肥料の基本知識! 肥料に含まれる栄養素は?
肥料の基本知識! 肥料に含まれる栄養素は?
肥料とは、植物の栄養不足を補い、生育を促進するために使用される物質です。農業の現場でよく使用されています。
具体的には、肥料に含まれる主な栄養素はN(窒素)、P(リン酸)、K(カリ)です。これらが適切な割合で配合されたものが肥料です。
よく混同される言葉として「堆肥」「土壌改良材」などの言葉があります。肥料と土壌改良材の共通点は両方土壌に混ぜて使用するという使用方法です。肥料は栄養素を供給する物質であるのに対し、土壌改良材は土の状態や特性をよくする(保水力を高めるなど)物質であり、役割は全く異なります。
一般的に、作物を植え付ける前に、土壌改良材の効果が効いてきてから、肥料を使うようにします。
肥料の三要素 N・P・K それぞれが植物の成長に与える影響
次に、N(窒素)、P(リン酸)、K(カリ)の役割と重要性について学んでいきましょう。そうすることでN、P、Kの適切な割合の決める方法について理解を進めることが可能です!
それぞれの役割、植物の成長に与える影響は以下の通りです。
N (窒素):「葉肥(はごえ)」
茎や葉の生育を促します。光合成に必要な葉緑体や、植物の体をつくるタンパク質の合成に必要。
欠乏時には葉・葉脈が黄化してしまいます。過剰時は、生育全体が盛んになったり、生長点の異常分裂が引き起こされたりします。その結果、花芽分化の遅延や根の異常な枝分かれなどの症状に。
P (リン酸):「実肥(みごえ)」
根の成長を促し、果菜類では花つき、実つきを促進。
欠乏時には、古い葉から黄化しますが、過剰症状は発生しづらいです。
K (カリ):「根肥(ねごえ)」
植物体内で、葉で作られた炭水化物を根に送って根の生育を促進したり、病気に対する抵抗性を高めたりします。
欠乏時には、古い葉から黄化しますが、過剰症状は発生しづらいです。
NPKを合わせて「肥料の三要素」と呼びます。また、それぞれの栄養素が効く部位として、語呂合わせで「葉果根(バカね)」と覚えるのも良いですね。
肥料の基本がお分かりいただけたでしょうか? 次項では、植物・作物に必要な成分に合わせて、適切な肥料を選択する方法についてご紹介します!
植物に合わせた肥料の選び方
作物ごとの肥料の三要素の配合
単一の栄養素から成る「単肥」もありますが、バランスよく配合された「化成肥料」もあります。どちらにせよ、それぞれの栄養素を適切な量・割合で施肥することが重要です。
一般的に化成肥料にはそれぞれの栄養素が含まれる割合(%) で表示されています。例えば、「8-12-8」のように表記されていたら、肥料100g中に「窒素 8g, リン酸 12g, カリ8g」が含まれているのです!
作物の種類によって、各栄養素の適した施肥量(g/m²)があります。例をいくつかご紹介します。
果菜類
- トマト・ナス 25-30-25
- キュウリ 25-25-20
根菜類
- ニンジン 20-25-20
- ダイコン 20-20-15
葉菜類
- ホウレンソウ・ネギ 20-15-15
- ハクサイ・キャベツ・ブロッコリー 25-25-20
あとは必要な栄養素を適切な割合・量で化成肥料を施せばOK です!
※もし栄養素の割合の関係で不足する栄養素がある場合には単肥でカバーしましょう。
肥料の三要素の配合の決め方
肥料の三要素の配合が異なることは分かったけれど、いちいち調べるのがたいへん!という方もいると思います。そんな方のために次は、配合の決め方を紹介します。
化成肥料に含まれるN・P・Kの割合のバランスは以下の5種類があり、それぞれに向いている用途や野菜の例を紹介します。
全部同じ割合の水平型 N = P = K
あらゆる植物に使用可能。株を充実させる時期に向いている。
Pだけ少ない谷型 N > P < K
水に流されやすいN、Kが多く含まれるので効率重視の農業用追肥に向いている。
Pだけ多い山型 N < P > K
花や実着きをよくするPが多く含まれるので、果樹や果菜類
順に少なくなる下がり型 N > P > K
葉を充実させる窒素が多く含まれるので、葉菜類
順に多くなる上がり型 N < P < K
根を充実させるカリが多く含まれるので、根菜類
植物に合わせた肥料の効果的な使用方法
肥料をえらべたら、次は適切なタイミングで施す必要があります!
使用法やタイミングの話に移る前に、肥料の種類について紹介します。
肥料の種類
使用のタイミングによる分類
元肥
植物植え付けのまえに、土壌に必要な栄養素を補充するために施される肥料。
追肥
植物が成長している途中(生育期や開花期等)に、植物の成長段階に応じた栄養素補給をするために施される肥料。
効果の持続性による分類
緩効性肥料
効果がすぐに現れるわけではないけれども持続的で、長期間にわたって栄養を供給します。
速効性肥料
すぐに植物に効果が現れ、成長を促進。その一方で効果の持続する期間は短いです。
肥料を使用する適切なタイミング
それでは、植物の種類や成長段階に合わせた、肥料を施す正しいタイミング、使用法について紹介していきます!
作物ごとの生育パターンによって、元肥と追肥のバランスを変える必要があります。そこで次は、生育パターンを確認していきましょう。生育パターンは作物の種類によって異なり、大きく分類すると以下の3種類に分けられます。
- 生育初期に成長する「スタートダッシュ型」
- 生育期全体でバランスよく成長する「コンスタント型」
- 生育後期に成長する「ラストスパート型」
それぞれの生育パターンの作物に肥料を与えるときのポイントをご紹介します。
- のスタートダッシュ型では元肥を主体に施肥するのがよいでしょう。
- のコンスタント型では元肥は緩効性のものを使用し、追肥はこまめに施肥するのがよいでしょう。
- のラストスパート型では元肥は控えめにして、生育中期以降には追肥を施肥しましょう。
肥料の最近のトレンド
最近注目されているのが「有機肥料」です。
有機肥料は動植物を原料としており、肥料成分は化成肥料と比べて少なめです。発酵分解してから徐々に効いてくる「緩効性肥料」です。また、肥料の三要素以外の「微量要素」を豊富に含み、元肥として使うのに適しています。
さらに、最大の特徴が「土壌改良効果」です。はじめに肥料と土壌改良材は別物だと紹介しましたが、有機肥料は二役を果たすのです。
有機肥料によって、土壌中の有用微生物が活性化し、土の団粒化が進んだり、その結果、通気性・排水性・保水性・保肥性が改良できます!
肥料分がメインで、土壌改良効果は弱めの堆肥
家畜糞肥料
ウシ、ヒツジ、ヤギ、鶏などを堆肥化したもので、窒素、リン、有機物を供給。
鶏糞肥料
鶏の糞を乾燥・粉末化したもので、窒素やリンを多く含みます。
土壌改良効果が高く、肥料分は少なめの堆肥
バーク堆肥
木の皮やバークを原料とし、土壌の保水性を向上させるのに向いています。
腐葉土
腐敗した落ち葉や植物の残骸から作られ、土壌の保水性を向上させるのに適しています。
おわりに
本記事では肥料の三要素について理解を深め、実際にどんな肥料をどのように使用すべきかについてご紹介しました。充実した農業・園芸ライフの一助となれば幸いです。
また、適切なエコフレンドリーな肥料を選択することが出来れば、農業や園芸を長く楽しむことが可能になります。
ぜひ実践してみて、植物と共に心地よいひとときを楽しんでみましょう!