土壌の健康を測る指標!「EC」とは?
土壌の「EC」とは
ECとは、「電気伝導度」のこと
- 「EC」とは土壌中の肥料濃度を測る目安になる指標。土壌の化学的特性の一つであり、"Electric Conductivity"(電気伝導度)の略です。
- このECが高い値の土壌は、土壌中に多くの栄養素が存在し、逆に低い土壌は栄養素の濃度が低いということになります。土壌のECの値が適切になるように、施肥する量を調整することで、作物の生育をコントロールすることが出来るのです。
- ちなみによく似た言葉として、「CEC」があります。CEC(cation exchange capacity)は陽イオン交換容量のことを言い、土壌の特性を示す別の指標です。
土壌中のECのしくみと重要性
肥料中の栄養素は、土壌中で「イオン」になる
肥料には様々な栄養素が含まれます。これらの栄養素は、土壌中の水分に溶けることで、「イオン」という形態の物質になります(塩類と呼ぶこともあります)。イオンには、プラスの電荷を持つイオン(‥陽イオン)またはマイナスの電荷を持つイオン(‥陰イオン) があります。
栄養素ごとにどのようなイオンになるかは決まっており、陽イオンで存在する主要な栄養素は、カルシウムやカリウム、マグネシウムなど。一方、陰イオンとして存在する主要な栄養素は、窒素やリン、硫黄などがあります。
ECは「土壌の肥沃度」を示す大事な指標
このように、土壌中には多種多様なイオンが存在します。また、これらのイオンはプラスまたはマイナスの電気をもつので、電気を通すことが出来ます。
EC(電気伝導度)は土壌中の電気の通りやすさをあらわす値であり、このような土壌中にある様々なイオンの濃度の合計の量をあらわしたものなのです!つまり、ECは「土壌中の肥料の総量」をあらわしています。
イオン(肥料)の量が多いと電気が伝わりやすくなり、ECの値は大きくなり、イオン(肥料)の量が少ないとECの値が小さくなります。
まとめると、ECの値をみることで、以下のことが可能になります。
- 栄養素や肥料を最適なバランスで植物に供給できる
- 土壌中のイオンのバランスを保つので環境保全も出来る
EC の測定方法と適正値!
では実際にECを測定するにはどうしたらよいでしょうか。
測定方法と理解のポイント
ECを測定するには、2種類の方法があります。
土壌の上澄み液を測定
土壌を採取し、蒸留水と混ぜ合わせて作る「上澄み液」をもちいて測定する方法。上澄み液を十分に撹拌しながら測定を進めていくので非常に信頼性が高いというメリットがあります。一方、時間や手間がかかるのがデメリットです。
土壌を直接測定
畑の土壌に直接測定器を突き刺すタイプです。手間や時間がかからないのが最大のメリット!一方、上澄み液の測定よりも精度は劣りますが、測定箇所や頻度を複数回行うことで信頼できる値を得ることが可能です!
ECの大きさは電気の通りやすさを意味する mS/cm(ミリジーメンスと読みます)という単位で表されます。
適正なECはいくつ?もし過剰や不足だったらどうなる?
土壌中に肥料が多いか少ないかの目安となるEC値ですが、小さすぎると植物は健康に育ちません。しかし、大きければよいというものでもありません。
植物にとって「0.2~0.4 mS/cm」の範囲内が生育に適します。
また、0.8 mS/cm以上では濃度障害などの悪影響があらわれます。特に葉菜類はEC 1.0~1.5を超えると生育が悪くなってしまいます。
ECの値が高いと肥料焼けを起こし、根が枯れてしまい、水分を吸収できなくなってしまうなどの問題が起こることがあるので注意が必要です。
ECを測定したあとは
ECの改良をしよう
ECの値を得ることが出来たら、その結果をもとに土壌改良をおこなってみましょう。ECは「土壌水分に栄養素が溶けている濃度」によって決まるので、肥料や土壌水分をコントロールすることでECの値を改善できます。
肥料の量や土壌水分をコントロール
肥料の量を以下のように調整するとよいでしょう。
- 《施肥前の EC が 0.3 以下の場合》基準の施肥量でOK
- 《施肥前の EC が 0.4~0.7 の場合》基準の施肥量の 2/3
- 《施肥前の EC が 0.8~1.2 の場合 》基準の施肥量の 1/2
- 《施肥前の EC が 1.3~1.5 の場合 》基準の施肥量の 1/3
- 《施肥前の EC が 1.6 以上の場合 》施肥なし
また、土壌水分を増やすことで、溶けている栄養素の濃度が下がるので、こちらもEC値を下げるのには有効な方法です。
つまりECの値をもとに施肥を行うことで、以下のようなメリットがあるのです!
- 塩害を予防できる
- 水に利用効率が上がる
土壌の種類でコントロール
一般的に表層の土はECが高くなりやすく、下層の土は低くなりやすいことを利用して、天地返しをおこなうことでEC値を希釈することが出来るでしょう。
さらに、土壌改良材やECの低い土を混ぜ合わせるのもおすすめです。
土壌の健康を守ることが環境保全の第一歩
土壌の健康と環境保全は密接に関連しています。
土壌の健康を守るためには、適切な土壌管理、有機物の適切な利用、適切な栄養素の供給などが重要です。
適切なECを維持することは、肥料の効率的な利用や過剰施肥の防止につながります。そのため、これは地球環境への負荷を減らす重要な手段であり、環境保全の立派な第一歩と言えるでしょう。
おわりに
本記事では土壌のECについてご紹介しました。土壌のECって何のことだか分からないし難しそう‥というイメージのを持っていた方も、より良い土壌を作るためにECの値を測ってみて、土壌改良に挑戦してみてください!