論文タイトル
Potential of Plant-Based Extracts to Alleviate Sorbitol-Induced Osmotic Stress in Cabbage Seedlings
(キャベツへの植物抽出物処理によるソルビトール誘導性浸透圧ストレスの緩和)
著者と所属
Michał Pacyga¹, Katarzyna Hrynkiewicz², Magdalena Frąc³, Tomasz Szczerba⁴, Małgorzata Jezierska-Tys³, Artur Sawicki¹
¹ Department of Agrotechnology, Agricultural Production Management and Agribusiness, University of Agriculture in Krakow, Poland
² Department of Microbiology, Institute of Biology, University of Nicolaus Copernicus in Torun, Poland
³ Department of Environmental Microbiology and Biotechnology, Institute of Agrophysics, Polish Academy of Sciences, Lublin, Poland
⁴ Department of Vegetable Crops and Medicinal Plants, Institute of Horticultural Sciences, University of Life Sciences in Lublin, Poland
発表雑誌
Plants 2024, 13, 843. https://doi.org/10.3390/plants13060843
論文の内容
近年、地球規模での気候変動が激しくなっている中、作物の非生物的ストレス耐性を高めることは重要な課題です。「浸透圧ストレス」は、干ばつや塩害などによって引き起こされ、作物の成長や収量を大きく損なう要因の一つであることが知られています。本研究論文では、キャベツの幼苗に糖アルコールの1種であるソルビトールを処理することで浸透圧ストレスを誘発し、浸透圧ストレスに対して植物由来の抽出物の処理が与える影響について多面的な評価をしていました。原料となる植物によって抽出物の処理効果は異なりましたが、基本的に地上部と地下部の生長を促進し、生重量が重くなるといったいわゆる成長にプラスとなる効果が得られました。また、ソルビトール誘導の浸透圧ストレスによる生長の悪化、光合成色素や総フェノール化合物の含有量ならびに抗酸化活性の低下は、程度は異なりますが、植物抽出物の処理により緩和されました。
特に、著者らはヒレハリソウの根由来の抽出物(So R)に着目し、So R処理時におけるキャベツ幼苗の遺伝子発現の変動についてRNA-seq解析で調べました。So R処理区では、光合成やストレス応答(熱ショックタンパク質やグルタチオンS-トランスフェラーゼなど)に関連した遺伝子の発現が抑制される一方、成長調節に関連した遺伝子の発現は上昇していました。この結果は、So Rが過剰なストレス応答を緩和しつつ、成長を促進するような遺伝子制御を促している可能性を示唆しています。
これまで、バイオスティミュラントとしてのメカニズム解明に関する研究は主に海藻抽出物に集中しており、植物抽出物を対象とした詳細な解析は限られています。本研究は、So Rを含む複数の植物抽出物について、形態・生化学・遺伝子発現の3段階でストレス緩和効果を評価した点で、植物抽出物の作用機構解明に向けた貴重な先行事例と位置づけられます。
研究者視点のコメント
この研究の興味深い点は、雑草や未利用資源がストレス緩和に役立つ植物資材に転用できる可能性を、多角的評価を通じて示したことにあります。
So Rのような根抽出物が、浸透圧ストレスを緩和し、光合成の保護、抗酸化活性の維持といった多面的な効果を発揮することは注目に値します。
本論文では、ヒレハリソウの根由来の抽出物の他に、セイヨウカノコソウの根由来の抽出物、セイヨウサクラ、オオアワダチソウセイヨウタンポポの葉由来の抽出物、セイヨウタンポポ、ムラサキツメクサの花由来の抽出物、エンドウ豆、レンズ豆の抽出物、およびセイヨウオトギリの抽出物、といったヨーロッパに自生する雑草や豆類などからの抽出物の効果を観察しています。
それらの効果の度合いは抽出物ごとに違ったことから、抽出物に含まれている共通成分または特異成分を比較することで、浸透圧ストレスの緩和や生長の促進に重要である成分の同定につながるかもしれません。