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農薬散布にドローンは使える?法規制と注意点を解説!

農薬散布にドローンは使える?法規制と注意点を解説!

農薬散布作業は、人手不足や高齢化が進む日本の農業分野で、大きな課題となっています。そこで注目されているのが、無人航空機(ドローン)を活用した農薬散布です。ドローンは小型で機動性に優れ、人の入れない狭い場所への散布も可能です。また、従来の農薬散布方法に比べ、作業時間の大幅な短縮が期待できます。 農林水産省によると、2022年3月時点で農薬散布を目的としたドローンが8機種登録されています。ドローンを活用したスマート農業の取り組みが進む中、農薬散布ドローンの利用は今後ますます広がっていくと考えられます。一方で、ドローン散布には法令上の規制があり、農薬登録や飛行ルールなど、注意すべき点が多くあります。 本記事では、農薬散布ドローンの法規制や注意点を詳しく解説していきます。

ドローンによる農薬散布の法的規制

まずは、ドローンによる農薬散布の法的規制について説明します。

農薬使用基準への適合が必須

ドローンで農薬を散布する際は、農薬を適切に使用するための基準を満たす必要があります。この基準は「農薬使用基準」と呼ばれ、以下の3点が定められています。

  1. 使用する農薬の種類
  2. 希釈倍率
  3. 使用量

農薬の種類ごとに使用方法が細かく決められているため、ドローン散布でもこの基準を守らなければなりません。基準を守らないと、農作物への残留が基準値を超えてしまう可能性があります。

ですので、ドローンで農薬を散布する場合、使用する農薬の使用基準を事前に確認し、適切に希釈・散布する必要があります。

ドローン飛行に関する規制

ドローンで農薬を散布する場合、飛行に関する規制にも従う必要があります。ドローンの飛行は航空法の適用を受け、国土交通省が所管しています。

主な規制内容は以下の通りです。

  • 目視外飛行の禁止 
  • 人口集中地区上空の飛行禁止(高度制限あり) 
  • 夜間飛行の原則禁止 
  • 飛行前の申請が必要(許可・承認が必須の場合あり) 

これらの規制は、航空機の安全や第三者への危害防止を目的としていますが、一方でドローン農薬散布の障壁にもなっています。そのため、農林水産省は特例的に「目視外補助者の活用」や「夜間飛行の例外的許可」など、規制の緩和措置を講じる方針です。

今後、ドローン農薬散布の普及に向け、農薬と飛行の両面で、より使いやすい環境整備が期待されます。

関係法令の概要

ドローンによる農薬散布は、以下の法令に従う必要があります。

【農薬取締法】

使用する農薬は、農林水産省に登録された適用作物や使用方法に従わなければなりません。 未登録農薬や散布器具の使用は違法となります。

【航空法】

ドローンは「無人航空機」に該当し、飛行に際しては国土交通省の許可が必要です。 飛行場所や高度などの制限があります。

【その他関連法令】

  • 毒物及び劇物取締法
  • 労働安全衛生法
  • 環境関連法規

これらの法令を順守し、地方自治体の条例にも従う必要があります。関係当局と事前に相談し、安全かつ適切な運用をしなければなりません。

以上のような法的規制がありますが、適正な運用ができれば、ドローンは農薬散布作業の効率化や省力化に大きく貢献できます。

農薬散布ドローンのメリット

ここからは、農薬散布ドローンのメリットを紹介します。

作業の効率化と負担軽減

ドローンによる農薬散布は、従来の人力による散布作業に比べて大幅な効率化と作業者の負担軽減が期待できます。ドローンはリモートコントロールで操縦できるため、農作業者が直接農薬に触れる必要がなくなり、健康被害のリスクを最小限に抑えられます。

また、ドローンは高所や狭小な場所でも農薬を散布できるため、これまで手作業では困難だった場所への散布が可能になります。

さらに、ドローンは一定の高さを維持しながら飛行できるため、農薬の散布むらが少なく、均一な散布が期待できます。これにより、過剰な散布による薬剤の無駄遣いを防げ、コスト削減にもつながります。

以下の表は、従来の人力散布とドローン散布の作業効率を比較したものです。

作業内容 人力散布(10a) ドローン散布(10a)
所要時間 1時間 15分
作業負荷

このように、ドローンによる農薬散布は大幅な効率化と負担軽減が期待できるため、今後の普及が見込まれています。

農薬散布の精度向上

ドローンを使った農薬散布は、従来の人力や機械による散布方法に比べて、はるかに高い散布精度が期待できます。ドローンは、GPSによる自動航行が可能で、事前に設定したコースを正確に飛行できるため、農薬の重複散布や過剰散布、散布もれを防ぐことができます。

また、ドローンは低空飛行が可能なため、農薬をより作物に近い位置から散布できます。これにより、農薬が風に流されたり、木の葉などに遮られて作物に行き渡らないリスクを大幅に低減できるのです。

さらに、ドローンには高精細カメラを搭載できるため、作物の生育状況を詳細に把握しながら、その場所に合わせた最適な農薬散布を行うことも可能です。このように、ドローンは農薬の無駄を省き、作物に必要な量を適切に散布できるため、収穫量の向上や経費削減が期待できます。

従来の散布方法に比べ、ドローンによる農薬散布は作業効率と精度の両面で優れており、今後ますます普及が進むと考えられています。

従来の方法では困難な場所への散布が可能

ドローンは空中から農薬を散布できるため、従来の地上からの散布では難しかった以下のような場所への散布が期待できます。

  • 複雑な地形の圃場:山間部の傾斜地や段々畑などの起伏が激しい圃場では、地上からの散布は困難です。ドローンなら空中から散布できるため、隅々まで行き渡らせることができます。
  • 狭小な圃場や建物の周辺:住宅地の近くの小規模な圃場や、建物に囲まれた圃場は地上から散布しにくい場所です。ドローンなら空中から上空から散布でき、建物の陰になって届きにくい場所にも散布可能です。
  • 作物密生地域:作物が密生している場所では、人が入り込んでの散布作業が難しくなります。ドローンなら空中からの散布が可能なため、作物を傷めることなく散布できます。

このように、ドローンによる農薬散布は従来の方法では散布が困難だった場所にも行き渡らせることができ、農作業の効率化に大きく貢献できる技術です。

農薬散布ドローンのデメリット

ここからは、農薬散布ドローンのデメリットを紹介します。

初期投資コストが高い

農薬散布ドローンを導入する際の最大の障壁は、高額な初期投資コストです。ドローンの本体価格に加え、農薬散布に適した専用機種を選ばなければならないため、一般的な小型ドローンよりも高価格になります。

例えば、10リットル級の農薬散布ドローンの価格は、おおよそ下記の通りです。

  • ドローン本体: 100万円程度 
  • 農薬散布装置: 50万円程度
  • バッテリー他付属品: 30万円程度

つまり、最低でも180万円前後の初期投資が必要になります。さらに、農薬散布作業の安全確保や効率化のため、以下のような周辺機器の購入も求められます。

  • 離着陸ステーション: 50万円程度 
  • 自動薬剤補充装置: 70万円程度

このように、本格的な農薬散布ドローンシステムを構築するには、300万円を優に超える多額の資金が必要不可欠です。

薬剤の種類が限られる

ドローンによる農薬散布では、使用できる薬剤の種類が限られているのが現状です。その理由は、農薬登録制度の仕組みによるものです。

農薬には、農作物や使用方法ごとに登録が必要となっています。農薬登録の際には、薬害や残留の心配がないことを確認する試験が義務付けられています。そのため、ドローンによる散布は想定されておらず、登録がない農薬はドローンで散布できません。

今後、ドローン専用の農薬登録が進めば、使用可能な農薬の種類が増えていくと考えられます。

風や障害物への対応が課題

農薬散布ドローンの運用においては、風や障害物への対応が大きな課題となります。

強風時には、ドローンの姿勢制御が困難になり、農薬の散布が不均一になる恐れがあります。特に飛行高度が高くなればなるほど、風の影響を受けやすくなります。

また、農地の近くに高い建物や電線、樹木などの障害物がある場合、これらとの接触事故が危惧されます。

このような課題に対して、以下のような対策が必要とされます。

  • 風速に応じた適切な飛行高度の設定 
  • 精密な風向風速の把握と予測 
  • 障害物の事前把握と回避ルートの設定 
  • GPS補正などの精密な位置制御技術
  • 自動回避機能の搭載

このように、風や障害物への対応には高度な技術力が求められるため、農薬散布ドローンの運用には熟練した操縦者が必要不可欠です。 ただし、技術の進歩に伴い、これらの課題は徐々に解決されていくと期待されています。

農薬適用拡大への取り組み

ここからは、農薬適用拡大への取り組みについて紹介します。

ドローン専用農薬の登録促進

現在、ドローンでの農薬散布に使用できる農薬剤の種類は限られています。これは従来の散布方法とは異なる散布特性があり、既存の農薬登録では安全性の評価が困難だったためです。

そこで近年、ドローン専用の農薬登録制度が整備されつつあります。ドローン散布時の薬液の飛散状況などを詳細に評価し、安全性を確認の上で使用が許可されます。

2021年4月時点で、下表の4剤がドローン専用農薬として登録されています。

農薬名 適用作物 使用目的
ベジタールアグリ液剤 水稲 殺虫剤
ストレートアタック水稲用液剤 水稲 除草剤
フロアブル紋了DF 果樹 殺虫剤
ダブル太陽かげろう水稲散布液 水稲 殺虫剤

今後、ドローン専用農薬の登録が進めば、より多様な作物での農薬散布が可能になると期待されています。

使用可能農薬の拡大

農薬散布ドローンの実用化に向けて、使用可能な農薬の種類を拡大する取り組みが進められています。現状、ドローン散布が可能な農薬は数種類に限られています。

例えば、以下のような農薬が使用可能です。

農薬名 適用作物
ベジタールアグリ液剤 野菜、果樹
ポリオキシンAL水和剤 稲、野菜、果樹
ダコニール1000 稲、野菜、芝

今後、作物や病害虫ごとに新たな農薬をドローン散布用に登録し、選択肢を広げていく計画です。生産者のニーズに応えられるよう、農薬メーカーと行政が連携しながら取り組みを進めています。

また、農薬の希釈倍率については、使用する農薬の種類や散布方法によって異なります。製品ラベルの指示に従い、適切な希釈倍率で使用することが重要です。

このように、ドローン散布が可能な農薬の種類が拡大されれば、生産者はより柔軟に農薬散布を行えるようになります。今後の動向に注目が集まっています。

まとめ

ドローンによる農薬散布は、作業の効率化や精度向上、従来では困難な場所への散布が可能になるなど、メリットが大きい一方で、法規制や高コスト、使用可能な農薬の種類が限られるなどのデメリットもあります。

現在、農薬使用基準への適合やドローン飛行に関する規制があり、関係法令を順守する必要があります。また、ドローン専用農薬の登録促進や使用可能農薬の拡大に向けた取り組みが進められています。

初期投資コストの高さや薬剤の種類が限られる点などデメリットはありますが、農薬散布ドローンの活用は、農業の生産性向上や省力化に大きく貢献すると考えられます。今後は、より安全で効率的な農薬散布が可能となるよう、法規制の見直しや技術革新が期待されています。

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