病害虫のパターンを知って、適切に防除しよう!
マスカットを育てていると、葉が枯れたり、マスカットが実らなかったりすることも少なくありません。異変に気付いたら病害虫の存在を確認して、適切な対策を施せばダメージもそれほど広がりません。
病害虫が発生しているのに放置し続けると、最悪の場合、育てているマスカットの木が枯れてしまうことがあります。1番の対策は病害虫の予防を施すこと!発生前に適切な時期に適切な対策を講じることで、そもそも病害虫に悩まされるリスクを軽減させます。
病害虫が発生する時期はほぼ確定しているので、病害虫の発生パターンを知って、それに対する病害虫防除対策を立てることは重要です!
マスカットのよくある病気と対策方法
マスカットによく発生する病気の特徴や時期、対策方法は以下のとおりです。
黒とう病
黒とう病は、マスカットの栽培で最も悩まされることが多い病気です。病気にかかると、マスカットの葉や枝、房に黒い斑点が現れます。黒とう病は雨によって感染が広がり、とくに新梢や新葉は感染しやすくなります。
菌糸は枝梢や巻きひげの部分で越冬し、春から9月の間に発生します。5月から雨季の間
に感染が多くなり、高温多湿になると発生が拡大します。黒とう病がひどくなると新芽も枯れてしまうため、早めの対策が必要です。ぶどうの品種の中でもシャインマスカットは黒とう病にかかりやすい傾向があります。
防除対策としては、発芽前の3月までに対策を行うことで、発生率をかなり減らすことができます。感染した枝や葉を切った後はその場に放置せず、ビニール袋に入れて密封し廃棄しましょう。黒とう病は空気中を浮遊するため、畑の片隅に捨てただけでは再感染します。
べと病
べと病は、欧州系の品種やその交雑種がかかりやすい病気です。葉や新梢、果実に発病が見られ、発病すると葉が透き通って見えるようになります。その後、葉の裏側に白いかびが生じます。
幼い果実に発病した場合は、褐色の病斑が形成された後、硬くなり果実が落ちてしまいます。べと病は地面に落ちた葉で越冬し、5月中旬から下旬になると雨滴や降雨により感染します。6月初め頃に発病が多く、梅雨頃が最も被害が多くなります。
防除対策は、一度発生してしまうと薬剤による防除が難しくなるため、できるだけ早く対処するようにしましょう。病気を見つけたらできるだけ取り除き、薬剤散布を行います。落葉は伝染源となるため処分します。ぶどうべと病は薬剤耐性がつきやすいので、同一系統の薬剤を連用したり多回数使用することを避けましょう!防除時期は5月から落花期です。
晩腐病(おそぐされびょう)
晩腐病はほとんどの品種で発生します。ここ最近では被害が多く報告され、深刻な問題となっている病気です。発病は果実に多く、幼果の頃に発病すると小さい黒点が表れますが、着色期までは拡大しません。実が熟す期間に発病すると腐敗し、最終的にはシワが寄り乾燥した状態のミイラ果となります。
5月頃に雨滴とともに分散して感染し、6~7月に雨が多いと一次感染量が多くなって、成熟期に雨が多いと二次感染が激発します。幼果実が感染しやすいので防除の時期はこの時期を逃さないようにしましょう!
防除対策は、被覆栽培に切り替えることが有効ですが、病気の果実を取り除くことも有効です。排水や風通し、日当たりを良くして、家庭菜園の場所が多湿にならないようにしましょう。
うどんこ病
マスカットや甲州などの欧州系の品種で、とくに多く発生する病気です。症状は、葉や新梢、果実に発生します。葉に病状が現れると、はじめは黄緑色の斑点が見られるようになります。そして、表面に白いかびができると、その後灰白色となって全面に病状が広がります。
緑枝や幼果でも最初は同じような白いかびが現れ、最終的には黒褐色の病斑が現れます。
発病した幼果は鉛色に変色して、裂けたり奇形となって硬くなります。熟した果実に病状が現れると、放射状に変色して黒褐色のあざが現れます。
マスカットの芽内部に菌糸が潜み越冬し、翌春に、新梢が伸び始めるころ伝染して発病します。雨が振り、蒸すような気象条件が整うと発病しやすくなります。
うどんこ病の予防には、剪定を適度に行いマスカットの木の風通しや日当たりを改善してください。発病を見つけ次第取り除くことが重要です。うどんこ病の発生が多くなった場合は、薬剤防除を行います。時期は開花期頃から幼果期頃に登録薬剤を散布します。
マスカットのよくある害虫と駆除方法
マスカットによく発生する害虫の特徴や時期、駆除方法は以下のとおりです。
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※2023年のぶどうの売上データをもとに作成ブドウスカシバ
ブドウスカシバは、スカシバ科の蛾のことです。全国に分布し、成虫はアシナガバチに似た容姿です。ブドウスカシバによるマスカットの害虫被害は、幼虫が新梢に食入することで、紫赤褐色になり、やがて枯れます。
成虫の体調は20~25mm、腹の部分に2本の帯びがありハチと間違うほど良く似ています。4月中旬頃にふ化し、5月中旬から6月中旬ごろに羽化します。5月下旬から6月にかけて食害の被害が出ます。
防除方法としては、休眠期に被害を受けた枝を剪定して取り除くことが大切です。薬剤を使う場合は、成虫産卵から幼虫ふ化期(5月下旬から6月中旬)に薬剤散布を行います。
ブドウトラカミキリ虫
マスカットの枝を食害する小型のカミキリムシです。幼虫が枝の内部に食入することで、芽が枯れたり枝が折れる被害が発生するようになります。枝が少し膨らみ黒くなった部分を確認すると、ブドウトラカミキリ虫が潜んでいることが多いです。5月中旬以降になると幼虫の食害が始まり、枝折れが発生するようになります。
成虫の体長は15~20mm、胸部は赤褐色で独特な丸い形が特徴的です。ハネには2本の黄色い横縞があります。
防除方法としては、剪定時に枝の芽付近に褐色が見られる枝を切り落とします。被害を受けた枝を近くに放置すると翌年の発生に繋がるので、土中に埋めるか焼却処分します。薬剤を使う場合は、産卵期から食入期となる9月中旬から10月の間か、休眠期に薬剤散布を行います。
クワゴマダラヒトリ虫
秋に葉を数枚綴り合せて巣を作り、その中で多数の幼虫が集団で食害します。突発的に大発生する害虫で一度、発生すると数年間は発生が続きます。植物の芽や葉を食害します。
春に越冬場所から移動してきた幼虫が、発芽前の芽や新梢の芽、葉を食害します。花芽を食害されると着果量が十分確保できなくなります。
クワゴマダラヒトリ虫は黒色で、多数の突起と黒色の長毛を持つ毛虫です。大きくなると60mm程度になります。1年に1回、8月下旬から9月中旬に発生します。葉の裏に1000~2000個の卵を産み10日ほどでふ化します。
駆除方法は、デレキなどで巣網ごとはぎ取り、処分します。幼虫を巣網から出し、直接殺虫剤や熱湯をかけたり、踏みつぶします。巣の位置が地面に近い低い所に作るので、駆除は比較的簡単に行えます。巣網の中にいる状態だと殺虫剤を散布しても効き目はありません。
チャノコカクモンハマキ虫
無袋栽培のハウスぶどうに幼虫が顆粒を食害します。裂果や腐敗果の原因となり、とくに無加温栽培で被害が多くなります。幼虫が葉や果房から食害し、果房の穂軸部や果便部に寄生して内側から果皮を食害するので、裂けたり果汁が溢れ出たりします。
デラウェアなど粒が密着している品種は見つけにくいので、白い糸がトンネル状に張り巡らされていたら、その中にチャノコカモンハマキ虫の幼虫がいる可能性があります。また、葉が点々と食害され褐色に変色していると、その付近の房に被害が出ることが多くなります。
年4回発生し、落葉や樹皮下、ハウス資材の中で越冬します。春の発芽と同時に食害が始まります。
防除方法としては、若齢幼虫期に薬剤を散布すると効果が表れます。作業中に糸でつづられた新梢や果房を見つけたら幼虫を捕殺するようにしましょう。
症状別!原因と対策
マスカットを家庭で栽培していると、さまざまな問題に行き詰まることがあります。そんな時は放置せず、必ず対策を講じてください。
マスカットの花が咲かない
窒素肥料の与えすぎや強い剪定をすると花が咲かないことがあります。また、若木の場合も花が咲かないことがあります。窒素肥料の量を減らしたり、強い剪定をしないことで、花が咲くようになります。若木の場合は、苗を植えてから2~3年で実がなり始めます。窒素肥料の与えすぎや強い剪定をすると花が咲かないことがあります。また、若木の場合も花が咲かないことがあります。窒素肥料の量を減らしたり、強い剪定をしないことで、花が咲くようになります。若木の場合は、苗を植えてから2~3年で実がなり始めます。
マスカットの樹が枯れた
枯れる原因には水切れや病害虫が考えられます。黒い斑点が現れたときは、黒とう病にかかっているかもしれません。酷くなると全体が枯れてしまいますので、早めの対処が必要です。
実が大きくならない、色が悪い、味がすっぱい
剪定が行き届いておらず、日照不足が原因です。適度な切り戻し剪定と、細くて弱い枝の間引き剪定、込み合う枝葉を剪定し、全体的に日が当たるように整えてあげましょう。
マスカットが裂果してしまう
水分を過剰に取り込み、実が裂果する
土壌の過湿を抑制します。水を与えすぎないようにするか
果粒が押し合いその圧力で裂ける。
通気性を良くしてあげてください。葉の面積指数を高めにすることです。
ジベやけや花カスによる外傷が起点となり裂ける。
ジベレリン処理をできるだけ遅らせて通常開花させ、摘粒をしっかりやることが裂果の予防に大きく繋がります。
樹体内の硝酸濃度を抑えること
窒素の効きを抑え玉伸びさせないことが大切です。成熟期直前の葉柄中硝酸濃度は500ppmを超えないように管理しましょう。
マスカットの防除歴とポイント
回数 | 散布時期 | 病害虫の発生状況 | 薬剤と調合量 (100?あたり) | 散布量 (10aあたり) | 注意事項 |
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晩腐病対策として果梗の切り残し・まきひげの除去、カイガラムシ類には粗皮はぎを徹底する。サビダニ類対策として、石灰硫黄合剤 20倍(5ℓ)を用いる(展着剤…別表) | ①黒とう病のり病枝は伝染源となるので除去し、 圃場外へ持ち出す。 ②ブドウトラカミキリの秋防除を行わなかった場合 は、2月下旬にトラカミキリ防除剤を散布する。 ③デランフロアブルは単用散布とし、石灰硫黄合 剤とは散布間隔を5日以上あける。 ④晩腐病対策として、トップジン M ペースト3倍液 を塗布してもよい。 | ||||
1 | 発芽前(3月下旬) | 越冬病菌/害虫/黒とう病/つる割病/晩腐病/ブドウハモグリダニ | デランフロアブル/200倍/500㏄ | 300ℓ | |
黒とう病対策として展葉初期にチオノックフロアブル 1,000倍(100 ㏄)をかけムラのないようていねいに散布する(展着剤加用)。この 時期以降病斑のみられる新梢や葉および花穂(果房)は除去し、圃 場外へ持ち出す。 | 石灰硫黄合剤の散布ができない地域で、ブドウハ モグリダニ対策として、展葉初期にコテツフロアブ ル2,000倍(50㏄)を混用散布する。 | ||||
2 | 展葉5~6枚 (5月上旬) | べと病、黒とう病、 つる割病が発生しは じめる。チャノキイ ロアザミウマ、フタ テンヒメヨコバイが 発生する。 | ドーシャスフロアブル 2,000 倍 50cc 注 注意事項②参照 加用スカウトフロアブル 3,000倍 33㏄ | 300 | ①べと病防除の最も重要な時期であるから、散布 開始が遅れないようにする。 ②オウトウ・ウメの隣接園ではドーシャスフロアブルにか えて、アリエッティ水和剤 800倍(125ℊ)を用いる。 ③前年クワコナカイガラムシの被害が多い樹では、 5月上旬にスタークル顆粒水溶剤20 ~ 40ℊ /樹 ら主枝の粗皮を剥いだ部分に塗布する。 ④天候不順が予想される場合やべと病の発病初期 には、オロンディスウルトラ SC 2,000倍(50㏄) をかけむらのないようていねいに散布する。 ⑤オロンディスウルトラ SC は、周辺に立木類があ る場合は飛散しないように注意する。耐性菌の発生を防ぐため、連用をさけ、年1回の使用とする。 |
べと病対策として散布量を守り、散布間隔をあけないようにする。 | |||||
3 | 展葉10枚 (5月中旬) | べと病、黒とう病、 クワコナカイガラムシ、 チャノキイロアザミウマ、 アブラムシ類、フタテン ヒメヨコバイの発生期。 | オーソサイド水和剤80 800倍 125g/加用モスピラン/顆粒水溶剤/2,000倍 50g | 300 | ①オーソサイド水和剤80は、キウイフルーツの隣 接園では飛散に注意する。また、スモモに薬害 の発生する恐れがあるので隣接園では飛散に注 意する。使用回数(計3回まで)に注意し、収穫 30日前までに用いる。 ②天候不順が予想される場合やべと病の発病初期 には、ジャストフィットフロアブル5,000倍(20㏄) をかけむらのないようていねいに散布する。 ③ジャストフィットフロアブルは、周辺に立木類があ る場合は飛散しないように注意する。耐性菌の 発生を防ぐため、連用をさけ、年1回の使用とする。 ④クワコナカイガラムシの多い場合は、スプラサイ ド水和剤1,500倍(66ℊ)または、スタークル顆 粒水溶剤2,000倍(50ℊ)を用いる。スプラサイ ド水和剤は、立木類に薬害の発生するおそれが あるので飛散に注意する。 ⑤ミカンキイロアザミウマの発生園では、除草を徹 底する。アーデントフロアブルは、キウイフルー ツの隣接園では飛散に注意する。 ⑥花かすをできる限りていねいに取り除き、灰色 かび病の多い場合はスイッチ顆粒水和剤2,000倍 (50ℊ)を用いる。 ⑦ハダニ類には、カネマイトフロアブル1,500倍 (66㏄)を追加散布する。ただし、カキ・キウイ フルーツの隣接園では飛散に注意する。 ⑧晩腐病・灰色かび病などの追加散布として、セイ ビアーフロアブル20 2,000倍(50㏄)を用いてよい。 |
ミカンキイロアザミウマ対策として、開花直前にアーデントフロアブル 2,000倍(50㏄)を用いる。 | |||||
4 | 開花直前 (5月下旬) | べと病、灰色かび 病、黒とう病、うどん こ病、クワコナカイガ ラムシ、チャノキイロア ザミウマ、ミカンキイロ アザミウマの発生期。 | オーソサイド水和剤80 800倍 125g 加用フルーツセイバー 1,500倍 66cc | 300 | |
種なし栽培:第1回ジベレリン処理(晩腐病対策として、処理後直 ちにロウ引きのカサかけを行う。) | |||||
5 | 落花直後 (6月上旬) | べと病、灰色かび 病、黒とう病、うどんこ 病の発生が多くなる。 晩腐病の感染期。 クワコナカイガラム シ、チャノキイロアザミ ウマ、ハダニ類、ブド ウサビダニの発生期。 ハマキムシ類、トリ バ類、クビアカスカシ バの発生がはじまる。 | ペンコゼブ水和剤 1,000倍 100ℊ またはジマンダイセン 水和剤 1,000倍 100ℊ 加用コルト顆粒水和剤 3,000倍 33ℊ | 300 | |
うどんこ病対策として、トリフミン水和剤 3,000倍(33ℊ)を用いる。 | |||||
6 | 小豆大 (6月中旬) | 晩腐病の感染期。 べと病、黒とう病、 うどんこ病、トリバ 類、クビアカスカシ バの発生期。 | ペンコゼブ水和剤 1,000倍 100ℊ またはジマンダイセン 水和剤 1,000倍 100ℊ (収穫45日前までに散布) 加用テッパン液剤 2,000倍 50㏄ | 300 | ①この時期の散布が遅れると果粉の溶脱・果粒の 汚染が心配されるので注意する。 ②落花後のチャノキイロアザミウマ防除から散布間 隔をあけないようにし、散布後袋かけを早く行う。 ③チャノキイロアザミウマは袋内にも侵入するので、 トメ金はしっかり固定する。 |
まとめ
病害虫が発生して、葉が枯れ出したり、果実が実らず枯れてしまったとき、分からないからと放置しないでくださいね!マスカットの木をよく観察して、どんな病害虫が発生しているのかを見極め、早急に対策を講じてください。
今年は失敗に終わっても、また翌年に備えてしっかりと予防対策を行えば、美味しいマスカットを実らせてくれるはずです。
【参考サイト】