土壌の健康を測る指標!「土壌養分分析」とは?
土壌養分分析とは?「土壌診断」との違い
- 農業で作物をより健康に育てるために、土壌の栄養成分などを調べることを土壌養分分析といいます。
- 土壌中の主要な栄養素(窒素N、リンP、カリウムKなど)の含有量やpHなどを測定します。これにより、植物が必要とする栄養分が適切に供給され、肥料の適切な配合が可能になります。また、余分な栄養分を避け、土壌改良や育て方の最適化に貢献します。
- 土壌養分分析は土壌診断の一部であるといえます。
- 土壌診断は、化学性診断、物理性診断、生物性診断に分類されますが、そのなかの化学性診断に特化した分析が土壌養分分析と呼ばれています。
- つまり、土壌養分分析は土壌中の栄養分の量を詳細に分析して把握するのに対し、土壌診断は栄養分以外にも、水はけや保水力、微生物の活動など土壌全体の状態や特性を総合的に評価します。
土壌養分分析の重要性! なぜやった方がいいの?
土壌養分分析をおこなわないとどうなるのでしょうか。
作物は、土壌中の栄養素や土壌状態によって大きく生育が異なってきます。作物にとってのぞましくない土壌状態で放置されてしまうと、作物は育たなくなってしまいます。
分からない状態のまま、肥料の量が不足していた場合、作物は病気にかかってしまいます。一方、肥料を与えすぎた場合は肥料の費用がかかるだけでなく、作物が病気にかかりやすくなったり、環境への負荷がかかったりしてしまいます。
土壌養分分析をおこなうことで、作物の栄養状態や土壌の状態を把握することが出来ます。現在の状態が分かれば、与えるべき肥料の種類や量が分かりますね。
土壌診断の種類と項目
土壌養分分析の項目
土壌養分分析で計測する項目は多岐に渡ります。
主要な項目としては下記のものが代表的です。
(1) pH
- 土壌の酸性度
- 土壌中の栄養素はイオンとして土壌中に存在しています。これらのイオンが土壌中に溶けるかどうかを決定づけるものがpHであるため、pHは土壌中の肥料の利用可能な量を示すであるといえます。
(2) 陽イオン交換容量(CEC)
- 土壌養分保持能力の指標
- CECは、土壌が栄養素と結合できる能力を示す指標。このCECが高い値の土壌は、多くの栄養素を保持し、植物の成長に良い影響を与えます。逆に、低い土壌は栄養素の保持能力が低く、植物への栄養供給が難しくなります。
(3) 電気伝導度(EC)
- 土壌の塩類濃度の推定
- ECとは土壌中の肥料濃度を測る目安になる指標。このECが高い値の土壌は、土壌中に多くの栄養素が存在し、逆に低い土壌は栄養素の濃度が低いということになります。
(4) 全炭素(C)
- 土壌中にふくまれる有機物の量の指標
- 有機物には炭素がふくまれます。そのため炭素を測定すれば有機物の量がわかります。土壌中の有機物は、栄養素の供給源となっています。
(5) 全窒素(N)
- 土壌中にふくまれる窒素の量
- 窒素は、植物の成長と葉の緑色を保つのに重要な役割を果たします。 葉や茎などの植物体を構成するたんぱく質や核酸、葉緑素の合成に必要です。不足すると、葉が淡黄色となり、植物全体に元気がなくなります。
(6) C/N比
- 土壌中の有機物の質の指標
- C/N比の値が低いほど窒素含有量が多く、値が高いほど窒素含有量が少なくなります。C/N比が低い(C/N比が20以下)ときには、有機物の分解がすすみやすく、植物は有機物、窒素を吸収しやすい状態。一方、C/N比が高いとき(C/N比が20以上)には、微生物が窒素を活発に吸収し「窒素飢餓」が怒りやすい状態なので注意します。
(7) 交換性カリウム
- 植物が利用できるカリウムの量
- カリウムは、植物の生長、花芽・果実の形成、耐病性の向上などに関与し、酵素活性の維持や水分バランスの調節に重要です。不足すると古い葉の先端が黄化し、根は主根付近のみに形成され、側方の根の生長が制限されます。
(8) 交換性カルシウム
- 植物が利用できるカルシウムの量
- カルシウムは、根の成長や果実の形成にも影響を与えます。植物の細胞壁の構成要素であり、細胞分裂や構造、機能の維持に重要です。不足すると、生長の盛んな若い葉の先端が白化し、やがて褐色枯死します。
(9) 交換性マグネシウム
- 植物が利用できるマグネシウムの量
- マグネシウムは、葉緑素の構成要素であり、光合成や酵素活性に関与し、植物の光合成、呼吸、エネルギー移動に影響を与えます。不足すると、果実付近の葉が黄化します。葉脈間がイネ科植物では筋状に、広葉植物では網目状の黄化が生じます。
もし分からない単語がある場合は、リンク先でより詳しく各項目のことを紹介していますのでぜひご覧ください!
土壌養分分析のやり方!
土壌養分分析には大きく分けて二つの方法があります。それぞれのメリットやデメリットを紹介していきます。
専門業者へ依頼する方法
メリット
- 専門的なアドバイスがもらえる
- より詳細で精度の良い分析が可能
デメリット
- サンプルを送付する手間がある
- コストがかかり、結果が返ってくるまで時間を要する
キットを使用する方法
メリット
コストをおさえて、手軽にすぐできる
デメリット
ある程度知識がないと、結果を最大限活用できない可能性がある(ある程度の知識があれば問題ありません!)
おわりに
本記事では土壌養分分析の重要性や方法についてご紹介しました。専門的で難しそうにも思えますが、一度項目ごとの意味を覚えてしまえば意外とシンプル。土壌養分関谷土壌診断をおこない、より良い土壌づくりに挑戦してみてください!