マスカット農家になるには?
「マスカット農家をはじめよう!」と思っても、何のプランも目標もなければマスカット農家への道はすぐに頓挫してしまいます。はじめる前にはまず、どの地域でどれくらいの規模で栽培するのか、どの品種を栽培して販売経路はどうするかなど、マスカット農家として生計を立てるためには色々決めなければなりません。
それに、収入が安定できるようになるまではある程度の期間が必要です。全くの初心者さんが、マスカット農家としていきなりチャレンジするよりは、アルバイトや農業研修などを通して経験や知識を積んでからのほうがおすすめです。実際働いてみると、自分に本当に向いているかどうかの適正を判断するのにも役立ちますよ!
産地でマスカット生産のアルバイト募集には、住み込みも可能な場合もありますので、初期投資はほぼゼロで始められますし、貯金もできるので現実的です。
マスカット農家になるメリット・デメリットは?
マスカット農家になるとオーナーは自分自身なので、誰かに指図されることなく、自分の都合に合わせて作業を行うことができます。責任は大きくなりますが、やりがいを感じながら仕事を進められます。
また、定年がないので、60歳を超えても頑張れる間は年齢に関係なく、長く働くことができます。生きがいを感じながらのスローライフは、健康寿命を延ばすことにも寄与します。
デメリットとしては、天候や病害虫などの発生状況によって収入が左右されることです。思わぬ大きな台風が発生して、手塩にかけて育てた収穫直前のマスカットが、ほとんど落花すると、売り物にならず収入は激減することも念頭に置いて経営を始めてくださいね。
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※2023年のぶどうの売上データをもとに作成マスカット農家の年収は?
ぶどう農家の売り上げは平均310万円で、年収は平均160万円となります。ぶどうの中でもマスカットの価格は高く、アレキサンドリアで2480円、シャインマスカットで2121円です。巨峰は1243円、デラウエアで972円で販売されるため、同じぶどう農家でも、マスカット農家の年収は平均を超える年収を稼ぐことができます。
2019年のデータでは、農業経営全体の全国平均が118.8万円だったので、ぶどう農家の年収は平均より上のようです。
マスカット農家の初期費用は?
マスカット農家を始めるためには、どれぐらいの費用が必要なのでしょうか?
露地栽培ではハウスなどの設備が必要ないので、果樹農家の初期費用はそれほど高くないようです。とはいっても、マスカットの栽培経験がほとんどない人からすると、初期費用について全く見当もつかないのではないでしょうか。大体の目安料金や、費用が準備できなかったときの役に立つ手段をご紹介します。
年間で必要な資金目安
農業の初期費用は、平均391万円です。農家として生計が立つまでに必要な生活費などを入れた金額になります。ここに設備投資や種や苗、肥料や燃料を入れると平均569万円となります。
自分で初期費用が準備しきれない場合は?
おすすめの方法として、後継者を探しているマスカット農家さんから、農園を引き継ぐとスムーズにマスカット農家として生計を立てることができます。初期費用が抑えられ、苗から育てなくても良いため無収入の期間が無くなります。
離農を考え後継者を探している農家を探す方法は、インターネットで農業後継者のマッチングサイトを利用する方法と、自治体が取り組んでいる就農支援制度を利用する方法があります。
ただ、自治体の取り組みを利用する場合には、年齢制限や移住年数が定められていることもあります。マッチングサイトは自分で一から始めるより初期費用を抑えることができますが、ある程度の費用は必要になります。
マスカット農家の仕事内容は?
マスカット農家が年間を通して行う仕事にはどのような仕事が必要になってくるのでしょうか?
マスカット農家に求められること
マスカットは他の農業と比較すると、栽培に手間がかかります。マスカット農家として必要になることは集中力と忍耐力が必要です!
また、マスカットの木は少し低いので、腰を曲げた状態での作業が続きます。腰痛に悩まされることにもなりますし、収穫の時期は体力勝負なところもあります。収穫を終えたからといって終わりではなく、次の収穫の準備がすぐ始まります。
こつこつと忍耐強く作業することが好きな人が向いているといえます。
他の農家に比べて労働時間は長い?短い?
米農家と比べると果樹農家の労働時間は多くなります。果樹別に見てもぶどう農家の労働時間は長いほうです。桃や梨が300時間の労働時間がかかるのに対し、マスカットは450時間必要となります。
労働時間は長くなりますが、果樹農家の中でもマスカット農家の年収は多いほうなので、年収で考えるならマスカット農家はおすすめです。
1日のタイムスケジュール
マスカット農家のある1日のタイムスケジュールです。
- 5時 起床・食事
- 7時 仕事
- 12時 食事
- 13時 仕事
- 18時 食事・自由時間
- 23時 睡眠
マスカット農家の1年間のスケジュールは?
マスカット農家が最も忙しくなるのは、収穫時期の秋です。収穫時期以外も、剪定や芽かき、消毒などの作業を行います。
マスカット(時期)|マスカット(作業内容)
栽培作業 | 防除/消毒 | |
---|---|---|
1月中旬から下旬 | 冬の剪定 | - |
3月下旬 | - | 殺菌消毒 1回(前年の被害状況に合わせて) |
4月中旬 芽が出てき始めたころ | 芽かき | 殺菌消毒 1回(前年の被害状況に合わせて) |
5月中旬 展葉9~10枚 | 誘引 | 殺菌消毒 1回 |
5月下旬 開花直前 | 摘心 | 5月の消毒 殺菌消毒 3回 |
開花10日前 | 花穂整形 | - |
6月上旬 開花 | ジベレリン1回目 | 6月の消毒 殺菌消毒 3~4回 |
1週間から10日後 | カサかけ 袋掛け | 袋掛け直前 殺菌消毒 |
7月 | 初夏の剪定(摘心) | 7月の消毒 殺菌消毒 1~2回(必要に応じて) |
8月 | - | 8月の消毒 害虫駆除消毒 殺菌消毒 1~2回(必要に応じて) |
9月から11月 収穫 | 9月上旬から | 9月の消毒 害虫駆除消毒 殺菌消毒 1~2回(必要に応じて) |
12月 | 花穂整形 | - |
開花10日前 | 枯れ葉の処理 | - |
開花時期|花穂の整形
5月中旬ごろになると花が咲き始めます。この時期になると花穂の整形作業をおこないます。花穂の整形とは、枝の先端にたくさんなる花穂のうち、収穫まで育て上げるものを選ぶ作業のことです。余分な花穂を切り落とし収穫するための穂を絞り込むことで、栄養をたっぷり吸収した甘くて大きい実がなります。
収穫前|摘粒
シャインマスカットの実が大豆ほどに大きく育ってくる時期になると、摘粒と呼ばれる作業を行います。摘粒とは、小さい粒を取り除く作業で、房に実が多くつきすぎないように整えることです。摘粒の作業は、出来上がりの良し悪しを左右するほどの大切な工程になります。
マスカットの成長にもよりますが、房の下から上までの段数を7段となるように調節し、各段の粒数をバランスよく整えます。下から上にかけて粒数が多くなるように摘粒します。
収穫前|ジベレリン処理
必ず必要となる処理ではありませんが、ジベレリン処理をおこなうことでマスカットは種無しのマスカットになります。逆に何もおこなわないと、実の中に種がある状態になります。ジベレリン処理は植物ホルモン剤を使用して、人工的に種無しマスカットにする方法です。
使用されるホルモン剤は、1種A3というタイプなので、健康に影響を与えることはないといわれています。
5月中旬から6月中旬ごろに、花穂が満開になったころにおこないます。花穂にホルモン剤を含んだ液を吹きかけるか、カップ容器に液体を入れ、その中に花穂をひたすかのどちらかで作業をおこないます。
ジベレリン処理は必ず2回おこなう必要があり、1回目の処理から10~15日置いて2回目をおこないます。ジベレリン処理をおこなった後、雨が降ると効果がなくなってしまうので、当日と翌日の天気を確認して晴れの日におこないましょう!
収穫時期|袋掛けから収穫
摘粒が終わると次は袋掛けをおこないます。マスカットの袋掛けには、雨よけ・防虫・日よけの役割があります。使用する袋は、成長したマスカットにも対応できるように、大きめのものを使用しましょう。透明なものより白っぽい袋のほうが日よけの効果が得られます。
マスカットを収穫する際は袋を外し、軸を持ちながらハサミで切り取って収穫します。爽やかなマスカット香がしてきたら、収穫期を迎えたサインとなります。房の下部分にある果粒を1粒食べてみて甘ければ、房全体が甘くなり食べ頃です。
収穫後|剪定と仕立て
落葉後、2月頃までの休眠期に剪定をおこないます。マスカットの木を剪定して、樹形を整えたり、余分な枝を整理して健康的な新梢を育てます。
剪定方法については、全ての枝の付け根から1~3つの芽を残して切り詰める短梢剪定と、残す枝以外を間引き、枝の付け根から7~9つの芽を残して切り詰める長梢剪定をおこないます。
まとめ
マスカットはスーパーでも高い価格で販売されているので栽培が難しいイメージですが、比較的栽培にかかる技術は難しいわけではなく、農業初心者さんにも育てやすい農作物です。ただ、手間暇がかかるので、コツコツと作業を進めていける人はマスカット農家にむいているといえます。手間をかけて育て大切に育てたマスカットが、最終的に実を結ぶ作業は、やりがいを感じられるし、成果が目に見えて分かるので楽しいですよ。