病害虫のパターンを知って、適切に防除しよう!
桃やぶどうなど、他の果樹と比べるとミカンは害虫被害が少ない果樹です。初心者の方にも育てやすく、あまり手がかからない果樹ともいえますが、「何の対策もしなくても良い」、というわけではありません。春から秋の間には、害虫や病気が発生するので、適切な対策を施してください。
温州ミカンのよくある病気と対策方法
5月から梅雨の期間は、病害虫の被害が多いため、特に注意を必要とする時期です。
どんなものでも初期段階に何らかの対策を施しておかなければ、被害は拡大する一方です。被害が大きくなると、ミカンの木が受ける打撃も大きくなります。
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※JAみっかび公式ショップスタッフおすすめのミカンな加工品そうか病
苗や若木で発生が多くみられる病害です。温州ミカンはそうか病に弱く、葉や果実、枝に発生し、感染した時期により病気の症状に違いがあらわれます。
若木の時期はいぼ型病斑になり、それ以降の時期に感染するとそうか型病斑になります。病斑が多く発生してくると、葉では奇形や落葉がみられ、果実では肥大阻害や早期落果、品質の低下がみられます。
そうか病は糸状菌で、越冬します。雨の滴で胞子が運ばれ、若い葉や果実に感染します。感染すると潜伏期間を経て発病します。葉は6月以降、果実は9月以降になると新たな発病はなくなります。
対処方法
そうか病に侵されていない苗木を選んで植えます。若木の間は発病しやすいので、窒素肥料を減らす対策を施してください。発病がみられた場合は、病斑がある枝葉を取り除き、菌密度を減らしましょう。
薬剤で防除する場合は、4月上旬ごろの展葉(てんよう)の時期と、開花時期が重要な防除時期です。
黒点病
ミカンなどの柑橘類の果樹に多く発生する病害です。0.1~0.5mm程度の黒い円形の病斑が葉や枝、果実にあらわれます。黒点病斑からの二次被害はありませんが、果実に発病すると見た目が悪くなり、商品としての価値が下がります。
6月から7月の感染を前期感染、8月から9月の感染を後期感染と呼び、前期感染であらわれた黒点のほうが大きくて目立ちます。
黒点病は糸状菌の一種です。感染時に病原菌の密度が高いと、雨粒の流れた跡に涙型の黒点が密集して発生します。高密度になると、大部分が硬い泥塊状になります。
枯れ枝の中で越冬し、気温が20℃前後になり雨などで濡れた状態になると、胞子が雨滴と一緒に飛び散ります。5月から8月ごろ、降雨日の気温が14℃以上になると感染が起こりやすくなります。
対処方法
間伐や整枝、剪定をこまめにおこない、風通しや日当たりを良くする。枯れ枝ができにくくなるように、乾燥や風害、寒害などを防止する。枯れ枝や剪定した枝は感染源となるため、適宜処分する。薬剤の散布は、6月から8月の間に行います。
灰色かび病
花に灰色のカビが発生して落花を助長する病気。発病した花弁が春葉に付着すると、茶色く変色し同心円状の病斑が形成されて落葉します。発病した花弁が実が実り始めごろまで残っていると、果実にかさぶた状の傷ができます。果実が肥大するにつれて拡大し、白くコルク化するため見た目が悪くなります。
温州ミカンの中では特に早生種で多発します。貯蔵中に発生した場合は、果実が腐る原因になります。
対処方法
発生当初は花からはじまるので、発見したら速やかに取り除きます。薬剤を散布するのであれば、満開から落弁期が最適です。もし、果実が病害に侵されている場合は、果実の傷を防ぐために1次落花期に再度農薬を散布します。
貯蔵中のミカンに発病がみられた場合は、すぐに除去する。貯蔵中のミカンに発病がみられた場合は、すぐに除去する。
かいよう病
葉や枝、果実に発生します。春葉の病斑は、茶褐色の円形のテンテンが表れ、淡黄色に変色します。後に拡大して中心部がコルク化し、その周囲0.5mm幅が水浸状になります。さらにその周囲にはかなり広い黄色のクマ(ハロー)が生じます。枝と果実にあらわれる病斑は、ハローはみられません。短稈状(たんかんじょう)の細菌となり、20~30℃下で雨媒伝染します。新梢や果実の未成熟期には、気孔から菌が侵入し、果実が成熟すると傷口から感染します。
対処方法
有効的な薬剤が少なく、伝染源を取り除くか強風対策を施すなどの対策に重点をおきます。また、細菌の越冬原因となる夏と春の梢の剪除も大切です。
農薬散布では、発芽期以降にかいよう病が多く発生した場所で散布します。
温州ミカンのよくある害虫と駆除方法
ミカンの木につく代表的な害虫は、アブラムシやカイガラムシ、ハダニ、ハマキムシなどです。害虫の特徴や時期、対処方法をご紹介します。
アブラ虫
春から秋口にかけて発生します。体の色が黄緑色から黒褐色の個体までいますが、黄緑色な個体が一般的です。体調は1.5~4mm程度、なかには羽が生えている個体もいます。
植物の新芽に好んで寄生し、野草やガーデニング、果樹など至る所で目にする害虫です。口にある針で、幼枝の先端や茎、根などに差し込み、汁液を吸います。吸汁だけでは葉が枯れることはありません。ただ、アブラムシの排泄物(甘露)ですす病にかかることがあります。すす(菌糸)が葉や茎の表面を覆い、光合成を阻害することがあります。
対処方法
粘着力の弱いテープを使うとアブラムシを取り除くことができます。予防対策としては、木酢液を散布しておくと近寄ってきません。大量に発生したときは、薬剤での除去をおこなってください。
アブラムシはアミノ酸を好むため、窒素分の肥料を与えすぎると寄ってきます。また、風通りや日当たりが良くない場所でも発生しやすくなります。
ハダニ虫
春先から秋に発生し、梅雨明けから秋にかけて繁殖が盛んにおこなわれます。ミカンハダニやナミハダニは、気温が高ければ1年を通して繁殖します。雌1匹でも産卵しますが、その場合雄が産まれます。
吸汁性の害虫で、0.5mmとかなり小さく肉眼で確認しづらい害虫です。葉の裏側に寄生し、葉を吸汁します。吸汁されると葉緑素がなくなって、白っぽいカスリ状の斑点が表れます。葉が白くなると光合成を阻害され、十分な栄養が作られません。
卵の状態で越冬しますが、気温が高い地域では成虫で越冬します。
対処方法
ハダニは乾燥を好むため水が苦手です。初期状態であれば、葉裏に強めの水圧でシャワーをかけるだけで流れ落ちます。シャワーで対策しても改善されない場合は、薬剤を使ってください。
カイガラムシ類
カイガラムシ類は種類が多く、日本で約400種類も存在すると報告されています。姿かたちは多様で、トゲがついている個体や殻に被われている個体、ワタのような見た目の個体が存在しています。樹液を吸い取るため、枝枯れや衰弱の被害がみられます。排泄物からすす病を誘発し、葉が変色することもあります。
対処方法
5月から8月に繁殖活動にはいるため、この時期に木酢液を撒いて対策を施してください。9月ごろに成虫になりますが、成虫になると表面が殻で保護されてしまい薬剤の効果が期待できません。
薬剤を使わないのであれば、歯ブラシやヘラでこすり落とします。除去したあとは、水をかけてカイガラムシの排泄物や体液を洗い流してください。
カイガラムシは風通しが悪く、湿度が高い場所を好みます。こまめな剪定を施し風通しをよくすることで発生しにくくなります。
ハマキムシ
春先から秋に発生するハマキガの幼虫です。体長は2㎝ほどで、葉を巻いたりつづり合わせた中に生息し、葉や芽、つぼみ、果実などを食べます。食害にあった葉は表面が白っぽく透明になり光合成を阻害します。果実を食べる場合は、外から内部に入るため落果の原因になります。
対処方法
楕円形の淡い黄色の物体が葉に付いている場合は、ハマキムシの卵のため見つけたらすぐに処分してください。葉の中にいる幼虫には薬剤が効きにくいので、発見と同時に葉ごと取り除きましょう。大量に発見した場合は、葉の内部にかかるように薬剤を吹き付けてください。
症状別!原因と対策
「葉が黒くなる」「実が小さい」などうまく生育していない症状をいくつか列記しながら、どういった原因が考えられるのか、それぞれの対策はどうするのかについてご案内します!
木が枯れる原因と対策
病気
①病気
発病すると重症化しやすい病気に、白紋羽病(しろもんぱびょう)という病気があります。根にカビが発生し、ミカンの木を枯らしてしまう病気です。根の部分に綿状のカビが出ていると、病気に侵されています。木を撤去しても、土壌に病原菌が残るため、同じ場所には苗木を植えないでください。
②害虫
カミキリムシやコガネムシが発生すると木が枯れることもあります。カミキリムシの幼虫は幹内部、コガネムシの幼虫は根を食べます。
<カミキリムシ>
幹に木くずが見られた場合はカミキリムシの幼虫がいる合図です。殺虫剤で木くずの出ている穴にスプレーします。
<コガネムシ>
鉢植えの場合は、植え替える時に幼虫を発見できます。地植えの場合は、葉が枯れてミカンの木に元気がなさそうだなと感じたら、枝先下辺りを掘り返し、幼虫がいないか確認してください。
害虫
カミキリムシやコガネムシが発生すると木が枯れることもあります。カミキリムシの幼虫は幹内部、コガネムシの幼虫は根を食べます。
- カミキリムシ
幹に木くずが見られた場合はカミキリムシの幼虫がいる合図です。殺虫剤で木くずの出ている穴にスプレーします。
- コガネムシ
鉢植えの場合は、植え替える時に幼虫を発見できます。地植えの場合は、葉が枯れてミカンの木に元気がなさそうだなと感じたら、枝先下辺りを掘り返し、幼虫がいないか確認してください。
除草剤
空地や駐車場などにまいた除草剤が原因で、木が枯れてしまうことがあります。敷地内ではなく、隣の空地にまいた除草剤が原因となることもあるため注意してください。
葉が枯れる原因
新葉
新葉が出ると古い葉は役割を終え、少しずつ落葉するようになります。
前年が豊作
前年にたくさん実がなると木の勢いが弱り、古い葉が落ちるようになります。
寒風
冬の寒い時期にミカンの葉が枯れる原因の多くは寒風のせいです。温度や霜、寒風はミカンが健やかに成長するのに悪影響を及ぼします。対策としては、寒冷紗や不織布などで株全体を覆い、温度の低下と寒風よけの対策をします。寒風除けの設置が難しい場合は、小糠(こぬか)を使い地温を上げる方法もあります。
病気
かんきつ黄斑病や疫病、白絹病や白紋羽病などになると、木が弱りはじめ葉を落としだします。病気に合わせた対策が必要になります。
水切れ
夏場に葉が急に落ちてしまったら、水切れによる乾燥が原因です。葉が木から落ちる程度では、乾燥から木を守るために葉を落としますが、枯れた葉が幹についたまま落ちない場合は重症です。水分を十分与えると、また新しい芽が出てきます。
実がならない
まだ成長途中だから
ミカンの木は植えてから5年程度ではほとんど実がなりません。実がならないのは幼木が理由かもしれません。木を成長させるために養分を全て使い果たしていると、結実に必要な養分がないためです。定期的に剪定をおこなうことで、木の成長を促してください。
強剪定
常緑果樹にとって、大量の葉を失ってしまう強剪定をおこなうとミカンの木に大きなダメージを与えます。失った分を早く回復するほうにエネルギーを費やしてしまい、花が咲かなかったり実ができなくなります。
6月ごろに実が落ちる
花が咲いた後に小さな実をつけ、小さなまま黄色くなって6月に落ちてしまう減少をジューンドロップと呼んでいます。ミカンの木によくあることで、木の健康を保つために、なりすぎた実を自然に落花させます。自然現象のため、対策は不要です。
剪定を全くしていない
剪定せずほったらかしの場合にも実がなりません。葉や枝が密集してくると光が遮られてしまうため光合成ができなくなります。また、風通しが悪くなると病害虫が発生しはじめます。時期や木の年齢に合わせて、最適な剪定が必要です。
木が大きくならない
植え付けてから何の手入れも入れずに放置していると、ミカンの木は大きくなりません。
摘花
花や実をつけるためには、大きなエネルギーが必要となります。植え付けてから5年で成木となるため、植え付けから3年間は花を咲かせないように蕾を取り除きます。
剪定
不要な枝を残しておくと、養分の量が十分に行き渡らず、ミカンの木がなかなか大きくならないことがあります。2月から3月には適切な剪定を行い、木の樹齢に合わせた剪定をおこなってください。
ミカンの防除歴とポイント
12月下旬から1月中旬
ミカンハダニ、ヤマネカイガラムシ・・・マシン油乳剤(95%)45倍
※幹まで薬剤がかかるように丁寧に散布。薬剤散布前後は暖かい日を選ぶ。
3月中下旬
ミカンハダニ、ヤノネカイガラムシ・・・マシン油乳剤(97%) 60倍
※発芽前に散布し、ミカンハダニには80倍にする。
新梢伸長期から開花初期
シャクトリムシ類・コアオハナムグリ、ケシキスイ類・・・ロディー乳剤 2,000倍
※散布の際はミツバチへの影響に配慮する。
満開期から落弁期
灰色かび病、そうか病、黒点病・・・ストロビードライフロアブル 2,000倍
5月下旬
黒点病・・・エムダイファー水和剤 600倍
ゴマダラカミキリ・・・ダントツ水溶剤 600倍
※散布の場合はミツバチへの影響に配慮する。
6月中下旬
黒点病・・ジマンダイセン水和剤 600倍
ミカンハダニ・・・マシン油乳剤(97%) 200倍
7月上中旬
黒点病・・・ジマンダイセン水和剤 600倍
チャイノキイロアザミウマ・・・アグリメック 2,000倍
8月
黒点病・・・ジマンダイセン水和剤 600倍
チャイノキイロアザミウマ・・・キラップフロアブル 2,000倍
9月上旬から
ミカンハダニ・・・ダニコングフロアブル 4,000倍
※初期発生に防除をおこなう
ハマキムシ類・・・エクシレルSE 5,000倍
※発生に応じて散布
収穫前
貯蔵病害・・・ベンレート水和剤 4,000倍
まとめ
ミカンが実るまで楽しみにしているのに、葉が枯れたり、実が落ちたりすると、とても悲しくなりますよね。ミカンの木が健やかに成長するためには、病害虫が発生しにくい環境を整えてあげることが大切です。適切な剪定や肥料の量を考えて、美味しいミカンを栽培してください。