑部が割れることから「つる割病」の名前がついています。
根や茎を切断してみると、内部が褐色に変化している様子が観察できるでしょう。症状が進行すると枯死にいたります。
つる割病は、病原菌が土壌中に残存して蓄積されることで発生しやすくなる、ウリ科作物の連作障害のひとつです。酸性の土壌で発生することが多いと言われています。
予防法・対処法
- 日当たり・風通しがよい環境で育てます。
- キュウリやカボチャなど、ウリ科の作物との連作は避けましょう。
- つる割病が発生した圃場では、土壌の消毒を徹底します。
- 接ぎ木をした苗を植えることで被害を抑えることができます。
つる枯病
つる枯病は、Didymella bryoniaeという糸状菌(カビ)が原因となって発生する病気です。
発症する部位は様々で、葉に発症した場合には灰褐色の病斑が生じます。病斑は不整円形をしており、内部には黒色の小さな点が多数見られます。
茎では淡褐色の病斑が生じ、ヤニが出たり、病斑部が裂けたりします。症状が進行すると株全体が枯死にいたります。
つる枯病の菌は水分を好むため、水はけが悪く、降雨が続く時期は発生しやすくなります。また、一度立枯病に感染すると、植物を除去した後も土壌中に胞子が残ったり、菌糸が付着した植物の残渣があったりして再発することがあります。
予防法・対処法
- 発病した株は圃場の外に除去しましょう。
- 多湿条件で発生しやすいため、水はけをよく保つように心がけましょう。
- 密植は避け、落ち葉や枯れた葉は取り除いて風通しの良い環境を保ちましょう。
- 水やりを行うときは、できるだけ水が葉にかからないように心がけましょう。
炭疽病
ウリ科の炭疽病は、Colletotrichum orbiculareというカビによって引き起こされます。
葉に淡褐色の病斑が生じ、病気が進行すると病斑が拡大して中央部が変色し、乾燥すると裂けます。茎や果実にも暗褐色のへこんだ病斑ができ、湿気が多い状態が続くとヤニが生じてきます。
水はけが悪く高温多湿の環境で多く発生します。被害を受けた茎や葉にカビ残存し、胞子が雨によって周囲に飛散することで感染が広がります。
下の写真は炭疽病を発症したネギのものですが、症状が進行している様子が観察できます。
予防法・対処法
- 発病した株は葉や茎が圃場に残らないように完全に除去しましょう。
- 完熟たい肥を混ぜ込むなどして、水はけをよく保ちましょう。
- ウリ科の野菜との連作は避けましょう。
- 肥料過多の場合に発生しやすくなるため、施肥管理に注意しましょう。
- 万が一炭疽病が発生した圃場に植え付けを行う場合は、定植前に消毒を行うようにしましょう。
うどんこ病
うどんこ病は、Sphaerotheca fuligineaというカビによって発生する病気です。感染すると葉に白色のカビが生じ、葉の光合成を妨げて成長を阻害します。処置を施さないまま放っておくと葉全体にカビが広がり、やがて赤褐色に変色して枯死にいたります。上の写真はうどんこ病を発症したキュウリの様子です。
うどんこ病は乾燥した環境下で発生しやすくなるため、梅雨が明けた後の収穫前の時期には特に注意が必要です。また、病原菌は空気中で飛散して感染を拡大させるため、茎や葉の茂りすぎは避けて苗を適切に管理することが大切です。
予防法・対処法
- 発病した株は除去し、圃場の外で焼却・埋却を行いましょう。
- 原因菌は土壌中に残存するため、うどんこ病が発生した土壌は消毒を徹底しましょう。
- 密植を避けて風通しが良い状態を作りましょう。
菌核病
菌核病は、Sclerotinia sclerotiorumというカビによって引き起こされる病気です。
初期には、茎の一部に水が染みたような状態になって淡褐色に腐敗します。放っておくと病斑部には白色のカビが生じ、さらに病気が進行すると、上の写真のように黒色の菌核が見られるようになります。この写真は菌核病にかかったネギのものですが、スイカにも同様の症状が現れます。
菌核病の原因となるカビは水を介して伝染するため、多湿な環境で発生します。気温がそれほど上がらず、かつ湿度が高い晩秋から5月上旬にかけては特に注意が必要です。カビの胞子が作られると風によって運ばれて他の作物にも感染が拡大する恐れがあります。
予防法・対処法
- 発症した葉や茎はすぐに除去しましょう。
- 水のやりすぎに注意し、排水がよい土壌環境を整備しましょう。
- 枯れた葉はこまめに除去し、株の根元の風通しを良く保ちましょう。
- スイカの連作は避けましょう。
褐斑細菌病
褐斑細菌病は、Xanthomonas campestrisという細菌が原因となって発生する病気です。
発病の初期には、葉の表面に褐色の病斑ができたり、葉がフチから枯れてきたりします。病気が進行すると葉脈に沿って病斑が拡大し、やがて葉全体が変色して枯れます。
上の写真のように、褐斑病はブドウやキュウリなどの他の作物にも感染する病気です。ウリ科の作物にも共通して発生し、土壌中に残存する原因菌が発病を引き起こします。降雨や水やりによって細菌がはね上げられ、茎や葉に付着することで地上部に感染が広がります。また、接ぎ木した苗を使用する場合には台木から感染することがあります。
予防法・対処法
- 降雨時や水やりの際の泥はねに注意が必要です。
- ウリ科の作物の連作は避けましょう。
- 感染した葉や茎は早期に除去し、必要に応じて薬剤を散布します。
モザイク病
モザイク病は、ウイルスがアブラムシに媒介されることで発生する病気です。
葉に白色~淡黄褐色のモザイク状の病斑が生じ、病斑がない緑色の部分が盛り上がって歪んだ形状になります。放置しておくと、果実にも感染が拡大して中が空洞になったり肉質が変化して繊維分が目立つようになったりします。
モザイク病はアブラムシによって媒介されるだけでなく、発病した茎や葉から分泌される汁液によっても感染が拡大することが知られています。モザイク病はスイカ以外にも多数の作物に感染しうる病気のため、他の作物からの伝染にも注意が必要です。
予防法・対処法
- 育苗期をはじめ、アブラムシが多く発生する時期には寒冷紗を利用してアブラムシから苗を保護しましょう。
- 定植後はマルチを使用してアブラムシの飛来を防ぐとよいでしょう。
- 発病した葉はすぐに除去するとともに、被害を受けた株に触った後はきちんと消毒するまで他の株には触らないようにしましょう。