土壌の基本知識
土壌断面調査とは?
土壌断面調査とは、土壌を深めに掘ることで、土壌の構造、特性などを把握する方法のこと。
農業にとって、土壌の健康は作物の健康に直結するため非常に重要です。
土壌の状態を調べる方法として、ほかには「土壌診断」も有名です。土壌診断では、化学的な反応をもちいて土壌全体の栄養成分、水はけや保水力、微生物の活動などを調べます。
土壌断面から分かる構造や特性は、これらの特性と密接に関係しています。
このように、土壌診断と土壌断面調査ではアプローチが大きく異なるといえます。そのためどちらか一方でもかまいませんが、両方に取り組むことで、より詳細なことが分かってくるかもしれません。
そもそも土壌の役割って?土を調べることがそんなに重要なのか?
土壌は地球上の生態系において、以下のような非常に重要な役割を果たしています。
- 作物に必要な栄養を提供する。
- 適切な水分を保持し、作物に供給する。
- 作物の根が成長する基盤となる土壌構造を提供する。
- 多様な生物が生息する場所であり、生態系を支える。
- 二酸化炭素の吸収と貯蔵に寄与し、気候変動への対策に役立つ。
これらの役割は、農業において作物の成長や収量、環境保護などに直接影響を与える重要な要素となります。
土壌断面調査の基礎知識。土壌断面の層位と土性について
層位って?
土壌断面調査のやり方を紹介する前に、「土壌層位」について紹介しておきます。
土壌は、異なる特徴をもった、いくつかの層の積み重ねから出来ています。このように、「土色」「土性」「硬さ」「植物根の分布」「土壌構造」などの観点から見た目で識別出来る層を層位とよびます。
層位は以下の二種類。
堆積有機物層
地表近くにあり、落葉・落枝などの植物・動物の腐敗物が重なり出来上がった層
鉱質土壌
有機物層の下に存在する、無機質の層。
土性って?
「土性」は、粘土と砂の混ざり具合のことで、大きく以下の5種類に分類されます。
砂土(さど)
砂粒子が主体の土壌で、水はけがよく、温暖な地域で多く見られます。保水性が低いため、肥料や水の供給が重要です。
砂壌土(さじょうど)
砂土と壌土の中間。
壌土(じょうど)
砂と粘土が半々で含まれており、保水性・水はけのバランスが良いです。そのため「土壌団粒」構造が発達しやすいです。農業をおこなうのにもっとも優れている土壌といえます。
埴壌土(しょくじょうど)
壌土と埴土の中間
埴土(しょくど)
粘土粒子が多く含まれる土壌で、保水性が高く肥沃ですが、水はけが悪い特徴があります。
土壌断面調査のやりかた!
それでは、土壌断面調査に取り組む手順を紹介していきます!
必要な道具は簡単
以下の6つを用意しましょう!
- スコップ
- 移植ごて
- メジャー
- 土壌断面調査表
- 筆記用具
- カメラ
実践!土壌断面調査
1.50cm~60cm角の穴(試杭、ピット)を掘ります。
固すぎて掘れない場合は掘れるところまででOK
もっと掘らないといけないのでは?という方もいらっしゃるかもしれません。1m掘るという方法もありますが、50cm程度でもだいたいを理解するのには十分なのです。
2.日光のあたる面を観察する「観察面」は綺麗に仕上げます。
移植ゴテを左右水平に動かすことで出来上がります。
観察をおこなう面は非常に重要なので丁寧におこないましょう。
3.有効土壌(耕作土に使用できる土壌)の厚さを測定します。
断面を触って土の固さを確認すると、あるところで急に硬くなり、色も変わります。
このとき、根の分布もチェックしてスケッチしましょう。
4.土の硬さを確認します。
指で押さえて判断することが可能です。
5.排水性を確認します。
根腐れのような臭いにおいがしないか、根腐れを起こしたとき特有のどす黒い黒褐色の根がないかを確認します。
6.土性を確認します。
砂土、砂壌土、壌土、埴壌土、埴土、の違いを親指と人差し指で土をこすり合わせることで土の特性を確認できます。
- 砂土 粘り気なし
- 砂壌土 根り気わずか
- 壌土 ある程度粘り気あり。
- 埴壌土 かなり粘り気あり。
- 埴土 つるつるする。
7.土色を確認します。
「標準土色帳」を使用し、色を比較します。
おわりに
本記事では土壌断面調査についてご紹介しました。なんだか大げさな準備、作業が必要なのでは?と思っていた方もいらっしゃると思いますが、意外と簡単だとお分かりいただけたでしょうか?
作物の収量や質をあげるために、土壌断面調査をぜひ取り入れていただけたら幸いです!!