はじめに
冬野菜の代表格、カブはアブラナ科の植物です。みずみずしさを活かして生でサラダや漬物にしたり、煮物やスープに使ったりと、和洋中問わず様々な料理に活用されます。
今回は、カブがかかりやすい病気とその予防法・対処法を2回に分けてご紹介します。
※カブの病気については2回にわけてご紹介しています。後編はこちらからお読みください。
カブを病気から守る!知っておくべきカブの病気と対策法【後編】 | AGRIs
日本全国、様々な色や形の品種があることが知られているカブは、アブラナ科の野菜です。美味しいカブを育てるために、注意しておきたい病気とその対処法をご紹介します。
https://www.agri-smile.app/articles/kabu-disease-latter
カブ栽培で注意したい病気
黒斑細菌病
黒斑細菌病は細菌によって引き起こされる病気で、カブをはじめ、ダイコンやキャベツなどのアブラナ科の野菜に多く発生します。
初期には葉に褐色の小さな斑点が生じ、やがて周囲に淡い黄色のハロー※が観察されるようになります。
※ハローとは、斑点の周囲にできるリング状の病斑のことを指します。斑点部と比べてより色が薄く脱色した状態で観察されます。
黒斑細菌病は、葉だけでなく根部にも被害をもたらします。初期には灰色の小さな斑点が見られるようになり、症状が進行すると病斑が拡大して黒色に変色します。黒腐病とは異なり、根部が腐敗することはありませんが、内部が褐色や黒色に変色する場合があります。
黒斑細菌病は、病原菌が土壌中に残存することで感染が拡大します。発病した葉が畑に残っていたり、感染している種子が土の中にあったりする場合にも伝染するため注意が必要です。
予防法・対処法
黒斑細菌病が発生した圃場では、土壌の消毒を徹底しましょう。また、種子による伝染が起こるため、消毒された種子を用いるようにしましょう。
土壌からの感染を予防するため、マルチや雨よけを使用することで泥はねを防ぐことも効果的です。
モザイク病
モザイク病は、アブラムシがウイルスを媒介することで発生する病気です。カブのモザイク病を発生させるウイルスにはカブモザイクウイルスとキュウリモザイクウイルスの主に2種類があります。
葉に白色~淡黄褐色の病斑が生じます。幼苗期に感染すると、成長が阻害されて枯死にいたる場合もあります。
予防法・対処法
育苗期をはじめ、アブラムシが多く発生する時期には寒冷紗を利用してアブラムシから苗を保護しましょう。また、定植後は光を反射する銀色のマルチを使用してアブラムシの飛来を防ぐとよいでしょう。
発病した葉はすぐに除去するとともに、被害を受けた株に触った後はきちんと消毒するまで他の株には触らないようにしましょう。
黒腐病
黒腐病は細菌によって引き起こされる病気です。葉だけでなく茎や根などの複数の部位に発症します。
初期には葉に淡褐色の病斑が生じます。病気が進行すると病斑が拡大して中央部が変色し、乾燥すると裂けます。下葉から発症することが多く、放置しておくと株全体に病気が進行することもあります。
根部では、空洞が生じたり変色して腐敗が起こったりする場合があります。根部の腐敗は異臭をもたらします。
黒腐病は土壌中に残っている病原菌から発病します。また、種子による伝染や水を介した伝染が起こることも知られています。
発病した株の葉や根、茎を畑に残したままにしておくと、病原菌が増殖して葉や根の傷口から侵入し、被害をもたらします。
予防法・対処法
発病した株は除去して畑の外で処分し、残渣が残らないように注意しましょう。また、種子感染を防ぐため、播種を行う際には消毒された種子を用いるようにしましょう。
完熟たい肥を混ぜ込むなどして土壌の水はけをよく保つことや、葉や根に必要以上に傷をつけないように普段の手入れから注意することが大切です。
べと病
べと病は、卵菌類のカビが原因となって発生する病気です。地面に近い株の下の方の葉から進行し、葉の表面に黄色い病斑ができます。上の写真はホウレンソウのものですが、病斑の形はふぞろいで、輪郭がぼんやりと歪んでいることもあります。
進行すると、病斑が拡大して裏面に白色のカビが生じ、さらに処置を怠ると病斑の中央が黒色に変わって枯死にいたります。下の写真では、べと病を発症したホウレンソウの葉の裏側にカビが生じている様子がわかります。
カビは水を介して伝染するため、多湿な環境で発生します。気温が20℃前後で雨が多い梅雨・秋雨の時期は特に注意が必要です。カビの胞子が作られると風によって運ばれて他の野菜にも感染が拡大する恐れがあります。
予防法・対処法
水のやりすぎに注意しましょう。また、枯れた葉はこまめに除去し、株の根元の風通しを良く保ちましょう。
落ち葉からも感染する可能性があるため、圃場はきれいな状態を維持するよう心がけましょう。
白斑病
白斑病はカビによって引き起こされる病気で、カブだけでなくハクサイをはじめとするアブラナ科の野菜に感染します。
初期には、茎の一部に水が染みたような状態になって淡褐色に腐敗します。放っておくと、病斑部の中央が淡黄色や灰白色に変色して破れやすくなります。
カビは水を介して伝染するため、多湿な環境で発生します。気温がそれほど上がらず、かつ湿度が高い晩秋から5月上旬にかけては特に注意が必要です。カビの胞子が作られると風によって運ばれて他の作物にも感染が拡大する恐れがあります。
予防法・対処法
発症した葉や茎はすぐに除去しましょう。
また、水のやりすぎに注意し、排水がよい土壌環境を整備しましょう。梅雨の時期や秋の雨が多い時期には特に注意が必要です。
アブラナ科の作物の連作は避け、適切な施肥管理を心がけましょう。
萎黄病
カブの萎黄病は、フザリウム属菌のカビが原因となって発生します。
発病の初期には葉が黄化し、やがて葉脈が壊疽して葉に水分を供給できなくなって枯死にいたります。葉が黄化している場合には根にも症状が現れている場合が多く、根部を切断すると道管の部分が褐色に変色している様子が観察されます。
土壌中に残存する原因菌が発病を引き起こします。種子から感染することもあります。
感染が起こった畑を機械で耕した場合、消毒をせずに他の畑で同じ機械を使用することによっても感染が拡大するため、機械の使用後には消毒を行うよう心がけましょう。
予防法・対処法
感染した葉や茎は早期に除去し、畑の外で処分します。また、一度感染が確認された土壌では連作を避けましょう。
種子による伝染を防ぐため、育苗を行う際には消毒された種子を用いましょう。抵抗性のある品種を選択することも効果的です。
根腐病
カブの根腐病はリゾクトニア属菌のカビによって引き起こされる病気で、主に根に発症します。
根部の表面に褐色や黒褐色の病斑ができます。病斑は、表面がざらついているものや亀裂が入っているもの、中央部分が陥没しているものなど様々なタイプが見られます。
葉に症状が現れることは少ないため、掘り出してみて初めて感染に気付く場合もある厄介な病気です。
カブの根腐病は土壌を介して伝染します。病原菌は乾燥を好むため、水分が不足している場合に多く発症が見られます。
予防法・対処法
発病した葉はすぐに除去し、畑の外で処分しましょう。
また、連作をすると土壌中に病原菌が蓄積されて発病しやすくなるため、カブやダイコンの連作は避けましょう。水やりを行って土壌の水分を適度に保つことも大切です。
カブを健康に育てるために
風通しがよい環境で、施肥管理や水やりに注意しながら栽培を行うことが、カブを健康に育てるための基本です。万が一感染した場合には、病状に合わせて適切に葉の除去や株の抜き取りを行ってください。
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