病害虫のパターンを知って、適切に防除しよう!
害虫が苦手な人もいると思いますが、家庭菜園を始めると害虫はつきものです。でも、環境を整えて病害虫を予防すれば、病害虫を未然に防ぐことは可能です。日頃からぶどうをよく観察し、病害虫が発生しているのを見つけたら早めに対処しましょう!
ぶどうのよくある病気と対策方法
ぶどうに病気や害虫が発生するのは、春から夏にかけてが多くなります。病害虫に適した防除方法で対策して、大切なぶどうを病害虫から守ってください。
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※2023年のぶどうの売上データをもとに作成晩腐病(おそぐされびょう)
ぶどうの晩腐病はほとんどの品種に発生します。ここ最近では被害が多く報告され、深刻な問題となっている病気です。発病する部位は果実に多く、幼果の頃に発病すると小さい黒点が表れますが、着色期までは拡大しません。実が熟す期間に発病すると腐敗し、最終的にはシワが寄り乾燥した状態のミイラ果となってしまいます。
5月頃に雨滴とともに分散して感染します。6~7月に雨が多いと一次感染量が多くなって、成熟期に雨が多いと二次感染が激発します。幼果実が感染しやすいので防除の時期はこの時期が重要です。
防除対策は、被覆栽培に切り替えることが有効ですが、病気の果実を取り除くことも有効です。排水や風通し、日当たりを良くして、家庭菜園の場所が多湿にならないようにしましょう。
灰色かび病
ぶどうの灰色かび病は花や葉、幼い果実や成熟した果実に発病します。発病すると、灰色のかびが表れ、腐敗してしまう病気です。病原菌は越冬し、春に風や雨によって分散します。若葉や花穂、傷口や組織の柔らかい部分から侵入し感染します。防除対策は開花前から落花後10日頃までに重点的に行ってください。
防除対策は、発病した花穂や果実を取り除き、焼却するか土中に埋めます。落花後には、花冠落としを十分に行ってください。ぶどうを植えている場所の風通しを良くし、過湿にならないように注意しましょう。薬剤防除は開花する前後に行ってください。
べと病
ぶどうのべと病は、欧州系の品種やその交雑種がかかりやすい病気です。葉や新梢、果実に発病が見られ、発病すると葉が透き通って見えるようになります。その後、葉の裏側に白いかびが生じます。
幼い果実に発病した場合は、褐色の病斑が形成された後、硬くなり果実が落ちてしまいます。べと病は地面に落ちた葉で越冬して、5月中旬から下旬になると雨滴や降雨により感染します。6月初め頃に発病が多く、梅雨頃が最も被害が多くなります。防除時期は5月から落花期です。
防除対策は、一度発生してしまうと薬剤による防除が難しくなるため、できるだけ早く対処するようにしましょう。病気を見つけたらできるだけ取り除き、薬剤散布を行います。落葉は伝染源となるため処分します。ぶどうべと病は薬剤耐性がつきやすいので、同一系統の薬剤を連用したり多回数使用することを避けましょう!
黒とう病
菌糸が枝梢や巻きひげの部分で越冬し、春から9月までに発生します。5月から雨季までが特に多くなります。発病すると黒褐色で円形の小さい斑点が現れます。高温で多湿になると発生が拡大するようになります。黒とう病がひどくなると新芽も枯れてしまうため、対策が必要です。ぶどうの品種の中でもシャインマスカットは黒とう病にかかりやすいそうです。
防除対策は、発芽前の3月までに対策を行うことで、発生率をかなり減らすことが可能になります。感染した枝や葉を切ってビニール袋に入れて密封し廃棄しましょう。黒とう病は空気中を浮遊するため、畑の片隅に捨てただけでは再感染します。
ぶどうのよくある害虫と駆除方法
春から夏に姿を表す害虫たちは、家庭菜園でぶどう栽培をする人にとって、かなりやっかいな邪魔者。適切な時期に、害虫の種類に合った駆除をおこなってください!
クワゴマダラヒトリ虫
秋に葉を数枚綴り合せて巣を作り、その中で多数の幼虫が集団で食害をします。突発的に大発生する害虫で一度、発生すると数年間は発生が続きます。植物の芽や葉を食害します。
春に越冬場所から移動してきた幼虫が発芽前の芽や新梢の芽、葉を食害します。花芽を食害されると着果量が十分確保できなくなります。クワゴマダラヒトリ虫は黒色で、多数の突起と黒色の長毛を持つ毛虫です。大きくなると60mm程度になります。1年に1回発生し、8月下旬から9月中旬に発生。葉の裏に1000~2000個の卵を産み10日ほどでふ化します。
駆除方法は、デレキなどで巣網ごとはぎ取り、処分します。幼虫を巣網から出し、直接殺虫剤や熱湯をかけたり、踏みつぶして駆除します。巣の位置が地面に近い低い所に作るので、駆除は比較的簡単に行えます。巣網の中にいる状態だと殺虫剤を散布しても効き目はありません。
ブドウスカシバ虫
全国に分布し、成虫はアシナガバチに似たガの仲間です。ブドウスカシバ虫によるぶどうの害虫被害は、幼虫が新梢に食入することです。食入されると紫赤褐色になり、やがて枯れます。
成虫の体調は20~25mm、腹の部分に2本の帯びがありハチと間違うほど良く似ています。4月中旬頃にふ化し、5月中旬から6月中旬ごろに羽化します。5月下旬から6月にかけて食害の被害が出ます。
防除方法としては、休眠期に被害を受けた枝を剪定して取り除くことが大切です。薬剤を使う場合は、成虫産卵から幼虫ふ化期(5月下旬から6月中旬)に薬剤散布を行います。
ブドウトラカミキリ虫
ぶどうの枝幹を食害する小型のカミキリムシです。幼虫が枝の内部に食入することで、芽が枯れたり枝が折れる被害が発生します。枝が少し膨らみ黒くなった部分に潜んでいます。5月中旬以降になると幼虫の食害が始まり、枝折れが発生するようになります。
成虫の体長は15~20mm、胸部は赤褐色で独特な丸い形が特徴的です。ハネには2本の黄色い横縞があります。
防除方法としては、剪定時に枝の芽付近に褐色が見られる枝を切り落とします。被害を受けた枝を近くに放置すると翌年の発生に繋がるので、土中に埋めるか焼却処分します。薬剤を使う場合は、産卵期から食入期となる9月中旬から10月の間か、休眠期に薬剤散布を行います。
チャノコカクモンハマキ虫
無袋栽培のハウスぶどうに幼虫が顆粒を食害します。裂果や腐敗果の原因となり、とくに無加温栽培で被害が多くなります。幼虫が葉や果房から食害します。果房の穂軸部や果便部に寄生して内側から果皮を食害するので、裂けたり果汁が溢れ出たりします。
デラウェアなど粒が密着している品種は見つけにくいので、白い糸がトンネル状に張り巡らされていたら、その中にチャノコカモンハマキ虫の幼虫がいる可能性があります。また、葉が点々と食害され褐色に変色していると、その付近の房に被害が出ることが多くなります。
年4回発生し、落葉や樹皮下、ハウス資材の中で越冬します。春の発芽と同時に食害が始まります。
防除方法としては、若齢幼虫期に薬剤を散布すると効果が表れます。作業中に糸でつづられた新梢や果房を見つけたら幼虫を捕殺するようにしましょう。
症状別!原因と対策
ぶどうを家庭で栽培していると、さまざまな問題に行き詰まることがあります。そんな時は放置せず、必ず対策を講じてください。
ぶどうの花が咲かない
窒素肥料の与えすぎや強い剪定をすると花が咲かないことがあります。また、若木の場合も花が咲かないことがあります。窒素肥料の量を減らしたり、強い剪定をしないことで、花が咲くようになります。若木の場合は、苗を植えてから2~3年で実がなり始めます。
ぶどうの樹が枯れた
枯れる原因には水切れや病害虫による場合が多くなります。黒い斑点が表れたときは、黒とう病にかかっているかもしれません。酷くなると全体が枯れてしまいますので、早めの対処が必要です。
実が大きくならない、色が悪い、味がすっぱい
剪定が行き届いておらず、日照不足が原因です。適度な切り戻し剪定と、細くて弱い枝の間引き剪定、込み合う枝葉を剪定し、全体的に日が当たるように整えてあげましょう。
ぶどうが裂果してしまう
水分を過剰に取り込み、実が裂果する。
土壌の過湿を抑制します。水を与えすぎないようにするか、鉢植えの場合は水はけの良い土に変えましょう。
果粒が押し合いその圧力で裂ける
通気性を良くしてあげてください。葉の面積指数を高めにすることです。
③ジベやけや花カスによる外傷が起点となり裂ける。
ジベレリン処理をできるだけ遅らせて通常開花させ、摘粒をしっかりやることが裂果の予防に大きく繋がります。
樹体内の硝酸濃度を抑えること
窒素の効きを抑え玉伸びさせないことが大切です。成熟期直前の葉柄中硝酸濃度は500ppmを超えないように管理しましょう。
ぶどうの防除歴とポイント
防除時期 | 対象病害虫 | 使用薬剤 | 倍数 | 収穫前/回数 | 備考 |
---|---|---|---|---|---|
3月下旬(催芽期) | 黒とう病・晩腐病 | ベンレート水和剤 | 200倍 | 休眠期/1回 | 枝の先端まで十分に散布する。 |
カイガラムシ類・ハダニ類 | 石灰硫黄合剤 | 7倍 | 発芽前/- | カミキリ多発園ではガットキラー乳剤 100倍 | |
- | グッドパートナー25 | 500倍 | 発芽前/- | ベンレート液を作ってから石灰硫黄合剤を加用。 | |
4月上旬(発芽前) | 黒とう病・晩腐病 | デランフロアブル | 200倍 | 休眠期/1回 | 晩腐病の多発園ではグッドパートナー500倍を加用。 |
5月上旬(発芽直後~ 新梢伸長期) | 黒とう病・晩腐病・べと病 | ストロビードライフロアブル | 2000倍 | 14日前/3回 | ○うどんこ病多発園ではトリフミン水2000倍(7日前/3回)を散布。○ハマキムシ類・スカシバ類、多発園ではフェニックスFL4000倍(14日前/2回)を散布。○リドミルゴールドMZの収穫前日数に注意する。○カイガラムシ多発園ではトランスフォームFLが良い。○黒とう病・晩腐病の発生園では、オンリーワンFL2000倍(前日/3回)を加用する。○ハダニ類多発園ではダニコングFL2000倍(前日/1回)を散布。○カメムシ:ダントツ水4000倍が安価で良い。○害虫の食入孔(木くず、虫糞)があればロビンフッドで防除するのが良い。 |
チャノキイロアザミウマ・ケムシ類 | エクシレルSE | 5000倍 | 前日/3回 | ||
5月中~下旬(開花期) | 黒とう病・晩腐病ベと病 | ジマンダイセン水和剤 | 1000倍 | 45日前/2回 | |
フタテンヒメヨコバイ・チャノキイロアザミウマ | コテツフロアブル | 4000倍 | 60日前/2回 | ||
6月上旬(落弁期) | 黒とう病・晩腐病・灰カビ病 | ファンタジスタ顆粒水和剤 | 3000倍 | 14日前/2回 | |
ベと病 | リドミルゴールドMZ | 1000倍 | 45日前/2回 | ||
チャノキイロアザミウマ・カイガラムシ類 | コルト顆粒水和剤 | 3000倍 | 前日/3回 | ||
6月中旬(果実小豆大) | 黒とう病・晩腐病・べと病 | ホライズンドライフロアブル | 2500倍 | 21日前/3回 | |
チャノキイロアザミウマ | ディアナWDG | 10000倍 | 前日/2回 | ||
6月下旬(袋掛け前) | ベと病 | レーバスフロアブル | 2000倍 | 7日前/3回 | |
チャノキイロアザミウマ・コガネムシ類 | アグロスリン水和剤 | 2000倍 | 21日前/5回 | ||
フタテンヒメヨコバイ | |||||
7月上旬(袋掛け後) | ベと病・晩腐病・さび病 | ICボルドー66D | 25倍 | -/- | |
チャノキイロアザミウマ・コガネムシ類 | ダントツ水溶剤 | 2000倍 | 前日/3回 | ||
- | グッドパートナー25 | 1000~1500倍 | - | ||
7月下旬(収穫前) | ベと病・さび病 | ムッシュボルドーDF | 500倍 | -/- | |
- | グッドパートナー25 | 1000~1500倍 | -/- | ||
8月中旬(収穫中) | ベと病・さび病 | ICボルドー66D | 25倍 | -/- | |
カメムシ・コガネムシ類 | ダントツ水溶剤 | 2000倍 | 前日/3回 | ||
8月下旬~9月中旬(収穫後) | ベと病・晩腐病・さび病 | ICボルドー66D | 25倍 | -/- | |
トラカミキリ・ヨコバイ・クワコナカイガラムシ | スミチオン水和剤 | 1000倍 | 21日前/2回 | ||
- | グッドパートナー25 | 1000~1500倍 | - | ||
10月上中旬(収穫後) | ブドウトラカミキリ | ダントツ水溶剤 | 4000倍 | 収穫前日/3回 |
まとめ
ぶどうの病害虫被害が大きくなると、木全体を枯らすこともありますので、普段から観察して気になった場所は放置せずに原因を探ってください。美味しいぶどうを収穫するためには、早めの対処が功を奏しますよ!
【参考サイト】