土壌の健康を測る指標!「CEC」とは?
土壌の「CEC」とは
CECとは、「陽イオン交換容量」のこと
「CEC」とは土壌の保肥性の目安になる指標。土壌の化学的特性の一つであり、"cation exchange capacity"(陽イオン交換容量)の略です。
このCECが高い値の土壌は、多くの栄養素を保持し、植物の成長に良い影響を与えます。逆に、低い土壌は栄養素の保持能力が低く、植物への栄養供給が難しくなります。土壌のCECは土壌の種類や組成によって異なり、肥料の選ぶ際や土壌改良をおこなう際に注目するべき指標の一つです。
ちなみによく似た言葉として、「EC」があります。EC(Electric Conductivity)は電気伝導度のことを言い、土壌の特性を示す別の指標です。
土壌の保肥性のしくみ!CECの重要性
土壌中の粘土が栄養素と結合する
土壌には、多くの「鉱物」が含まれ、砂、シルト、粘土の3種類に大きく分類されます。
なかでも粘土には、土壌が栄養を保持する「養分吸着機能」(=保肥性)があり、農業において重要です!
粘土はその成分の特性上、マイナス(‥陰イオン) の電荷をもっており、プラスの電荷(‥陽イオン) を持つ養分を引き寄せることが出来るのです。
陽イオンで存在する主要な栄養素は、カルシウムやカリウム、マグネシウムなど。ちなみに、陰イオンとして存在する窒素やリン、硫黄などは、陽イオン交換反応は介さず、土壌中に水溶液として存在することで最終的には作物に吸収されます。
CECは土壌の肥沃度を示す大事な指標
高いCECを持つ土壌は、多くの陽イオンを保持する能力があります。つまり、土壌が栄養素を効率的に保持し、植物が必要とする栄養素を適切なタイミングで供給できるのです。
まとめると、CECの値をみることで、以下のことが可能になります。
- 栄養素や肥料を効率的に利用できる
- 土壌改良材の選定に役立つ
- 土壌中のイオンのバランスを保つので環境保全も出来る
CEC の測定方法と適正値!
では実際にCECを測定するにはどうしたらよいでしょうか。
測定方法と理解のポイント
CECは、ショーレンベルガー法という方法で測定することが出来ますが、これは時間がかかるうえ特定の器具が必要です。
そこで簡易分析として土壌分析キットなどが販売されているので、まずはそちらを検討してみるのがおすすめです!
CECの大きさは、乾いた土100gあたりに保持することのできる陽イオンの数で示されます。単位はmeq/100g(ミリグラム当たりのミリエクイバレントと読みます)で表されます。
数字が大きいほど多くの陽イオンを保持できる土壌であると分かります!
また、確認していただきたいのが「塩基飽和度」です。
塩基飽和度とは、CECは陽イオンを保持できる能力を示しますが、そのうち実際にどれくらいの割合(%)で陽イオン(‥塩基)を保持しているかを表す指標です。
人間に例えると、CECは胃袋の大きさを表し、塩基飽和度は胃袋内にどれだけ食べ物が存在するか、つまり満腹度合いを示します。
適正なCECと塩基飽和度は?
CEC
適性値は20~30と言われています。
といってもCECが低い場合にはいきなり適性値にもっていくのは難しいかもしれません。
その場合は、改善目標として
- 水田 12~15meq以上
- 普通畑 12~15meq以上
- 果樹園 12~15meq以上
という数値を参考にしてみてください!
塩基飽和度
一般的な塩基飽和度は、70~80%あれば十分です。しかしCECが低い土壌では、塩基飽和度を100%に保つように追肥を行わなければ、肥料が不足してしまうでしょう。より詳細には、
- CEC = 20me 以上なら、75~80%
- CEC = 10me 以下なら、100%以上
のように判断するとよいでしょう。
CECを測定したあとは
土壌改良をしよう
CECと塩基飽和度の値を得ることが出来たら、その結果をもとに土壌をコントロールしてみましょう。土壌改良材によってCECを、肥料によって塩基飽和度を、それぞれコントロールできます。
CEC
CEC は土壌中の粘土の種類や量により決まっているため、その値を改良するのは簡単ではありません。堆肥などの有機物、腐植酸質資材やゼオライト、ベントナイト といった土壌改良資材を均一に使用することで ある程度CEC を高めることができます。
土壌改良についてより詳しく知りたい方はコチラの記事をどうぞ。
塩基飽和度
塩基には数種類があり、主要なのは「石灰(Ca)・苦土(Mg)・加里(K)」の3種類です。この3種類の飽和度の値を合計した値が塩基飽和度です。
これらの塩基のバランスが良く、かつ適切な量の肥料を施肥するようにします。理想の塩基バランスは順に、5:2:1 とされています。つまり、 それぞれの飽和度が石灰50~60%、苦土15~20%、加里3~6%の範囲になるように調整するとよいでしょう。
土壌の健康を守ることが環境保全の第一歩
土壌の健康と環境保全は密接に関連しています。
土壌の健康を守るためには、適切な土壌管理、有機物の適切な利用、適切な栄養素の供給などが重要です。
適切なCECを維持することは、肥料の効率的な利用や過剰施肥の防止につながります。そのため、これは地球環境への負荷を減らす重要な手段であり、環境保全の立派な第一歩と言えるでしょう。
おわりに
本記事では土壌のCECについてご紹介しました。土壌のCECって何のことだか分からないし難しそう‥というイメージのを持っていた方も、より良い土壌を作るためにCECの値を測ってみて、土壌改良に挑戦してみてください!