農業用ドローンを飛ばすために必要な資格
まずは、農業用ドローンを飛ばすために必要な資格の種類について紹介します。
無人航空機操縦技能証明(ドローンオペレーター資格)
農業用ドローンを飛ばすには、国土交通省から無人航空機操縦技能証明(ドローンオペレーター資格)の取得が義務付けられています。この資格は以下の2つの試験に合格する必要があります。
【無人航空機操縦技能証明試験内容】
- 学科試験:航空法規、無人航空機の運用に関する知識を問う筆記試験
- 実地試験:離着陸、飛行マニュアルに基づく飛行操作の実技試験
学科試験は都道府県により異なりますが、受験料は6,000円前後です。実地試験は指定の教習施設で受講し、別途40,000円程度の費用がかかります。
この資格を取得すれば、一般的な無人航空機(ドローン)の操縦は可能になりますが、農薬散布作業には更に専門的な技能認定が必要になります。
農薬散布作業に特化した技能認定
農業用ドローンで農薬散布を行う場合、無人航空機操縦技能証明(ドローンオペレーター資格)に加えて、農薬散布作業に特化した別途の技能認定が必要となります。
この技能認定は、以下の2つの区分に分かれています。
区分 | 概要 |
---|---|
無人ヘリコプター | 農薬散布用の無人ヘリコプターの飛行 |
無人多rotorロボット | 農薬散布用の無人多ローターロボットの飛行 |
無人ヘリコプターの認定を受けた方は、無人多ローターロボットでの散布も可能ですが、その逆は認められません。
技能認定の取得には、国土交通省航空局が指定する教習施設での講習と実技試験があり、合格後に認定を受けることができます。講習費用は施設によって異なりますが、5万円前後が目安です。
つまり、農薬散布を行うためには、ドローンオペレーター資格と農薬散布作業の技能認定の両方が必要になるということです。
資格取得の流れと費用
ここからは、資格取得の流れと費用について紹介します。
教習施設の選定
農業用ドローンの無人航空機操縦技能証明取得には、国土交通省が認定した教習施設での訓練が義務付けられています。選定に当たっては以下の点に留意しましょう。
- アクセス:自宅や事業所から通いやすい立地かどうかを確認しましょう。遠方の施設に通うと交通費がかさみます。
- 設備の充実度:屋内と屋外の両方の訓練環境があり、ドローンの実機練習ができることが理想的です。シミュレーターなど、安全で効率的な訓練が可能な設備が整っているかも重要です。
- カリキュラム内容:技能証明の取得に必要な科目のほか、農薬散布作業に関する科目も受講できるかどうかを確認しましょう。一気に両方の資格が取れると効率的です。
- 料金:技能証明取得のための教習料金は施設により異なります。複数の施設を比較検討し、予算内で質の高い教習を受けられる施設を選びましょう。
このように、立地、設備、カリキュラム、料金など、様々な観点から総合的に判断する必要があります。
技能証明と技能認定の取得過程
まず無人航空機操縦技能証明(ドローンオペレーター資格)の取得が必須です。指定教習施設で所定の教習時間を受講し、技能証明試験に合格する必要があります。
次に農薬散布作業に特化した技能認定を受ける必要があります。これは技能証明に加えて、以下の要件を満たす必要があります。
【技能認定の要件】
- 農薬散布作業の知識
- 技能に関する講習の受講(6時間程度)
- 無人航空機による農薬散布作業の実地訓練(4時間程度)
- 技能審査に合格
技能証明と技能認定の取得には、以下のような費用がかかります。
<費用の目安>
- 技能証明…教習費用15万円程度、試験手数料1万円程度
- 技能認定…講習費用3万円程度、審査手数料1万円程度
このように農業用ドローンを運用するには、一定の費用と時間を要する複数の資格取得が義務付けられています。
費用の目安
農業用ドローンの資格取得には、一定の費用がかかります。主な費用は以下の通りです。
【技能証明講習費用】
- 教習時間30時間程度:15万円前後 ※教習施設によって異なります。
【技能証明試験手数料】
- 知識試験:4,000円
- 実地試験:11,800円
【技能認定講習費用】
- 教習時間10時間程度:10万円前後 ※教習施設によって異なります。
【技能認定試験手数料】
- 2,000円
上記は全て税込の目安金額です。
このように農業用ドローン資格の取得には、教習費用や試験手数料など30万円前後の費用が見込まれます。一方で、農業用ドローンの導入に対する国の補助制度もあり、場合によっては費用の一部を賄えるケースもあります。
農薬散布ドローン運用時の届出と規制
ここからは、農薬散布ドローン運用時の届出と規制について紹介します。
国土交通省への飛行計画届出
農薬散布ドローンを運用する際には、国土交通省へ飛行計画を事前に届け出る必要があります。
届出が必要なのは以下の場合です。
- 目視外の飛行
- 夜間飛行
- 人口集中地区上空の飛行
- 火気使用を伴う場合
届出方法は、国土交通省航空局の「無人航空機飛行管理システム(DRONES)」からオンラインで行います。飛行予定日の30日前までに以下の項目を入力し届け出ます。
項目名 | 内容 |
---|---|
飛行概要 | 飛行目的、使用機体情報など |
飛行場所 | 飛行を行う場所の住所や地番など |
飛行時間 | 飛行開始・終了予定時間 |
緊急連絡先 | 操縦者の連絡先など |
届出を怠ると20万円以下の罰金が課される可能性がありますので、必ず届出を行うようにしましょう。
使用できる農薬の規定
農薬散布作業で使用できる農薬には、一定の基準があります。この基準は農林水産省から通知されており、以下の条件を満たしている農薬のみが使用可能となっています。
【農薬の使用条件】
- ドローン散布が農薬登録時の使用方法に含まれていること
- ドローン散布に関する使用上の注意事項が農薬に記載されていること
つまり、農薬ラベルにドローン散布が含まれていない場合は、たとえ散布用に登録されていても使用が認められません。使用できる農薬の一覧は農林水産省のウェブサイトで確認できますが、都度最新の情報を確認する必要があります。
また、農薬使用に係る一般的な規制も適用されます。例えば散布量の制限や、周辺環境への影響を考慮した使用方法の遵守などが義務付けられています。
このように、農薬散布ドローンを運用する際は、使用農薬の規定をしっかりと把握し、法令を遵守することが重要です。
その他のガイドライン
農薬散布ドローンを運用する際には、国土交通省や農林水産省が定めたさまざまなガイドラインに従う必要があります。
例えば、農薬散布作業は原則として日の出から日の入りまでの間に行わなければなりません。また、居住地域や人が集まる場所からは一定の距離を保つ必要があり、次のような制限があります。
【場所の種別 最低距離】
- 居住地域:30m以上
- 病院・学校など:50m以上
- 人が通行する道路:6m以上
さらに、農薬散布の際は事前に周辺住民への広報や立入禁止措置を行うことが義務付けられています。作業終了後は、農薬の残留状況の確認と記録の保存も求められますので、関連法令やガイドラインをしっかりと把握しましょう。
まとめ
農業用ドローンを運用するためには、国土交通省が発行する以下の2つの資格が必要となります。
- 無人航空機操縦技能証明(いわゆるドローンオペレーター資格)
- 農薬散布作業に特化した技能認定
これらの資格取得には、まず教習施設を選び、指定された時間数の操縦訓練と筆記試験を受ける必要があります。費用は施設によって異なりますが、概算で以下のようになります。
資格 | 概算費用 |
---|---|
操縦技能証明 | 5万円~10万円程度 |
技能認定 | 3万円~5万円程度 |
加えて、農薬散布ドローン運用の際は、飛行計画を国交省に届け出るなど、一定のルールを守らなければなりません。このように、適切な資格取得と手続きが重要となりますので、十分な準備が必要です。