マルチとは
野菜栽培に適した土の状態をつくるために、プラスチックのフィルムといった資材で畝を覆うことを「マルチング」と言い、その資材を「マルチ」と呼びます。「マルチ」が一般的な呼称ですが、「マルチングフィルム」や「マルチフィルム」と呼ぶ人もいます。
マルチには様々な効果があり、マルチングはおいしい野菜をたくさん収穫するために必須の作業です。ひと手間を惜しまずに野菜が育ちやすい環境を作りましょう。
マルチの幅と長さ
マルチの幅は95cmのものと135cmのものが代表的です。つくる畝の幅より20cm~25cm以上長いものを使いましょう。短いものを使うとマルチを固定しにくくなり、風ではがれてしまうことがあります。
マルチの長さは50m刻みで販売されていることが多いです。使いきれないときは次年度以降にまわすことも可能です。また、10mほどの使い切りサイズのマルチも売っていることがあり、家庭菜園のように使う量が少なく保管する場所もないという場合には便利です。
マルチの効果
地温の上昇
マルチによって、太陽の光で温められた地面の熱を保持することができます。冬や春先の寒い時期に透明なマルチを使用すると、地温が上昇し、野菜の生育が早くなります。また、温度の急激な変化をやわらげる効果もあります。夏場は温度が上がりすぎると困るので、太陽光を通さない黒色や白色のマルチを使うことで地温が上がらないようにします。
太陽熱消毒
透明のマルチで野菜を植える前の畝を覆うと、太陽光で土の温度が上がり、害虫や病原菌を蒸し殺すことができます。薬剤よりも安価で済むことが多く、土壌の団粒化も期待できるため、消毒方法としては効果的です。
雑草の抑制
太陽の光を通さないマルチを使い、光が届かないようにすることで、雑草が生えるのを防ぎます。野菜のまわりに雑草が生えて困っている場合には効果的です。
乾燥の防止
土の表面から水分が蒸発していくのをマルチが抑えているので、土が保湿された状態になります。夏に天気がよい日が続く場合でも、土が適度に湿った状態に保たれるため、水やりの頻度を減らすことができます。
病気の予防
雨が上がった時に野菜の根元の茎に土がついていることがあります。こうした雨や水やりによる「泥はね」をマルチで防止します。
土の中には病気を引き起こす菌類やウイルスがたくさんいます。それらの病原菌が「泥はね」によって葉や実について病気が起こることがあります。マルチをするとそういった病気の発生を防ぐことができます。
土壌の硬化・流亡の防止
雨粒が地面に当たると、その衝撃で土は少しずつ硬くなっていきます。まさに「雨降って地固まる」ですが、マルチをかけると土がやわらかく保たれて野菜の根が伸びやすい状態が維持されます。
また、土が雨で流れて畝が崩れたり、まいた肥料が溶け出たりすることを防ぐことができます。
マルチのデメリット
上記のようによい効果が目白押しなマルチですが、いくつかデメリットもあります。まず、マルチを張る作業が必要で、広い面積を行う場合にはお金や労力が必要になります。次に、土寄せ・追肥が行いにくく、芋類などの栽培にはあまり向きません。最後に、後片付けが大変です。マルチは使用後はきれいにはがしてゴミに捨てなければいけません。
マルチの色
よく使われるマルチは黒色ですが、ほかにも様々な色があります。色に応じて太陽の光をどれくらい通すかが変わり、雑草抑制と地温上昇の効果の度合いが違ってきます。育てる野菜に応じて適したマルチを使いましょう。
黒マルチ
最も一般的なマルチです。太陽の光を通さないため、雑草の抑制に効果があります。また、マルチ自体は熱くなりますが、土の温度上昇は防ぐことができます。
白マルチ
白マルチは、太陽光をよく反射するため、地温上昇を防止する効果が黒マルチよりも高いと言われています。夏場に野菜を栽培する際にに使われます。
シルバーマルチ
害虫は銀色の反射光を嫌うため、防虫対策としての効果があります。また、反射光によって実の色づきがよくなるといった効果もあります。製品にもよりますが、光の透過率が高いため、雑草の抑制効果は低い場合があります。
透明マルチ
太陽の光は通しますが、熱は通さない性質を利用し、地温を上げるために使います。しかし、その分雑草は生えてきてしまいます。春先の植え付け時に利用します。
グリーンマルチ
黒色マルチと透明マルチの中間的な性質を持ちます。太陽光を過不足なく取り入れることができ、地温上昇と雑草抑制の両方に効果があります。
特長をもったマルチ
生分解性マルチ
マルチは後片付けやゴミの発生が問題となりますが、生分解性マルチを使用すればそのまま土にすき込むことができます。環境にやさしい製品ですが、価格が高かったり耐久性に優れていなかったりするため、あまり好まれてはいません。
紙マルチ
あまり普及はしていませんが、紙を利用したマルチです。生分解性マルチと同じく、土にすき込んでも分解されるため後片付けがいりません。紙の性質を利用しており、保温・保湿性や雑草抑制に優れていますが、耐久性や価格面で劣ります。
穴あきマルチ
植え付けのための穴が開いているマルチです。植え付け時の省力化が期待できます。しかし、家庭菜園のように多様な野菜を育てる場合には野菜ごとに株間が違うことが多いため、あまり役に立ちません。価格も普通のマルチより少し高いため、自分でマルチに穴を開けるのがよいでしょう。
有機物マルチ
現在はプラスチックのマルチが普及していますが、昔は自然素材で覆うのが一般的でした。代表的なものとして、稲のわらを使った敷き藁があります。プラスチックのマルチと違って密閉されないため夏場でも温度が上昇しませんが、雑草抑制や「泥はね」防止に効果があります。また、カボチャやスイカなどの巻きひげが巻きつく場所にもなります。有機物マルチには他にも、もみ殻マルチや刈った雑草を置く雑草マルチといったものもあります。
最後に
今回はマルチの種類について解説してきました。様々な種類がありましたが、基本的には黒色のマルチを使えば大丈夫です。特別な色や性質をもったマルチを使う場合には、それぞれの野菜の育て方を参照するようにしましょう。
マルチを入手したら、本サイトのマルチのはり方も参考にして早速マルチをはっていきましょう。