土壌改良の基本知識
土壌改良とは、作物にとって良い土壌をつくること
土壌改良とは、土壌の性質や成分を改善すること。優れた物理的特性・化学的特性をあわせもつ土壌では、作物はよく育ち、病気にもかかりづらくなります。そのため、そうではない土壌は「土壌改良」をすることで良い土壌に変えていく必要があります。
土壌改良をすれば連作障害を回避できるなど、農業を持続的におこなうことが出来るようになるでしょう。また、家庭菜園等でプランターを使用している方は、土をまるごと入れ替えるのが手間が少なくおすすめです。畑の方は、土壌改良を行う必要があるでしょう。
優れた物理的特性・化学的特性とはなにか?
土壌改良が目指す優れた「物理的特性」「化学的特性」をあわせもつ土壌とはどのような状態でしょうか?
物理的特性とは
【排水性】【保水性】【通気性】で測られる性質で、植物の根が成長しやすい空間となっているかを示します。加えて、物理的特性に優れていると、栄養素の循環にもつながります。
微生物によって生み出される「土壌団粒」があると物理的特性に優れた土壌なため、一つの目安としてみましょう!
化学的特性とは
植物が必要とする量の栄養素(主要栄養素、二次栄養素、微量栄養素)がどの程度含まれているかを示し、【土壌ph】【栄養分】などが指標となります。
植物によって適切な栄養状態は異なるので、適宜見極めながら、多すぎず少なすぎず土壌中に含まれている状態を目指しましょう。
ちなみに、物理的特性、化学的特性どちらか片方だけを改善するのではなく、双方を改良していく必要があります。
例えば、作物が栄養不足に陥る場合は、土壌中の栄養素が不足しているケース(化学的特性の問題)と、土壌中の保水性が悪く、肥料を保つことが出来ないケース(物理的特性の問題)があります。
土壌改良材の種類!どれを選ぶべき?
土壌改良の基本がお分かりいただけたでしょうか? ここでは、土壌改良材の種類と、どの種類を選択すべきか考える際のポイントを紹介します!
有名な土壌改良材である「堆肥」
堆肥とは、「有機物」が微生物によって分解・発酵されたもので、土壌団粒構造をつくることができます。
植物由来の堆肥
植物由来の堆肥は、繊維が多く含まれるため物理的特性を改良するのに優れています。化学的特性も改良したい場合は、肥料と併用するとよいでしょう。
腐葉土
広葉樹の落ち葉や枝からできたもの。通気性・排水性・保水性の改善に優れています。
バーク堆肥
木の樹皮(バーク)から得られ、とくに保水性改善に優れています。ほかの通気性や排水性もバランスよく提供。効果がゆっくりと長く持続するので初心者からも人気の堆肥のひとつです。
もみ殻堆肥
排水性改善にすぐれ、粘土質の土壌でお困りの方にとくにおすすめです。
もみ殻燻炭(くんたん)
堆肥ではありませんが、もみ殻を燻して炭にしたもの。酸性の土壌を中性にしたり、微量要素の補充、さらに保水性・通気性に優れています。また消臭効果もあるので堆肥などの臭いを消したい時にもおすすめ。
動物由来の堆肥
植物由来の堆肥と比べると多くの肥料が含まれています。物理的特性と化学的特性双方をバランスよく改良したい場合におすすめです。
牛糞堆肥
適度な肥料分が含まれ、また牛糞には繊維質が多く含まれるので物理的特性の改良にも適しています。ゆっくりと効果があらわれます。
豚糞堆肥
肥料分は多めで、繊維分はやや少なめ。効果の即効性も牛糞と鶏糞の中間。量の調節がとくに必要なのでやや上級者向け。
鶏糞堆肥
濃厚飼料をたべている鶏の糞なので、肥料分がかなり多め(化成肥料なみ)。即効性があり、上級者向け。
無機質土壌改良材
ここまで紹介してきた堆肥は、有機質から作られた改良材。一方、無機質(鉱物ともいいます)から作られる改良材もあります。
石灰
「苦土石灰」「消石灰」「貝化石」など、もととなる鉱物の種類がいくつかあります。もっとも扱いやすい苦土石灰は、酸性土壌を中性に調整するのに活躍。
バーミキュライト
鉱石を高温加工して作る人工土。加工過程でできる無数の穴や空洞が特徴で、優れた保水性と通気性を両立したバランスのよい改良材。デメリットが殆どなく使いやすく、夏の暑さや冬の寒さ対策にもおすすめです!
パーライト
軽量で通気性・保水性に優れ、土壌を緩める効果。鉱石を高温処理し、粉状にしたもので多孔質。保水性や通気性のバランスを調整したい時の使用がおすすめです。
目的別おすすめ土壌改良材の種類
まとめると以下のようになります。
- 排水性・通気性が悪い場合は‥ 牛ふん堆肥、腐葉土、ピートモス、もみ殻、もみ殻くん炭、パーライト、バーミキュライト、バーク堆肥
- 保水性・保肥性が悪い場合は‥牛ふん堆肥、腐葉土、ピートモス、パーライト、バーミキュライト
- 土壌pHを上げたい場合は‥ピートモス、苦土石灰、消石灰、もみ殻くん炭
いま注目したい 土壌改良材
環境にやさしい土壌改良材の選択
最後に、環境にやさしい土壌改良材として注目されているものを紹介します。劇的な変化を求める方には向いていませんが、長期的に使用するのにはどれもおすすめです!
バイオチャーコール
植物由来の原料を高温で加熱して作る炭素固体。二酸化炭素の吸収と貯留を促進し、肥沃な土壌を作ります。植物由来なので、再生可能で環境に優しいですね。
有機質の堆肥
野菜くずや植物の残さを堆肥化して作ります。再生可能な原料を再利用し、肥沃な土壌を作るため、化学肥料の使用を減らすことができます。
微生物資材
土壌内の微生物を調整し、植物の栄養利用効率を向上させます。化学肥料の削減に寄与し、環境への負荷を減らすことが出来ます。
石灰質土壌改良材
石灰を主成分とする土壌改良材。土壌の適切なpHを保つことで、植物が栄養を効果的に吸収しやすくなり、環境への影響を抑えることができます。
これらの土壌改良材は、環境への影響を最小限に抑えつつ、土壌の健康を向上させるために活用されており、導入が進んでいます。
おわりに
今回は土壌改良材の種類を紹介しました。「土壌改良材」っていろいろあって難しそう‥というイメージがあったかもしれませんが、人間が健康な生活のために運動や食事をするのと同じように、土壌改良は土壌の健康を守るために重要です。
本記事を参考にして、扱いやすいものから挑戦してみてください!