なす栽培ではどんな病気が発生する?
なすは野菜の中でも丈夫で育てやすいため、初心者でも気軽にチャレンジすることができます。しかし、そこで注意しなければならないのが病気です。なすは乾燥を嫌う植物のため、栽培環境は高温多湿になりがち。そのため主に糸状菌(カビ)が発生しやすく、うどんこ病や黒枯れ病にかかる可能性が高いです。
なすの主な病気は湿度が高いほど感染しやすくなるため、定期的に葉を剪定して風通しを良くしたり、あらかじめ消毒をした土で栽培するなどの工夫が必要です。また初心者は種から栽培するのではなく、病害虫に強い強い接ぎ木苗を購入して育てるのがおすすめです◎
なすに発生しがちな病気とその対処法は?
なすに発生しがちな病気は、それぞれ原因や対処法が異なり、症状に合った処置をとることが大切です。
ここでは、なすに発生しがちな10種類の病気とその対処法について紹介します。病気ごとの症状や原因も合わせて解説するので、なす栽培をはじめる前の対策としてぜひ活用してください◎
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※2024年8月のデータうどんこ病
うどんこ病は、葉っぱがうどん粉をまぶした様に白くなっていく病気で、なす以外にも様々な野菜栽培に付きまといます。葉の表面が白くなることで葉の光合成速度が低下したり、葉から栄養を吸収されたりして、苗全体の衰えにつながります。
胞子が風で運ばれ、葉や枝、花首、蕾に寄生します。春や秋の涼しく湿度が低い時期、とりわけ風通しの悪い場所で発生しやすくなります。
うどんこ病の対処法として、以下の手段が有効です。
- チッ素過多にならないよう、肥料は指示通りの量を守って与える
- 感染が広がらないよう、症状が見られる葉は早めに取り除く
菌核病
菌核病は、梅雨の時期など温度が高すぎず、かつ湿度が高いときに発生しやすい病気です。 茎や実で見られ、茎には水浸状の病斑が広がっていき、病斑から上の茎葉はしおれて枯死します。病斑部は褐色から黒褐色に変色し、やがて白い綿状のカビに覆われ、最後は黒いネズミ糞状の菌核が形成されます。実では茎と同じような症状が花が落ちた部分に発生します。
灰色カビ病とほぼ同時期に多発しますが、菌核病の発生源が茎であるのに対して灰色カビ病の発生源は葉、花、実であること、また菌核病では病斑上が白い綿状の菌糸で覆われるという点で見分けることができます。
菌核病の対処法として、以下の手段が有効です。
- 低温かつ多湿の環境を避けるため、冬場の水管理に注意する
- 一度菌核病が発生した場所では、連作を行わない
- 天地返しをして病原菌を土中深くに埋める
苗立枯病
苗立枯病は、種を蒔いてからしばらくした後、育苗中に起こる病気です。地面付近の茎に発病し、広がるとくたびれたようになり枯死してしまいます。特に種をまいて発芽したばかりの時期に発病するとすぐに黒くなって枯死します。
苗立枯病の対処法として、以下の手段が有効です。
- 土壌が水分過多にならないよう、育苗中の水管理に注意する
- 床土には汚染されていない清潔な土壌を用いる
褐紋病
褐紋病は、葉や茎、果実に発生します。葉では蒼白色の病斑ができ、拡大して褐色の病斑になります。果実には円形のくぼんだ病斑ができ、時間が経つと同心円状に黒色の小粒点が生じます。
褐紋病の対処法として、以下の手段が有効です。
- 露地栽培では高畦にして排水を良くする
- 株どうしの間隔を開けて植え付ける
- 定期的に枝を剪定し、風通しを良くする
- 病葉や病果があれば早めに取り除く
すすかび病
すすかび病は、白色のカビが真ん中から灰褐色に変わっていき、葉がすすで覆われたようになる病気です。症状が広がると、葉全体が黄色く退色していって葉が落ちてしまいます。
すすかび病の対処法として、以下の手段が有効です。
- 定期的に枝を剪定し、風通しを良くする
- ハウス栽培ではこまめに換気をする
- 薬剤を散布して防除する
黒枯病
黒枯病は、葉に紫褐色の病斑が生じて徐々に拡大して淡褐色で輪紋状の病斑になり、時間が経つと落葉してしまいます。収穫の時にできた切り口付近から枝に症状が広がり、枝全体が枯れ込んでしまうことも多いです。
黒枯病の対処法として、以下の手段が有効です。
- 定期的に枝を剪定し、風通しを良くする
- ハウス栽培ではこまめに換気をする
灰色カビ病
灰色カビ病は、ボトリティス菌という風によって飛散する糸状菌が原因となって発生する病気で果実、葉、茎などで発症し、特に枯れた葉先、咲き終わった花弁が主な伝染源となってそれらが落ちる時に接触した葉に病斑が移ります。
進行すると発症部分は灰色のカビに覆われてしまいます。夏の発生は少なく、秋から冬にかけての、涼しくて湿度が高く、日照が不足しがちな時期に発生が多くなります。
灰色カビ病の対処法として、以下の手段が有効です。
- 株どうしの間隔を開けて植え付ける
- 定期的に枝を剪定し、風通しを良くする
- 咲き終わった花がらはこまめに取り除く
半身萎凋病
半身萎凋病は、株の片側の下葉に黄色の病斑ができ、その後葉が上向きに巻いてきたり、先端が垂れ下がったりしてきて、そのまま下葉から枯れていく病気です。症状の出た株の茎を切ってみて中をみると褐色に変色しています。一度症状が出ると、実のつきが各段に悪くなるため注意が必要です。
半身萎凋病の対処法として、以下の手段が有効です。
- 肥料は指示通りの量を守って与える
- 一度半身萎凋病が発生した場所では、連作を行わない
青枯病
青枯病は、はじめに一部の葉が水分を失い、青いまましおれます。2~3日間は日中にしおれ、夜間や曇雨天の日は回復するが、その後回復しなくなり、株全体がしおれ、やがて枯死してしまいます。茎の地際部を切断すると維管束が褐変しており、この茎を水を入れた容器などに差し込むと、白色の細菌液が糸を引くように流出します。
青枯病の対処法として、以下の手段が有効です。
- 台木を利用する
- 一度青枯病が発生した場所では、連作しない
- 高畦にして排水を良くする
- 発病株は直ちに抜き取って処分する
- 養液栽培では、水温を20℃以下に管理する
- 耐病性品種を作付ける作型をずらして、地温の低い時期に作付ける
- シルバーマルチや敷きわらなどで地温の上昇を防ぐ
綿疫病
綿疫病は、主に果実に発生し、幼果から成熟果まで侵されます。 はじめに12〜20mm程度のややへこんだ光沢のない褐色楕円形の病変が生じます。それが次第に広がり35〜45mm程度の円形や楕円形の褐色病斑となり、表面に小じわを伴い、大きくへこんでいきます。
多湿条件下では表面の菌糸は増加し、発生後7日程度で果実全体を被うようになります。乾燥条件では、かすかな灰白色粉末状のかびが生じます。
綿疫病の対処法として、以下の手段が有効です。
- 排水と密植に注意し、高温・多湿を避ける
- 敷わら・ビニールマルチで降雨時の土のはね上がりを防ぐ
- 罹病果は除去し、収穫後の罹病株は処分する
なす栽培のコツとは?
なす栽培では、病気にかからないよう、土づくりや苗づくり、植え付け、仕立てなどの作業を丁寧に行うことが大切です。また肥料や水の管理も重要で、不足するのはもちろん、与えすぎも良くありません。
日々のお世話を欠かさず行い、こまめに様子を観察してあげることで、なすは健康に美味しく育っていきますよ◎
こちらの記事では、なす栽培の手順やコツについて詳しく解説しています。家庭菜園で美味しいなすをたくさん収穫したい人は、ぜひ合わせてチェックしてください♪
まずは食べてみて!山形県の美味しいなす
山形県は、日本を代表するなすの名産地。県内各地では毎年夏から秋にかけて、大ぶりで甘いなすがたくさん収穫されています。中でも人気品種となっている「くろべえ」は、柔らかくとろけるような食感で、煮ても焼いても美味しく食べられます◎
これからはじめてなす栽培をはじめようと思っている人は、まず育てたい品種を決めることからスタートするのがおすすめ!山形県の美味しいなすを食べて、自分でも育ててみたいと思えるお気に入りの品種をぜひ見つけてみてください。
なすを食べてJAさがえ西村山の挑戦を応援しよう!
さくらんぼや桃、りんごなどのフルーツをはじめ、日本で有数の「米どころ」としても知られる山形県さがえ西村山地区。豊かで寒暖差のある自然環境と生産者のたしかな技術によって、「さくらんぼの王様」といわれる佐藤錦など、四季折々の美味しい食べ物を全国にお届けしています。
そんなさがえ西村山地区に拠点を置き、山形県の中央エリアを管轄するJAさがえ西村山では、2023年より「環境にやさしい栽培技術」と「省力化に資する先端技術等」を取り入れた「グリーンな栽培体系」を目指し、新たな取り組みをスタートしています。
気候変動問題が世界中のイシューとなる中で、全国の生産者にはカーボンニュートラルの実現に向けて化学肥料の低減が求められています。(みどりの食糧システム戦略)
とはいえ、化学肥料を減らすと、収入減少の怖さがあり、生産者にとって大きな負担を強いる可能性があります。そこでJAさがえ西村山では、バイオスティミュラントという新しい農業資材に着目し、生産者の負担を軽減する、新しい栽培方法の開発に挑戦しています。
【引用元】バイオスティミュラント 活用による 脱炭素地域づくり協議会
特に、栽培過程で生じる「ゴミ」である食品残渣からバイオスティミュラントを生産することで、「食品から食品」を生む環境負荷の低い栽培を実現し、気候変動に負けない、持続可能な産地を目指しています。
現在、さがえ西村山地区では「さくらんぼ」「桃」「りんご」「米」「なす」の5品目でこの取り組みを実施しているそうです。ぜひ、気候変動問題に果敢に取り組む産地の商品を購入して応援していきましょう!