ミカン農家になるには?
農業人口は年々減り続ける一途をたどり、日本の全人口に対する農業就業人口の割合は2010年では5.1%だったのに対し、2016年では3.7%まで下落しています。このような背景を受けて、各都道府県は本気で農業を始めようとする人を対象に、営農にいたるまでサポートする方向で考えが広がっています。
研修制度や農園地の斡旋、園地貸借や補助事業などがあり、さまざまな世代の人がチャレンジできるような支援制度を整えてくれています。
ほとんどの場合は、農業法人での研修やみかん農家でのアルバイトの経験をすることができます。農園を始めるためには、ある程度の土地や自己資金も必要ですが、自治体から補助金が下りる場合もあります。
適正があるかどうか心配な場合は、アルバイトやパートから始めてみるのもおすすめです。
ミカン農家になるメリット・デメリットは?
ミカンは斜面に栽培されることが多いため、生産者の高齢化を理由にミカン畑を手放す農家が増えてきました。そのため、後継者がいなくなったミカン畑の担い手を探している地域が増えています。自治体によっては、移住者の受け入れを斡旋して講習会の開催や、農地の紹介を行ってくれるため、ミカン農家をはじめやすいといえます。しかし、何事も始める前には下準備が大切です。ミカン農家になった時に考えられるメリットとデメリットがあります。
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※JAみっかび公式ショップスタッフおすすめのミカンな加工品メリット
- 忙しい時期と手があく時期がはっきりしている
- 水やりの必要はほとんどなし
- 自然の中でストレスをあまり感じることなく作業ができる
- 育てる楽しさ、収穫する喜びが味わえる
デメリット
- 斜面に畑が多く、足腰に負担がかかる
- 天気の影響を受ける
- 苗木から成木になるまで5~10年かかる
- 豊作年と不和年とが交互に訪れる
ミカン農家の年収は?
2019年果樹農家の農業所得は181.9万円でした。農園面積の大きさにも関係あるので一概にはいえませんが、大型果樹農園や6次産業化を行っている農園であれば1000万円を超える農園もあるようです。
収益を高めるためには、ブランドミカンの栽培を取り入れたり、加工品の生産を始めると収入がアップします。
ミカン農家の初期費用は?
ミカン栽培では他の農作物と違い、栽培に必要な設備への初期投資は少なくすみます。農地さえあれば、軽トラと動力噴霧器を揃えるだけで始められるという人もいるほどです。
効率性を考えて農業機械を導入すると、コストは高くなりますが生産性はアップします。
年間で必要な資金目安
全国新規就農相談センターがおこなった調査では、2016年新規農業者が用意した自己資金は農業準備金として232万円程度。出荷するまでは収支が見込めないため、生活面で準備金として159万円程度必要となります。ミカン農業の経営費としては27.6万円程です。
自分で初期費用が準備しきれない場合は?
果樹農園によって、後継者を育てる一貫として所定の研修を終了した社員に対し、農園の一部を貸し出して自身の裁量で運営させてくれる農園があります。農機具や設備の貸出もあるため、社員は低リスクで営農手法を習得し始めることができます。
また、農地や研修先、出荷先などを確保し、2年間は安定した環境で農業に専念できる制度を確立している自治体もあります。補助金制度を受けられることもあり、金銭的に不安な場合でも始められます。
ミカン農家の仕事内容は?
春先に剪定、花が咲いたら摘蕾、実がついたら摘果、季節ごとの農薬散布と除草、収穫と出荷が主な仕事です。
夏の暑さが続き、雨が降らない日を除き水やりはほとんど必要ありません。最近では、より甘くて美味しいみかんを作るために、雨を通さない白い特殊なシートを地面に敷く作業(マルチ被覆)も行われています。
ミカン農家に求められること
ミカン栽培では、6月~10月までの間に摘果を行います。樹の負担を減らし、毎年できるだけ多くの実をつけてもらうためにも、摘果はとても重要な作業です。摘果は夏場に行うため、暑さとの戦いともなります。
ミカンが入ったコンテナは約20kgあります。そのコンテナを1日100往復しながらトラックまで運ぶため体力が必要です。
ミカン農家に適した人は、1年を通して計画的に就業できることや体力面で心配のない人です。また、農業は1人でモクモクと進めていくイメージがありますが、JAの人や同業者、町内会などの人付き合いも必要になります。
他の農家に比べて労働時間は長い?短い?
労働時間は10aあたり236時間です。収穫作業に一番時間がかかり、次いで除草や防除と出荷で作業全体の約65%を占めます。1年間でみかん作りに必要な時間は200時間。これは米作りの30時間と比較すると作業時間が多くなります。
果樹別に見ると温州みかんの労働時間は短く、露地ブドウが441時間、梨が359時間、リンゴが258時間です。露地ブドウは受粉や摘果、剪定の他、袋掛けなどの作業があるため、作業時間が長くなります。
1日のタイムスケジュール
ミカン農園で働いた場合のタイムスケジュールです。
- 07:45出勤
- 08:00作業開始
- 10:00休憩(15〜20分)
- 11:30昼休み
- 12:30作業再開
- 15:00休憩(15〜20分)
- 17:00退勤
ミカンは雨水がつくと腐ってしまうため、雨の日は基本的にお休みです。農家によっては、雨の日に出荷作業をしたり、ジャムやジュースなどの加工品を作ったりもします。
ミカン農家の1年間のスケジュールは?
- 定植(3~4月)
- 剪定(2月中旬~3月)
- 摘蕾(5月)
- 摘果(7〜9月)
- 肥料散布(年3回程度)
- 収穫(9~12月)
- 貯蔵(1〜3月)
3月~4月 定植
ミカンの定植は、3~4月ごろが適期です。苗を移し替える時に、根が切れたりするため、できるだけ苗に与える負担が少ない時期に植え替えるのが最適です。3~4月の間は次の成長が始まる手前になります。
2月中旬~3月 剪定
ミカンの成長は年3回、春・夏・秋です。特に、4月には新芽が出るため、新芽が出る前の2月中旬~3月ごろに行います。
新芽が出てくると、枝がどの方向に伸びるか見分けやすく、芽を取り除くことで成長を抑制することができます。
樹齢4年に満たない苗木は、春にだけ枝が伸びることもあります。
5月ごろ 摘蕾
あまりにも着花が多くなると木の養分は花に集中するため、側枝単位で摘蕾します。そうすると、新芽が伸びやすくなります。
また、着花が多いと樹勢が落ちてくることがあるので即効性のある肥料を使います。
7〜9月 摘果
1本の木になりすぎた実を調節して採る作業を行います。ミカンの木は必要以上に実をつけることが多く、一部は自然に落ちていきますがほとんど残ってしまいます。摘果が不十分だと、実が小さくなり味が美味しくなくなります。そして、ミカンの木は隔年結果(2年に1回ずつ沢山採れる表面と、収穫量が減る裏面)のため、ならせ過ぎた翌年は実の量がかなり少なくなります。
まとめ
暖かい気候のもと、ミカンを育てながらのんびりとした田舎町で暮らすのは憧れますよね。しかし、農業は計画性を持って、毎日コツコツと積み上げていく真面目さが必要です。体力面も大切ですが、収穫量は隔年結果のため、収入が毎年安定しないことも想定しておいてください。